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悪役辞退~その乙女ゲームの悪役令嬢は片頭痛でした  作者: 三角ケイ
”僕達のイベリスをもう一度”~6月
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※ある復讐者と始祖王の子孫達との宿縁(前編)

 カロン王の護衛集団の長は、へディック国の始祖王の異母兄の血を引く者だった。彼の一族は代々、遠い昔に自分達の先祖を国から追い出して、自分達を流浪の民にした王家に恨みを抱いていた。長い時を経て、彼の父の代になった頃、ようやく彼の一族はナロンの実母の護衛集団として、城に入り込んだ。


 その当時ナロンはまだ子どもで、ナロンの他にも沢山の王子がいたが、ナロンの実母が正妃だったので皆、ナロンが次の王になると信じていた。しかしナロンの父であるアロン王が城の大聖堂の壁画に描かれている黒髪黒目である始祖王を神聖視するあまり、ナロンの腹違いの弟で、ただ一人黒髪黒目であるライトを特別扱いするようになったために、正妃と正妃の実家である侯爵家はライトを危険視した。


 正妃の護衛集団となった彼の一族は、正妃の命じるままに正妃以外の側妃達や王子達を次々と罠に嵌め、失脚させたり、事故や病気に見せかけて暗殺したりしたが、ライトの母親もナロンの実母と同じぐらい腹黒で、彼女も他の側妃を蹴落とすために自分の護衛集団を用い……結果、アロン王の子はナロンとライトだけになってしまった。


 二人の子どもが成長し、ライトがますます黒髪黒目の始祖王の姿に似てくるとアロン王は、さらにライトを特別扱いするようになったので、正妃とその実家である侯爵家はアロン王を暗殺し、その罪をライトの母親と、その実家になすりつけて処刑し、王の血を引くライトを国外追放に見せかけて暗殺しろと、彼の一族に命じた。


 元々王家に恨みがあった彼らは、内心の喜びを押し隠しながら侯爵家の命令通りにアロン王を暗殺し、その罪を、ライトの母になすりつけて、母親と、その実家の者達を処刑することに成功した。後は正妃の命じるままに、ナロンの弟であるライトを国外追放に見せかけて暗殺し、その後、頃合いを見て、ナロンを殺せば、彼の一族の悲願を果たせて、彼らは国を簒奪できるはずだった。






 彼らの計画を最初に邪魔したのは、一人の少女だった。彼女はナロンの母の兄の末娘……ナロンの従妹で、ナロンの婚約者で……()()()()()()()()だった。彼女は侯爵家のために政略結婚をしなければならず、侯爵令嬢としての自分の立場をよくわきまえていたが、……心の中では密かに()()()()()()()()()()()()()()


 自分の父がライトを暗殺しようとしていると知った彼女は、ライトを救うために彼女の乳母の息子……彼女にとっては兄のような存在の乳兄弟に頼んで、ライトの侍従になってもらい、暗殺者の手からライトを助けてほしいと頼んだ。そして彼女は、挨拶の言葉しか交わしたことがない初恋の人を救いたい一心で、二人が国外に脱出する日、ナロンに……自らの純潔を捧げた。


 ナロンは婚約者の彼女に初恋をしていたので、彼女の愛が得られたと喜び、二人の蜜月を誰にも邪魔されたくないからと護衛集団に厳重な護衛を命じたために、ライトへの監視が緩み……、彼らがライトがいなくなったのに気づいたのは、その三日後……蜜月が終わった後のことだった。






 彼女の次に彼らの計画を邪魔したのは、”影の一族”だった。影の一族は元々始祖王の次兄の血を引く者達だった。次兄の彼は三男である弟がへディック国の王になるときに自ら進んで弟を守るために、名と姿と心を捨てて、王を守るために”影の一族”となった。


