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29話

今回の完結にて皆さまから様々なご意見を頂き、色々と反省する部分も多くありました。

そこで今作も引き続き連載させていただき、一応の完結を目指したいと思います。

遅々とした連載になるやもしれませんが、応援いただけると幸いです。

29話は前回削除させていただいた部分になります。

少々長文になっておりますが、よろしくお願い致します。



【18日目】

 

 ファイスの街を出発して3日目。

 現在俺と使い魔一行は、西にそびえる【ゴレム鉱山】目指して空の旅を楽しんでいる。


 ファイスの街から【ゴレム鉱山】までの距離はおよそ200㎞程。

 途中中間地点として宿場町が置かれているらしく、現在俺たちはその宿場町を目指している道中だ。

 

 現在俺の【空中遊泳】レベルは6に上がっており、分速70m程で移動可能だ。

 歩行速度より少し早い程度スピードは出ている訳だが、それでも一日に移動できる距離はせいぜい20㎞程。

 上空5mを移動することで出来るだけ戦闘は避けているのだが、中々どうして時間がかかる。


 理由は2つ。

 1つは休憩が頻回に必要なこと。


 魔力が増えたおかげで移動だけなら少しは余裕が出てきた俺だが、それでも連続して移動できるのはせいぜい60分程。

 加えてガーディンの体力値が低い影響で、【飛行】スキルによって消耗した体力を適宜回復する必要があるため、俺たちは30分置きに休憩をとる羽目になっている。

 STPを体力に振るという選択肢もあるのだが、どうせ俺の魔力回復のための休憩が必要なので、大人しく休憩を挟むことにしている。


 そしてもう1つの理由が……。


「来たか……」


『――Kyuuu!』


 遠くからこちら目掛けて飛行してくる3匹の白い鳥。

 地上のモンスターに襲われることは無いのだが、空中を飛行するこいつらとはどうしても会敵してしまうのだ。


 俺は使い魔達に戦闘準備をさせつつ、先日訳有って取得することにした【鑑定】スキルを鳥型モンスター達に使用する。




マテリアルバードLv.3

生命力260 魔力170 体力24 筋力25

知力11 技術力15 敏捷力17

【飛行】【突き】【聴覚強化】【物理耐性】【筋力上昇】


マジックバードLv.5

生命力210 魔力280 体力22 筋力20

知力26 技術力13 敏捷力16

【飛行】【突き】【聴覚強化】【魔法耐性】【知力強化】


マテリアルバードLv.17




「マテリアルバード2体にマジックバード1体だ! あの真ん中の奴は結構強いぞ! スレッダーが前衛! ガーディンはスレッダーのフォローだ!」

「――Gyupi!」

「――Gyagya!」


 俺の忠告に、白い翼をはためかせながら前へ出るスレッダーと、盾を揚げて応えるガーディン。

 俺はそんな彼らを見やりつつ、ガーディンに回復魔法を掛ける。


「――【継続回復(リジェネレイト)】」


 詠唱と共に、ガーディンの身体が仄かに光る。

 【聖光魔法】レベル1で習得した【継続回復リジェネレイト】。

 自分の知力値の3倍のポイント分、相手の生命力を5分程かけてゆっくり回復する魔法だ。

 消費魔力は100とお高めだが、俺の高い知力だと十分お得な魔法だろう。


 そうしているうちにマテリアルバードたちが俺たちの下へとたどり着き、そのままの勢いで襲い掛かってくる。


 しかし。


「――Gyupi!」


 スレッダーの放つ大量の糸が、マテリアルバードたちに襲い掛かる。

 慌てて避けようとするマテリアルバードたちだが、その敵に向かってスレッダーの糸はまるで意志を持っているかのように追随する。

 そしてマテリアルバードたちを捕えると、そこへ更なる糸が噴射され、敵の動きを封じていった。


 糸にからめ捕られ、勢いを失くしていくマテリアルバードたち。

