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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~6月
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※ある復讐者と始祖王の子孫達との宿縁(中編)

 シーノン公爵が亡くなった後、カロン王は国政を丸投げ出来る人間がいなくなったと言って腹を立て始め、彼等が宥めても脅しても怒りが収まらず、しばらくの間、ひどい癇癪持ちとなった。長達が自分達の邪魔をしそうな心ある貴族達を無実の罪に課し、処刑しようとする前に、カロン王は処刑予定の心ある貴族達に対して悋気を起こして、処刑する前に心ある貴族とその家族の国外追放を、次々と命じ始めたのだ。


 カロン王の悋気は恐ろしく、追い出された貴族達の中には、成人していない子どもも何人かいた。カロン王は、その子ども達の衣服を短剣で切り罵倒し、すぐに子どもと子どもの家族達に国外追放をさせるように命じ、カロン王は子どもと子どもの家族達が生きて隣国に入ったのが確実にわかるまで癇癪を収めなかった。


 カロン王の癇癪が治ったのは、シーノン公爵が亡くなって5年ほど経って……へディック国にいた心ある貴族達全てが国外に追放された後、カロン王が彼等の再入国を拒むために、国境を封鎖した後だった。







 侯爵や長達がカロンをナロン同様、傀儡にするために彼を愚かになるように育てたので、カロンは愚王となったが、そんな彼らの思惑以上にカロンは愚か者に育ってしまったせいで、度々彼らの想像をはるかに超える愚かな振る舞いをしてみせて、彼らを困らせた。


 彼等は国の簒奪の費用を得ようと思い、国庫を潤わせようと考え、カロン王に毎日のパーティー費用を捻出するためと言い、日々の食料にも困っている民に過酷な税を課すように唆せる……前にカロンはさらに、その何倍もの税金を課すと国境を封鎖する前に全国民に通達したため、大勢の民が国外に逃亡してしまった。彼等は慌ててカロン王に進言し、税金をシーノン公爵の定めていた金額に戻させたが、すでに時遅く、大勢の元気な国民の大半が国外に逃亡してしまった。ただでさえ流行病で大勢の民が失われた後だったこともあり、民の税金で国庫を潤わせることなど不可能となってしまった。


 彼等が国庫のことで頭を悩ませても、国政に興味の無いカロン王は一向に反省せず、ニタニタと酒を飲んで城で賭け事に明け暮れていた。彼らは自分達でカロンを愚王にしたので、カロン王を叱るに叱れなかった。仕方無しに彼等は、国庫を潤わせることが出来る、次の方法を考えざるを得なかった。


 そこで彼等は今度は薬を使って、色々な遊びに耽るのは楽しいとカロン王に吹き込んで、人々を堕落させる”悪魔の薬”と呼ばれる危険な薬を合法化させた。彼らは悪魔の薬の中毒性を使って民を操り、大金を巻き上げようと考えたのだが、これも上手くはいかなかった。何故なら流行病と作物の不作で、危険な薬の材料となる薬草は全滅し、それを育てることが出来る技能を持つ農家の者も、その薬草を危険な薬に製造出来る専門知識を持つ薬草医……惜しいことに、その製造法は一子相伝の秘伝として伝えられていたらしく……唯一製造法を知っていた薬草医が亡くなったために、その悪魔の薬は民が手にする前に、この国から完全に消え、その製造法も永遠に失われた。


 カロン王が国境を封鎖したので、他国から代わりの悪魔の薬となる薬草や、その薬を作れる薬草医を連れてくることもままならず……結局、この悪魔の薬の合法化は薬が存在しなくなったので、法律があっても無駄なだけだと、酔っ払ったカロン王が三ヶ月も経たない内に、その法律を永久廃止してしまった。






 長達が傀儡にするために、カロン王には帝王教育は施されなかったので、カロン王は常に子どもっぽい思考をし、長達を困らせることが多かった。流行病、不作、人々の流出、悪魔の薬の消失……等でへディック国の国庫はいつまでも潤わない。そこで彼等はカロン王に頼み、毎年の軍事費の予算を多くして、武器を大量に買い占めて、武器商人から賄賂を受け取る計画を立てた。これで国庫を潤して、国を簒奪するための資金にし、買い集めた武器は、その時に使ってもよいし、この国を乗っ取ったあかつきには、次は隣国を狙おうための武器にしてもよいと彼等は考えたからだ。


 カロン王はそれを快く了承したが、買った武器類の保管はカロン自身がしたいと言い出した。カロン王は趣味が短剣集めで、武器を収集するのが楽しいから、自分が保管するのだと言って聞かなかった。彼等はいざという時はカロン王を暗殺し、武器を奪えばよいと考えたので、カロン王の言う通りにした。カロン王は無邪気にそれを喜び、武器類は城の地下にある、代々の王が眠る墓にしまい込み、特別の施錠を施した。その特別の鍵は、ある一本の短剣で、カロン王は趣味の短剣集めで集めた千本以上ある短剣の中にそれを紛れ込ませてしまった。それにより彼等はカロン王を殺しても直ぐには武器を取り出すことが出来なくなってしまったのだ。長と彼等は、カロン王に何の教育も与えずに傀儡にしてしまったために、子どもっぽい宝探しを無邪気に提案するカロン王を諫められないことに苦虫を噛みつぶした。





 思い通りにいかないことに内心苛立っていた彼等だが、良いこともあった。というのも流行病により、身分に関係なく大勢の人間が亡くなったために、貴族が不足してしまったからだ。それは後宮にも及び、公爵や侯爵などの上級貴族の側妃達や、その子ども達、そして身分が高くはない側妃達や、その子ども達も皆が病で次々亡くなってしまった。流行病で大勢の側妃が亡くなったことを悲しんだのか、シーノン公爵が亡くなった頃からカロン王は、ピタリと女遊びをしなくなり、後宮にも行かなくなってしまった。長や他の仲間達が、どれだけの美姫を用意しても、けして抱こうとはしなかったので、新たに後宮に側妃も増えなければ、子どもも生まれてはこなかった。


 生き残ったカロンの子どもは二人だけだった。他国で静養していた伯爵位の側妃の子どもと、男爵位と身分を偽らせて、後宮に入れていた長の娘の子どもだけだった。彼等はカロンに貴族の不足を補うために、平民を貴族にすればいいと助言をした。貴族院の反発を防ぐためには、元々の貴族達の身分を上げればよいとも吹き込み、一部の貴族達の爵位を上げることに承諾させた。これにより彼等は皆、上級貴族爵位を得ることに成功し、長の子どもも上級貴族爵位の身分を持つ側妃となった。


 彼等は自分達を上級貴族にするための方便を取り繕うために、へディック国立学院に平民クラスを作ることをカロン王に打診したところ、カロン王は平民クラスを作ると同時に、へディック国立学院を()()()()にすると言い出した。カロン王は大勢の貴族が流行病で亡くなったり、大勢の貴族が国外追放されたりで、貴族社会の勢力図が大きく変わったと同時に貴族の力が衰退し病や処罰により、婚約者を失った令息令嬢が多数いるから、学院を集団見合いの機会を多く得られる集団生活の場にすればよいと思ったらしい。


 自分の学院生時代は学院に女がいなくて、つまらなかった。どうせ貴族は12才までに貴族教育を終えているのだから、勉強をさらに学ぶ学院の必要性なんてないだろう?だから男女共学でもいいではないかと、カロン王は笑いながら、彼らに賛同を促した。元々学院は、優秀な貴族の子息を城の執務官や大臣にするための特別な教育を施す大事な場所だったが、国を簒奪しようと考えている者にとっては、邪魔な場所だったので、それには彼等は賛同したが、またカロン王は、もう一つ思いついたと言い出して、そのカロン王の思いつきには、彼等は内心舌打ちした。


 何故ならカロンのもう一つの思いつきは、爵位返還、貴族位剥奪は必ず、王の許可を王印つきで得ること、もしくは王の命令でなければなされないという法改定だったからだ。これにより貴族院法に則った、本人の意志による貴族位辞退は出来なくなってしまった……つまり学院を卒院した平民を脅して貴族位辞退をさせることが出来なくなってしまったのだ。


 カロン王は貴族院に命じて、学院法を改定させた。貴族院は男女共学や平民クラスの開設及び()()()()()()()()()()()()()()()を作るようにとカロン王に命じられたので、法律にとても詳しい”仮面の弁護士”という通称を持つ弁護士に助力を得て、貴族院は学院内の全ての平民を守る法律を作っていった。


 自分達が貴族位を得るための方便で提案した平民クラスだが、本当に自分達以外の平民を貴族になどとは考えてもいなかった彼等は渋面を作ったが、最近仲間にした3つの国からやってきた悪党達の子どもや、将来仲間になれそうな金持ちの平民の子どもだけを平民クラスに入学させればよいのだと考え直し、学院に自分達の仲間を送り込んだ。

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