 始祖王とは違い、俗物な王に成り下がったアロンがナロンの母に、王族以外に秘匿だった”影の一族”の存在を話してしまったために、その存在を侯爵家が謀略を用い、かすめ取ったのだ。侯爵家は影の一族を手中に収めたものの、その扱い辛さに辟易し、早々に処分したいと思っていたので、影の一族にもライト暗殺を命じ、護衛集団全員にライトが暗殺されたのを確認後に、影の一族暗殺も命じていた。護衛集団に潜んでいた彼の一族は、当時成人したばかりの彼だけは、技量不足だから足手まといになると言って、彼を置いて国外に出向き……二度とは帰ってこなかった。


 影の一族は侯爵家の命令に背き、ライトを逃がすために自分達の命を賭けて戦いを挑んできたらしく、彼の一族達は彼らと相討ちとなって、命を落としたことが間者によって伝えられた。彼は彼の父や一族達を失ったことを悲しみ、始祖王の血を引く者達に自分達の計画を阻止されたことを忌々しく恨めしく思い、始祖王の血筋の王族を憎んだ。


 彼は父を……一族を……同胞を失い、一人となったが、先祖の悲願であるへディック国を奪う計画を諦めなかった。彼は侯爵家から与えられた部下だけではなく、自分の計画に賛同してくれる仲間を集めることにした。




 彼は、ある国の姫に懸想し、その国を奪うために他国と謀略を謀ったものの、流浪の民となったライトに邪魔をされて国を追い出された他国の大臣と、その一味や、北方の国で王を人知れず暗殺した後、栄華を貪っていたが、ある貧乏な男爵令嬢にコテンパンにやられて、国を追い出されて逃げてきた腹黒大臣達の存在を知り、彼らを仲間に引き入れた。


 その後、彼は仲間達と共にナロンの護衛として王家に入り込み、ナロンの母親の兄で……ナロンの正妻となった彼女の父親である侯爵の下で、ナロンの息子のカロンをナロンと同じように傀儡にしたまでは良かったが、王子から王になったカロンは何故か、始祖王の血を引くシーノン公爵を気に入り、彼に国政を丸投げしてしまった。


 カロンの祖父となる侯爵の下で、国政を侯爵に執政させようと、カロンを脅しなだめすかせたが、カロンはこれに関しては首を縦には振らなかった。カロン王の同級生であるシーノン公爵は、国で王の次に身分が高い上級貴族だし、始祖王の末妹の血を引く由緒正しい貴族家だから、彼以上に王代行が出来る高い身分の者がいないことと、イミルグラン・シーノンという男は学院が始まって以来の秀才として有名だったので、シーノン公爵以上に有能な人材がいない以上、シーノン公爵にそれをさせるのが自分が一番楽が出来て、ずっと遊んでいられるから……と、彼らのせいで無能になったカロン王は、賭け事をしながら笑って、そう言った。


 それを聞いた彼らは、シーノン公爵の親類縁者をそそのかして暗殺を計画した。……しかし、どれもこれも失敗してしまい、国を乗っ取ることが出来ないまま時間が過ぎていき、シーノン公爵の国政により、へディック国は滅亡から回復の兆しを辿り、隣国との国交まで回復させてしまった。そこで彼らは、今度は国庫が豊かになったら、それを全て奪い、国を簒奪する計画を立てたが……、二度目の計画も始祖王の血を引く一族に邪魔をされた。


 病がちだったシーノン公爵が突然、爵位返還し退職金代わりに国庫の金を全て持ち出したまま、崖から落ちて事故死し、国庫の金はシーノン公爵と共に燃えて、全て失われてしまったからだ。国庫が空になったへディック国を奪っても何の益もないため、長の配下となった他の仲間達は、長の計画に難色を示し、国庫を奪った後に予定していたカロン王や後宮にいる王族を全て殺し、国を簒奪する計画を中止してしまったのだ。


 彼らの目の上のたんこぶ……目障りだったシーノン公爵が亡くなったのは嬉しいが、二度目の計画も始祖王の血を引くシーノン公爵に阻止されたことに、護衛集団の長は何という運命の巡り合わせだろうかと頭を抱えた。

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