 しかしレベル17のマテリアルバードだけは、何とかスレッダーに攻撃を加えようと、もがきつつも【突き】スキルを放ってくる。

 が――


「――Gyagya!」


 そこへすかさずガーディンが間に入り、敵の攻撃を盾で受けとめる。

 レベル差のせいで生命力の半分近くを持っていかれるが、先ほど掛けた【継続回復(リジェネレイト)】のおかげで徐々に失った生命力を回復していく。


 盾にぶつかり勢いを完全に失くした敵は、そのままスレッダーの糸にグルグルと拘束され、ビクビクッと硬直したかと思うと徐々に抵抗をやめてしまった。


「……ふう、終わったか」

「――Gyupi!」

「――Gyagya!」


 俺の言葉に、満足そうに肯く使い魔達。

 スレッダーの尾の部分からは糸が3本の束になって垂れ下がり、その先には先ほどのマテリアルバードたちが繭に包まれたかのように拘束されている。

 ステータスを見ると、先ほどの戦闘で失った魔力が、徐々に回復しているのが分かった。

 

 スレッダーは先日マナザイデナロウプに進化したことで、【魔糸精製】と【魔糸操作】というスキルを習得している。

 このスキルは魔力を代償とすることで魔糸を生成し、その魔糸を自在に操る能力を持つ。

 

 この魔糸は粘着性はもちろんの事、強度を高めることなども出来るらしく、こういった筋力の強い敵にも拘束が可能になったのだ。

 また拘束だけでなく、鞭のようにして敵を攻撃することで、物理ダメージを与えることが出来ることも分かった。


 そしてこのスキルで一番の恩恵が、現在行っている魔力の吸収。


 スレッダーの【魔糸精製】には、敵一体を拘束する量を噴射するのに大体100程の魔力を消費する。

 しかしこうして最後に魔力を回収することで、その魔力消費を相殺し、さらにプラスにすることが可能になったのだ。

 

 始めは俺が魔法で敵を沈めていたのだが、今回の様な戦闘方法の方が彼らのスキル経験値も上がり、なにより魔力的にも効率がいい。

 その為若干のリスクはあるものの、この真っ当な戦闘方法を行っていると言う訳だ。


「――Gyupiii」

「――Gyugya!」


 敵の魔力を全て吸い終わったのか、スレッダーがガーディンに声を掛ける。

 するとガーディンは繭の所まで飛んでいき、右手に持った銅の剣で繭を何度か突き刺した。




【スレッダーの魔糸精製のレベルが上がりました】

【スレッダーの魔糸操作のレベルが上がりました】

【スレッダーの知力上昇のレベルが上がりました】

【スレッダーの技術力上昇のレベルが上がりました】

【ガーディンの盾のレベルが上がりました】

【ガーディンの剣のレベルが上がりました】

【ガーディンの生命力上昇のレベルが上がりました】

【ガーディンのレベルが上がりました】

【ガーディンが進化可能となりました】

【ガーディンがリトルデビルからデビルへと進化します】




 アナウンスと共に、ガーディンの体が発光する。

 そしてその光が収まると、そこには進化を終え、一回り大きくなったガーディンの姿が。



「おー。逞しい。ちょっと男前になったな」

「――Gyagya!」


 俺の言葉に、ガーディンが嬉しそうに辺りを飛び回る。

 俺もそんな彼の姿を見ながら、思わず笑みをこぼす。


 ガーディンが自分の進化をこれほど喜んでいるのには理由がある。

 実はこのガーディン、ファイスの街を出発した後、一度死に戻りを経験しているのだ。


 出立時のガーディンのレベルは9。

 ステータスで見ると、召喚者でいうところのレベル5相当だ。

 明らかにレベル不足なのだが、俺は筋力に極振りしていることや、出立前に用意した装備を過信し、あまり気にしていなかった。


 始めはある程度形になっていたのだが、途中先ほどの様な高レベルの敵が複数体混ざっていたらしく、その二体から立て続けに攻撃を受けた結果、ガーディンが初の死に戻りを経験することになってしまったのだ。


 いきなりの事に初めは呆然としたものの、次の日にはきちんと召喚されることを思い出し、すぐに気持ちを切り替える。

 そして今回の反省として、俺は新たに【鑑定】スキルを取得することに決めたのだ。


 【鑑定】は、【モンスター鑑定】、【アイテム鑑定】、【人物鑑定】、【防武具鑑定】等複数の鑑定を統合した中級スキルだ。

 このスキルにはレベルが存在せず、その気になれば全てを取得しさっさと統合することも可能らしい。

 しかしその分鑑定に要する【基礎レベル】数が上がるため、通常は必要な数だけ取得し統合させるものだということ。


 俺はこの中から【モンスター鑑定】と【アイテム鑑定】、そして【防武具鑑定】を選択し、すぐさま統合させた。

 【モンスター鑑定】は今回の反省を踏まえての取得だが、あとの二つは【ゴレム鉱山】に着いた後試したいことがあったため、これを機に取得することにしたのだ。


 そしてその後は戦闘は最低限に抑え、移動を最優先に行動。

 その際、魔糸による攻防でスレッダーさんの優秀さが明らかになったり、マイムがスレッダーの腕の中の置物と化したり、ガーディンが再び再召喚されたりと色々なことを経て、現在に至ると言う訳だ。


 俺は楽しそうに飛び回るスレッダーとガーディンを眺めつつ、ステータスを開く。




名前 ガーディン

所属 デビル

個体種 リトルデビル》デビル New‼

レベル 9》1

生命力 146》195(150+45)

魔力  -

体力  19》23(16+7)

筋力  53》66(44+22)

知力  14》15

技術力 14》15

俊敏力 14》15

スキル 飛行5》6 盾4》5 筋力上昇5

    剣2》4 体力上昇3》4

    生命力上昇1》3 防御1 New‼

STP0》7(筋力値振)》0 SKP0》3》1




 レベルが上がり進化したことで、ガーディンのステータスが全体的に強化された。

 相変わらずのSTP極振りのおかげで筋力値はかなり高くなっているが、生命力と体力もスキルの影響で良い感じに上昇している。

 進化で得られたSKPは2ポイント。

 恐らくステータス総値が5上がるたびに1ポイント取得出来るのだろう。


 俺は新たに得たSKPを使い、【防御】スキルを取得させた。

 このスキルは敵からの物理ダメージを軽減してくれる効果があるらしいので、取っておいて損は無いだろう。


「さてと。ガーディンも良い感じに強化されたし、そろそろ出発するか――」


 と俺が再び西へ進もうとしたその時。


 ――リンリンリンリンリンリン……


 突然近くで鈴の音の様な音が聞こえてきた。

 俺は驚きつつもその発生源を探る。


「――Gyagya」


 すると、ガーディンが自分の首から下げていたギルドカードを俺の下へと持ってきた。

 どうやら音の発生源はこのギルドカードらしい。

 俺はガーディンが差し出したギルドカードをのぞき込み、内容を確認した。


「救助依頼、か……」


 表示された内容は、近くの冒険者からの救助依頼。

 どうやらこの付近の冒険者が、周囲に救難信号を出しているらしい。


 俺はギルドカードの性能の高さに驚きつつ、どうしたものかと考える。

 表示されている内容によると、場所はここから北へ1㎞程先とのこと。

 然程遠い訳ではないが、徒歩スピードの俺には少々堪える距離だ。


「とは言え、見捨てるのも目覚めが悪いか……」

 

 これが召喚者からの救難信号なら放置しても然程問題は無いだろうが、NPCからであったら大事だ。

 救難信号が出ている辺りは、丁度森が深くなっている場所だ。

 恐らくモンスターに襲われ助けが必要になったのだろう。


 俺は先ほどの戦利品をスレッダーに【亜空間収納アイテムボックス】へしまわせると、ガーディンとマイムに指示をだす。


「ガーディン、マイムを持ってこの救難信号が出ている場所まで全速で飛んで行ってくれ。俺はスレッダーと一緒に後を追いかける。マイムは到着したら、【プラズマ】で一気に敵を殲滅してくれ。ただし、前みたいに魔力が尽きない程度で頼むぞ」

「――Gyugya!」

「――Pigiii‼」


 久しぶりの出番に、俄然張り切って見せるマイム。

 マイムが戦うと魔力消費が激し過ぎ移動に支障をきたすため、ずっと大人しくしてもらっていたのだ。


 マイムがスレッダーの手からガーディンへと受け渡されると、ガーディンはそのまま救助依頼が出ている方向へと一気に加速していった。


「じゃあ俺たちも行くか!」

「――Gyupi!」


 彼らに続くようにして、俺たちもその後を追う。

 しかしガーディンは筋力値が上昇したこともあり、どんどんと俺たちを引き離していく。

 あの分だと到着するころにはガーディンはばててしまっているかもしれない。

 しかしまあ心配は無いだろう。


 マイムの【プラズマ】があれば、この辺りの敵に後れを取ることはまず無いはず。

 ただし魔力を気にしなければ、という注釈は付くが。


 俺は念のため【亜空間収納アイテムボックス】から魔力ポーションを取り出してもらい、スレッダーにそのまま持たせておく。

 最悪マイムが張り切り過ぎたとしても、これで何とかなるはずだ。……多分。


 俺は若干心配になりつつも、小さくなったガーディンの背中を追いかけ、救難信号の発生源へと先を急ぐことにした。











【マイムのプラズマのレベルが上がりました】

【スレッダーの飛行のレベルが上がりました】

【ガーディンの飛行のレベルが上がりました】

【ガーディンのレベルが上がりました】



 救援信号を受け、発信場所と思われる場所まで15分程全速で移動する俺とスレッダー。

 その道中、案の定魔力が急激に減少し始めたため、落ち着いて魔力ポーションで魔力の補充を行った。

 そして――


「これはまた……」


 現場に到着すると、そこにはマイムにやられたであろうモンスター達のドロップアイテムと、仕事をやり終え満足顔のガーディンとマイム、そして木の陰で隠れてマイムのプラズマから逃れていたのであろう2人の人影があった。

 俺が現場に降り立つと、こちらに気が付いたその人影の片割れの男が、顔を明るくして声を掛けてくる。


「おお! お主がこやつらの主人か! いやー助かった。ダメ元で救援依頼を出してはみたものの、半分諦めておったのだ……救援、感謝する」


 そう言って、丁寧に頭を下げてくる男性。

 その身長は俺の半分ほどで、顔は茶色い髭で覆われている。

 おそらく彼はドワーフ族なのだろう。


「いや、無事なようで良かった。二人とも、怪我は無いか?」

「ああ。多少負傷もしておったが、お主の召喚モンスターが戦ってくれている間に、儂も娘もポーションで回復は済ませておる。問題ないぞ」


 そう言って、無事をアピールするように身体を軽く動かして見せるドワーフ。

 彼の後ろにいた小さな少女も、大丈夫だと頭を下げてきた。


「そうか、なら良かったよ。……ところで、なんでまたこんな場所に二人だけで?」


 ここは街道から近いとはいえ、それでもモンスターが蔓延る森の中だ。

 流石に二人だけで入るには危険だと思うのだが……。


「あー……それなんだが、実は先ほどまで4人程召喚者の護衛がおったのだ。しかし突如4人ともそろって送還されてしもうてのう。しかも運悪くゴブリンの集団との戦闘中だった為に、こんなことになってしもうたのだ」

「それはまた……」


 運が悪い、とは簡単に言い切れない事態だ。

 彼の話を聞くに、その4人の送還も本当に突然の事だったらしく、本人達も何やら慌てているようだったらしい。

 おそらく、現実世界で何かあったのだろう。

 しかも4人揃ってとなると……。

 

