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【魔を喰らう者】が魔法ダメージをカットすることが判明してから1時間、俺とラビックはそのカット率について色々と検証を行った。
「うーん。はっきりは分からないけれど、【魔を喰らう者】の吸収量の判定は、威力じゃなくて消費魔力に依存するのかもねー。検証組に教える訳にもいかないから、断言は出来ないけど……」
「まあそこら辺は感覚で覚えていくしかないだろうな。幸い魔法攻撃はレジストを掛けておけば多少ダメージも抑えられるみたいだし、なんとかなるだろう」
ラビックと共にあれこれと検証した結果、【魔を喰らう者】は魔法ダメージそのものに対してではなく、それに用いられた魔力そのものを吸収しているのではないかと予想が付いた。
つまり、範囲攻撃よりも消費魔力量当たりの威力が多い単体攻撃の方が、ダメージカット率が多いと言う事だ。
まあ物理攻撃と違い、魔法攻撃はレジストを掛けておけばダメージも多少抑えられる。
なのであとは、敵に合わせて対応を考えていくしかないだろう。
「ま、それしかなさそうだねー。それでそれで? そろそろ【魔眼】も選択できるようになったんじゃないかなー?」
「ちょっと待てよ……おっ、1つ選択出来るようになっているぞ」
「ほんと!? さてさて、どんな魔眼なのかなー?」
魔眼△
貯蓄魔力 1003
選択可能魔眼 【魔呪眼】
「【魔呪眼】、ねー。カース系は割合ダメージを与える魔法だから、【魔喰い】みたいに敵の魔力を減らす感じの魔眼かな?」
「たぶん、そうなんだろう。一度試してみるか……」
【魔喰い】の性質から考えると、おそらくラビックの言うような効果がみられる可能性は高い。
まあ試してみれば分かることだ。
俺はステータスの欄から、【魔呪眼】を選択してみる。
するとーー
「うわぁ……その見た目は……」
「ああ。……気持ちが悪い」
選択した瞬間、身体のあちこちに10cm程の切れ目が走る。
そしてそれがゆっくりと開かれたかと思うと、それぞれの中からギョロリとした眼球が現れた。
その眼球は全て俺の意思と繋がっているらしく、俺の見たい方向へと連動して動いている様子。
ただ身体のあちこちに付いているせいか、視界が一気に広くなった。
魔眼△
貯蓄魔力 1003》3
発現魔眼 魔呪眼10 New‼︎
選択可能魔眼 なし
「トリーの人外化が加速しちