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【浮遊のレベルが上がりました】
【火魔法のレベルが上がりました】
【レベルが上がりました】
【魔素操作を取得しました】
名前 トリー
種族 魔素族
職業 エリートファイアプランクトン
レベル 5》6
魔力 104/490》546(390+156)
知力 15》16
スキル 魔力上昇4 魔力回復上昇4 魔力操作5 魔力感知6
火魔法3》4 浮遊1》2 魔素操作1 New!
STP0≫5 SKP1
浮遊をしつつ1時間ほどプチスライム狩りをした結果、基礎レベルと火魔法、そして浮遊のスキルもレベルがアップし、SKPを消費して【魔素操作】を取得した。
また、基礎レベルが上がった際、魔力と知力に合計でSTP5ポイント分が割り振られていた。
職業が変わった影響だろうか。あとでギルドで確認してみよう。
ただ1つ誤算だったのは、魔法を放つ際に高度が下がってしまう事だ。
現在俺が空中に浮かんでいられるのは、魔力操作で魔力の流れを遅らせているからだ。
しかし魔法を放とうとすると、身体の魔力の流れが速まり、魔素密度が上がってしまう。
その結果、身体が重くなって地上へと高度が下がってしまうらしい。
とは言え地上に降りるまでに一度は魔法を打てるので、打った後すぐに魔力の流れを遅らせてやれば再び宙に浮かぶことは可能だ。
欠点と言えば、少し酔うことだろうか。
遊園地にあるフリーフォールを思い出す。
あと、敵が複数体いる時や一撃で倒せない時も拙いかもしれない。
現在はプチスライム相手に火魔法で無双を決めているが、高度が下がった瞬間を襲われると多分為すすべがない。
他の魔素族の人たちはどう対応してるのだろか。
「ま、とりあえずは【魔素操作】か」
俺は魔素操作を念じてスキルを発動させる。
「おぉ、なるほど」
すると、身体を構成する魔素を、ゆっくりとだが動かせることが分かった。
今までは人型をデフォルトとしていた霧が、ゆっくりとその形状を変えていく。
魔素族が不定形だと言われている所以はこれか。
「これ、魔素の密度も変えられるんだろうか……」
先ほどまでは、魔力が流れるスピードをコントロールして魔素密度を変えていた。
しかしこの魔素操作によって、魔素そのものに働きかけることが出来るのではないだろうか。
俺は早速魔素を拡散させるイメージで魔素を操作する。
「むむむ、出来るには出来る。けど……」
結果として、魔素操作による魔素の拡散は可能だった。
しかし魔力操作のみの時と比較し、その消費魔力量が加速度的に増加してしまった。
拡散した分、高度も上げることが出来るようだが、この魔力消費量をずっと続けるのはちょっと現実的じゃないな。
「これは、緊急時用かな」
この魔力操作と魔素操作を併用した魔素拡散は、緊急避難としては使えるかもしれない。
魔力操作のみで魔素拡散を行うと、高度が上がるのはとてもゆっくりだ。
しかし魔素操作を併用することで、そのスピードがグンと上がった。
咄嗟にイメージしやすい様、通常の拡散を【拡散】、魔素操作を併用する場合を【霧散】とでも名付けておこう。
ゲーム内なのだ。恥はかき捨てかき捨て。
「じゃぁ召喚限界時間ギリギリまで、霧散の練習でもしておくか」
モンスターに襲われる咄嗟の瞬間に使えなければ意味がない。
目標は、詠唱時に脊髄反射で使用出来るレベルだな。
【魔素操作のレベルが上がりました】
【魔素操作のレベルが上がりました】
【魔力操作のレベルが上がりました】
【浮遊のレベルが上がりました】
【浮遊のレベルが上がりました】
【魔力上昇のレベルが上がりました】
【魔力回復上昇のレベルが上がりました】
名前 トリー
種族 魔素族
職業 エリートファイアプランクトン
レベル 6
魔力 160/546》660(440+220)
知力 16
スキル 魔力上昇4》5 魔力回復上昇4》5 魔力操作5》6 魔力感知6
火魔法4 浮遊2》4 魔素操作1》3
STP5》0 SKP1
◇◇◇◇
翌日、俺は昨日取得した【浮遊】スキルと【プランクトン】職について報告するために、冒険者ギルドへとやってきた。
西部劇の酒場に出てくるような観音開きのギルドの扉も、浮遊を得た今の俺には怖くは無い。
俺は【拡散】を使い身体を浮かせ、【浮遊】で扉を超えてギルド内に入っていく。
ギルドにいた連中が、浮かぶ俺を見てざわざわと騒ぎ始める。
その騒めきは徐々に広がり、俺が受付に辿り着くころには多くの者たちが俺に好奇の目を注いでいた。
そんな様子に俺は顔が緩むのを我慢しつつ、黒猫受付嬢のニャリスの下までやってきた。
「スキルと職業について報告しに来たんだけど」
「へ? あ、あぁ、なるほど。未発見のスキルと職業についての報告ね。……で、今のがそのスキルなのかしら」
「あぁ」
始めは固まっていたニャリスだったが、すぐに我に返り、話を進める。
他の受付嬢たちがまだ呆けている中、彼女は中々出来る女性のようだ。
「分かったわ。じゃぁこの認証ボードに手を乗せてくれるかしら。先ずはステータスを確認するから」
「あぁ」
俺は言われるまま、黒い金属ボードに手を乗せる。
すると、俺のステータスがニャリスだけに見えるように表示された。
「ふむふむ、なるほど。【浮遊】スキルに【エリートファイアプランクトン】職ね。【エリート】職と【ファイア】職は既出だけど、【プランクトン】職は新出のはずよ。おめでとう、報酬とギルドポイント(GP)が出るわ」
そう言って、淡々と手続きを進めるニャリス。
もっとこう、凄い凄いと言われると思ったのだが、少し肩透かしだ。
と思っていたが、気づけばニャリスの周りを他の受付嬢が取り囲んでいた。
「ちょっとあんたたち、本人の承諾無しにスキルを見るのは規約違反でしょ! 見るならトリーの許可を取りなさい!」
他の受付嬢たちに気付いたニャリスが、彼女たちを叱咤する。
すると彼女たちは“はーい”と可愛く返事を返し、俺に許可を求めてきた。
「ねぇねぇあなた、さっきの浮いてたやつって新しいスキルなのかしら?」
「それとも新しい職業なのかな?」
「魔素族って中々いないから、情報が全然無いんだよねぇ~」
「私たちも見ていいかな? いいよね?」
「お、おう……」
彼女たちの圧に押され、素直に頷く俺。
すると彼女たちは“やったー”と嬉しそうに俺のステータスを覗き始めた。
因みに皆、頭に猫耳の付いた猫人族ばかりだ。
「えっと、これはどういうことなんだ?」
「ごめんなさい、新出の情報は少ないから皆情報に飢えてるのよ。受付の子たちは冒険者と特に専属という決まりはないんだけど、自然と担当者が決まってくるわ。だから自分の担当の冒険者に良い情報を渡そうと、皆必死なの」
「へ~、なんでそんなに頑張るんだ?」
「自分の担当者がギルドランクを上げれば、その分自分の査定に上乗せされるからね。そりゃ必死にもなるでしょ」
ここでも出世が絡んでいた。
世知辛い世の中だ。
「だから、こうやって自分の情報を教えてくれるのはとても助かるわ。こういうのは自分のアドバンテージでもあるから、秘匿する人も多くて」
「なるほど」
確かに、折角自分で発見したものを他人に広めてしまうのを嫌がる者もいるだろう。
でもまぁ俺の場合は既に皆に披露してしまったから、今更ではあるのだが。
「それに、ギルドではなく情報屋に売ってしまう人も少なくないの。あっちの方が金銭的には割りが良いからね。あなたも何か発見したら、一度そちらを利用してみるのをお勧めするわ」
「……いいのか、そんなことを俺に教えてしまって。情報が無くて困ってるんだろう?」
「別に構わないわよ。既に基本的な情報は出揃っているから、ギルドの運営としては別に困っていないから。ギルドにない情報でも、情報屋なら掴んでいることも多いからね。ただ情報屋から情報をもらうには、自分の情報を何か渡さないといけないのよ。まぁあなたなら困ることはなさそうだけれど」
「どうだろうな」
なるほど。ギルドに無いような情報でも、情報屋なら知っている可能性があるのか。
その情報をもらうために、ギルドに無い自分の情報も確保しとかなければならないと。
なんでもかんでもギルドに渡すのでは無く、自分の情報をもう少し大切にしろとニャリスは暗に教えてくれているようだ。
「ただギルドと違ってデマも少なくないみたいだから、その辺りは自己責任で。正確な情報が欲しいなら、やっぱりギルド以上に信頼できる場所はないからそれは覚えておいてね」
「了解だ。色々とありがとな」
「これも仕事のうちよ。気にしなくていいわ」
と素っ気なく返すニャリス。
ただ少しだけ頬を赤らめているのは気のせいでは無いだろう。
「じゃぁこれが今回の報酬ね。【浮遊】スキルに対して報奨金が1万ガルで、GPが5ポイント。【プランクトン】職に対して報奨金が2万ガルとGPが10ポイントよ。取得方法を提示してそれが確認出来たら、更に同じだけ支払われるわ」
「意外と多いんだな」
「お金は全然大したことないけど、GPに関しては確かにかなり優遇されているわね。それだけギルドに貢献してくれたってことよ」
所持金に関しては、ゲームスタート時にギルドより援助金として一律5000ガルが支給されている。
下級の生命力ポーションが500ガル、作業用ナイフですら1000ガルかかることを考えれば、確かに報奨金に関しては余り多いとは言えないだろう。
しかしGPに関して言えば、中々おいしいと思う。
冒険者ギルドにはランクがFからAまで存在し、ランクを上げるのにGPが10ポイント必要になる。
通常1つのクエストに対して支払われるGPは1ポイントで、ランクを上げるにはそれを10回繰り返さなければならない。
1つのクエストをこなすのに少なくとも数時間は掛かるらしいから、今回もらったGPがどれだけ破格か分かるだろう。
「と言っても、Dランク以上に上がるためには試験を受ける必要があるから、ポイントを集めるだけじゃダメなんだけどね」
「それでも助かるよ。お金はギルドで預かっておいてくれ」
「分かったわ。ついでにランクアップの手続きも済ませておくわね。……はい、これでEランクにランクアップしたわよ。習得方法も教えてくれるのなら検証はこちらでするけど、どうする?」
「折角だから、それも頼んでおくよ」
そう言って俺は【浮遊】と【プランクトン】職の習得方法をニャリス達に伝えていく。
すると聞き終えた彼女は、“はぁ”とため息をつき、
「あなた、変わってるのね」
とバッサリ切って捨てた。
「魔素族の人自体かなりレアだからすぐには無理かもしれないけど、検証出来たら追加の報酬を支払うわ。それからあなた、まだ実体化は出来ていないのよね? というかこの習得方法を聞いた限りじゃ、真逆の方向に進んでるじゃない。この分だとこれから先も物を持ち歩いたり出来ないわよ?」
「あ……」
そう言えば元々【魔力操作】を訓練していたのは実体化のためだった。
【拡散】や【浮遊】に浮かれてすっかり頭から抜け落ちていた。
「おそらく今のあなたでも一時的に実体化することは可能のはずよ。ただ浮遊する時には持てなくなってしまうから、当分ギルドカードはこちらで預かることになりそうね」
「まじか……どうしよう」
確かに、【魔力操作】と【魔素操作】のレベルが上がった今なら実体化は出来るのだろう。
しかし俺はこれから【浮遊】をメインに冒険するつもりだ。
一体どうすれば……。
「はぁ。まぁ手が無いわけじゃないわよ? 【光魔法】と【闇魔法】のレベルを20に上げると、【空間魔法】という中級魔法を取得可能になるの。その【空間魔法】レベル1に【亜空間収納】という魔法が存在するわ。これなら普段は実体化していなくても物の持ち運びが出来るから、あなたでもギルドカードを持ち運ぶことは可能になるわよ」
「おぉ、なるほど! ……でも、それってかなり大変じゃないか? それにスキル枠が三つも埋まるのか」
「仕方が無いわよ。何かを得るのにそれ相応の労力が必要になるのは当然でしょう。それとスキル枠の方はあまり心配する必要は無いと思うわ。中級スキルの中には複数の初期スキルを統合する物もあるし、最悪の場合でも空間魔法を残して光と闇は消してしまってもいいんだから」
「へぇ、そんなことが出来るのか。なるほど……わかった、ちょっと頑張ってみるよ」
とりあえず【光魔法】と【闇魔法】を習得するために、SKPが10ポイント必要だ。
先ずはレベルを上げて、この2つを習得してしまうとしよう。