 と俺が一人考えていると、森の向こうから複数の男たちの声が聞こえてきた。


「おーい! ドヴェルグさーん! ダリアちゃーん! いたら返事をしてくださーいっ‼」


「……あの声、今言っていた召喚者たちか?」

「ふむ、どうやらそのようだの。……おーい‼ こっちじゃこっち! 2人とも無事じゃぞー‼」


 そう言って、大きな声で無事を知らせるドワーフ。

 こちらの声に向こうも気が付いたのか、木々の向こうから急いで近づいてくる音が聞こえてきた。

 そして間もなく、茂みの中から一人の騎士風の男が姿を現す。


「ドヴェルグさん! ダリアちゃん! 良かったー……。二人とも無事で……」


 2人を見て安心したのか、その場に膝を着く騎士の男。

 そんな彼に続くようにして、残りの3名も姿を現した。

 3名とも騎士の男同様、無事な2人を見てほっとした表情を見せている。

 やはり今回のいきなりの送還は、彼らにとっても不可抗力な事態だったようだ。


「ああ、問題ないぞ。この召喚士が助けてくれたからの」


 ドワーフの言葉に、4人の視線がこちらへと移る。

 そして俺や使い魔達の姿を見ると、4人ともギョッとした表情を見せた。


「君は……。そうか、君が2人を助けてくれたんだね。ありがとう」


 戸惑いつつも、俺に礼を言ってくる騎士風の男。

 そんな彼に続いて、他の3人も慌てて頭を下げてくる。


「いや、問題ない。何やら事情もあったみたいだしな。何があったのかゆっくりと聞きたい所だが……とりあえず、場所を移した方が良さそうだ」

「あー……そうみたいだね。すまない、僕たちが大声で叫んでいたから……」


 そう言って、申し訳なさそうな顔をする騎士の男。

 彼の言う通り、大きな声に釣られてきたのか、辺りからモンスターの声が聞こえてきた。


「ま、済んだことを言っても仕方が無いさ。とりあえず辺りのモンスターだけさっさと片付けて、街道に出るとしよう」

「……そうだね。ドヴェルグさんたちもそれで構いませんか?」

「うむ、儂らも問題無いぞ。用は既に済ませておるしの」


 騎士の声に、腰に掛けたカバンを叩きながら頷くドワーフ。

 どうやら彼らは何かのアイテムの収集の為に、この森へとやって来ていたようだ。


「じゃ、パパッと済ませて戻るとするか。スレッダー、マイム、頼んだ! ガーディンは念のためここで待機な」

「――Pigi!」

「――Gyupi!」


 俺の言葉に頼もしく鳴いて答える使い魔達。

 魔力が少々勿体ないが、ここはさっさと片付けて、脱出を最優先にするとしよう。





【スレッダーの魔糸精製のレベルが上がりました】

【スレッダーの魔糸操作のレベルが上がりました】

【ガーディンのレベルが上がりました】


◇◇◇◇



 モンスターを蹴散らし、移動すること20分。

 ようやく街道へと出ることが出来、ほっと息を着く俺たち一行。

 

「ふー、とりあえずは一安心ってとこだな」

「そうだね。キミや使い魔たちのおかげで、危なげなく戻ってこられたよ」

「確かにのう。あのビリビリな奴も相当じゃったが、白い奴もかなりの強さじゃった。ここらのモンスターが、まるで雑魚の様にあしらわれておったわい」

「確かに……」


 ドワーフの言葉に、苦笑して応える騎士の男。


 あの後結構な数のモンスターが襲ってきたのだが、使い魔達が問題なく叩きのめしてくれた。

 騎士たちも戦闘に参加しようとしてくれたが、あっという間に散っていく敵を目にし、ポカンとした表情をみせていたな。


 俺が彼らの表情を思い出しにやけていると、騎士の男が改まってこちらに向かい口を開いた。


「改めて礼を言わせてくれ。僕は召喚者のアラン。この先のニッケルの街で、ドヴェルグさん――そちらのドワーフの方の依頼を受けて、今回護衛クエストをうけていたんだ。しかしリアルで地震があったみたいでね。4人とも強制送還されてしまい、彼らを危険な目に逢わせてしまった。キミがいなかったら今頃どうなっていたか……本当にありがとう」


 そう言って、深く頭を下げてくるアラン。

 他の3人も同様に頭を下げてきた。


「ドワーフのドヴェルグだ。儂からも礼を言うぞ。儂と娘を助けてくれ、本当に感謝する」

「あ、あの! 私はダリアと言います! 先ほどは危ない所を助けていただき、ありがとうございました!」


 ドヴェルグと名乗ったドワーフの言葉に、彼の娘だという茶髪の少女も元気に礼を言ってきた。

 ダリアはドヴェルグ同様ドワーフらしいが、毛むくじゃらの父親とは違い、ちょっと癖っ毛の強いだけの普通の少女に見える。


「召喚者のトリーだ。偶々ここを通りかかっただけだから、あまり気にしないでくれ。とにかく、皆何事も無くて良かったよ」

「はは、君は意外と謙虚な性格だったんだね。前回のワールドクエストでは大暴れしていたから、てっきりもっと剛毅な性格をしているものだと思っていたよ」

「ああ……なるほど、それで」


 アラン達はどうやら俺たちの事を知っていた様子。

 先ほどのギョッとした顔も、先日の戦いを知っていたが故だったのか。


「ほほう、お主はやはり名のある冒険者だったか。その大暴れしたという戦いについて、儂も是非聞かせてもらいたいものだのう」

「えっと……それはまた俺のいないところでお願いします」


 自重せずに暴れたのは確かだが、それを改めて語って聞かされるなど勘弁願いたい。


「もうお父さん! あんまりずけずけと聞くのは失礼だよ! それに皆さんは召喚者なんだから、あんまりゆっくりしていると時間がなくなっちゃうよ!」

「っと、そうじゃったそうじゃった。名残惜しいが、その話はまた別の機会にさせてもらうとしようかの」

「ですね。まだ少し余裕はありますが、また余震が来て強制送還される可能性も有ります。とりあえず今日のところは大人しくニッケルの村へと帰るとしましょう。トリーはこの後どうする予定かな? もしニッケルの村に行くつもりだったら、念のため一緒に行ってもらえると助かるんだけれど……どうですかね、ドヴェルグさん」

「うむ、そうじゃの。この先に馬車を待たせておるから、お主がよければ是非乗っていってくれ。皆が乗る余裕は十分あるはずじゃからの」


 2人の提案に、しばし考える俺。

 

「じゃあ……お言葉に甘えるとするよ。俺の足じゃ、今日中に着けるかどうか微妙なところだったからな」


 馬車での移動なら、今日中に宿場村まで移動することも可能だろう。


「おお! そうかそうか。では早速向かうとしようかの。その大暴れしたという戦いについても、詳しく聞きたいしのう」

「もう! お父さんったら……ごめんなさいトリーさん。お父さん、戦いとか冒険譚なんかに目が無くて……でももしトリーさんが良ければ、私も聞いてみたいなぁ、なんて……」


 そう言って、上目遣いで尋ねてくるロリっ子のダリア。

 どうやら父親だけでなく、彼女もそういった話が大好きなようだ。

 同行を承諾した以上、どうやら俺に断る選択肢は無い様子。

 それに、小さな子供の上目遣いはズルいと思う。

 俺は逃げ場がないことに諦めつつ、大人しく彼女たちの要望に応えることにした。









 【ゴレム鉱山】への道中、ドワーフのドヴェルグたちと共に馬車で運ばれる・・・・こと数時間。

 俺は遂にニッケルの町へとたどり着くことが出来た。


「おおー。思ったより賑やかな町だな。宿場町と聞いていたから、もっとこじんまりした所だと思っていたが……」


 予想外の町の大きさに、俺は思わず声を漏らす。

 宿場町と言えば、宿だけ置かれた普通の寒村をイメージしていた。

 しかしこの町はそんな俺のイメージからはかけ離れており、至る所で活気が見られる。


 ただ観光地というよりは、工業の町、といった印象だろうか。

 人種はドワーフ半分、他種族半分。

 一つ一つの建物が比較的大きく、どの屋根からも煙がモクモクと立ち昇っているのがわかる。

 

 清潔な印象だったファイスの街から一転、ニッケルの町は中々男臭い街並みのようだ。


「まあここは【ゴレム鉱山】から採掘された鉱物の精製場所でもあるからの。輸送費などのことも考えると、儂ら生産職にとってこの町は腕を磨くのにうってつけの場所なんじゃ」

「なるほど」


 各建物から立ち上る煙は、おそらくそれによるものなのだろう。

 町の通りには生産職だけでなく、冒険者の姿もよく見かける。

 ドヴェルグ曰く、見習いの職人たちの作品を安く買い取れるため、駆け出しの冒険者なども多く訪れるとのことらしい。


「ではドヴェルグさん、僕たちは先にギルドの方へ報告に行ってきます。強制送還の事を含めて、色々と時間もかかるでしょうし」


 町に入ったところで、アラン達がドヴェルグにそう切り出す。

 彼らは今回の護衛クエストで、不可抗力とは言えドヴェルグたちを危険な目に逢わせてしまった。

 そのことについて、ギルドに色々と報告しなければならないようだ。


「ふむ……。では儂もお主らと共について行くとしようかの。確かに危険な目にはおうたが、お主らの故意では無いこともきちんと伝えねばなるまい。それには依頼主である儂の証言があった方がよかろう」

「それは……すいません。よろしくお願いいたします」


 ドヴェルグの気遣いに、アラン達は申し訳なさそうに頭を下げる。

 確かに依頼主であるドヴェルグの証言があれば、今回のペナルティーも多少軽減されるだろう。

 アラン達は誠意ある冒険者だ。

 そんな彼らをドヴェルグも不憫に思ったのかも知れない。


「気にするな。それにトリーのおかげで大事にはならんかったのだ。感謝ならこやつにしておけ」

「そう、ですね。トリー、改めて礼を言わせてくれ。本当にありがとう」

「いや、もう気持ちは十分伝わっているから気にしないでくれよ。困ったときはお互い様ってことでさ」

「はは、そう言ってもらえると気が少し楽になるよ。じゃあ何か困ったことがあればいつでも僕たちに声を掛けてくれよ。しばらくは僕らもこの町や【ゴレム鉱山】にいると思うからさ」

「ああ、そうさせてもらう」


 アランの爽やかな笑顔に、俺も気持ちよく答える。


「では儂らはさっさと厄介事を済ませてしまうとしようかの。トリーよ、店の方へはダリアに案内させるから、先に行って待っておってくれ。今回の礼も含め、色々と話をしておきたい」

「了解だ。じゃあダリア、よろしく頼む」

「はい! 任せて下さい!」


 俺の言葉に、ドヴェルグの娘であるダリアが元気よく答える。

 7歳くらいに見える彼女だが、実は既に成人を済ませており、今年で16歳を迎えるとのこと。

 ドワーフの女性は、成人しても見た目が児童期からほとんど変わることがないらしい。

 そちらの嗜好を持ち合わせている人間には、天国の様な場所に違いない。


 冒険者ギルドへと向かうドヴェルグたちを見送り、俺はダリアと共に馬車に乗りながら店へと向かう。


「このぐらいのスピードなら、振り落とされずに済みそうだ」

「ふふ、町中ではスピードは出せませんからね。でも私、あの密閉箱に詰められる人を見ることになるとは思っていませんでした」

「ああ。俺も自分が箱詰めされる日が来るとは夢にも思わなかったよ」


 ダリアの言葉に、俺もこの町までの道中の事を思い出し苦笑する。

 ドヴェルグ達を助けた後、一緒に馬車に乗せてもらうことになった俺たち一行。 

 しかし馬車が出発して間もなく、俺は馬車の中から外へと放りだされてしまったのだ。

 どうやら馬車が一定以上の速度を出すと、中に吹き込む風の風圧に負けてしまうらしい。


 現代の車の様に空気の流れを一切遮断出来れば良かったのだが、そこは中世風ファンタジー世界。

 木製の馬車にそこまでの性能は備えられてはいなかった。

 ただ事情を鑑みたドヴェルグが自前のアイテムボックスから【密閉箱】という特殊な入れ物を取り出し、これに入ってみてはどうだと提案してきた。

 自分が箱詰めされることに多少の抵抗感もあったが、皆の足を止める訳にもいかず、俺は仕方が無くドヴェルグの提案に乗ることにした。


 密閉された箱の中は閉塞感が強く気持ちの良いものでは無かったが、問題なく移動できることが判明。

 酸素のことなども初めは危惧していたが、どうやらこの身体は酸素を必要としていないらしく、2時間ほど箱詰めされたが何の問題も生じなかった。

 思わぬところで魔素族の新たな可能性を発見したわけだが、しばらくあの拷問は遠慮したい所。


 馬車を走らせしばらくしたところで、ドヴェルグ達が働くと言う店へと到着した。

 

「……でかいな」


 到着した店を見上げ、思わずそう呟く俺。

 鍛冶師だというドヴェルグが働く場所という事で、俺はてっきりこじんまりした個人経営の店を連想していた。

 しかし目の前にある建物は、俺の予想をはるかに上回る大きさだ。


 三階建ての石造りの建物で、通りに面する大きさも他の建物の5倍ほどはある。

 本当にここが目的の場所なのだろうか?

 

 俺の戸惑いに気付き、ダリアが俺に声を掛けてきた。


「トリーさん、ここが私たちの働くガーガン商会です。ここでは防具や装飾品を主に扱っていて、ここの商会長はニッケルの町の職人たちの取り纏めもやっているんですよ。因みに、商会長は私の叔母、つまり父の妹が勤めています」

「……」


 正直、話が大き過ぎてついて行けない。

 礼をしたいから店で待っていてくれというドヴェルグの言葉に多少の違和感も感じてはいたが、なるほど彼はこの商会の経営に多少なりとも関わっているのだろう。

 俺が助けたこの2人は、どうやらかなりのVIPだったようだった。





【ギルドカードについて】

ガーディン死亡時、ギルドカードはスレッダーが糸で回収しています。

召喚モンスターや使い魔の装備は、死亡の際はそのモンスターと一緒に送還されます。

しかし装備品以外の持ち物については、その場に放置されてしまいます。

ギルドカードは本人(使い魔は使えます)にしか使用できず、紛失した場合はギルドにて5万ガル(約5万円)で再発行されます。


ギルドカードは【亜空間収納アイテムボックス】にしまっておくと、今回の様な通知が届きません。

なので通常、ギルドカードは装備のポケットや首からかけるなどして所持されます。


トリーあまりその辺りの事は気にしていませんでしたが、ガーディンが首からドッグタグの様に掛けている姿を見てカッコいいなと感じ、ファッション感覚でそのまま付けさせています。


【ガーディンの進化系について】

ガーディンはデビルに進化したことで、身長1mほどの浅黒い肌の少年へと風貌が変化しています。

顔は醜いモンスターから、ブサ――味のある顔へと変化しています。

体型はガリガリの骨皮体型から、健康的な細マッチョへと変身しました。


現在は全身革鎧で身を纏い、銅の盾と剣を装備しています。

それら詳細についてはまた次回以降で。


【鑑定について】

鑑定スキルにはレベルが存在せず、自分の基礎レベル(もしくは純ステータス値の総計)を基に効果が判定されます。

モンスター鑑定の場合、自分と敵のステータス総値の差で、レベル(差が0~50)、スキル(~100)、ステータス値(~150)、スキルレベル(~200)といった詳細が公開されます。

鑑定に統合した場合、鑑定の種類を増やすたびに、この数値が25ずつ増えていきます。

主人公はモンスター鑑定に加え、アイテム鑑定と防武具鑑定を統合したので、上記に50ずつ加算されています。



【スレッダーの糸噴射箇所】

仕様です。口付近から糸が垂れ下がる姿がどうしても耐えられなかったので……。

よろしくお願いいたします。




名前 トリー

種族 魔素族

職業 ラウムマーズスピリット

職業スキル 暴炎王の空域(マゼリアルラウマー)

レベル 30

魔力  5865/5865》6120(1700+4420)

知力  208》221(130+91)

スキル 魔力上昇・改3》4 魔力回復上昇・改3》4  

    魔力操作・改4》5 魔力感知・改4》5 

    魔素制御1 魔素成長1

    火炎魔法2 空中遊泳4》7 

    暗黒魔法1 聖光魔法1》2 

    空間魔法1》2 

    連続詠唱16  知力上昇6》7

エクストラスキル ▽

称号スキル ▽

使い魔      マイム スレッダー ガーディン シャドウ

STP0 SKP258


名前 マイム

種族 プラズム

個体種 プリコーシスプラズム

レベル 13

魔力  -

知力  336》359(224+135)

スキル プラズマ10 浮遊6 知力上昇5》6

    アイテム効果上昇14 必要経験値減少

    被ダメージ上昇 

STP0



名前 スレッダー

所属 キャタピラー

個体種 プリコーシスマナザイデナロウプ

レベル 1》6

生命力 610》620

魔力  -

体力  87》108(60+48)

筋力  52》54

知力  174》243(162+81)

技術力 64》110(73+37)

俊敏力 15》16

スキル 魔糸精製1》5 魔糸操作1》5

    鳴き声6 飛行1》6 

    知力上昇1》5 技術力上昇1》5

    体力上昇5》8 アイテム効果上昇10》11

    必要経験値減少 被ダメージ量増加 

STP0》10(技術振り)》0





名前 ガーディン

所属 デビル

個体種 デビル

レベル 1》3

生命力 195》240(160+80)

魔力  -

体力  23》26(17+9)

筋力  66》79(49+30)

知力  15》16

技術力 15》16

俊敏力 15》16

スキル 飛行6》8 盾5》6 筋力上昇5》6

    剣4》5 体力上昇4》5

    生命力上昇3》5 防御1》3 

STP0》4(筋力)》0 SKP1》3



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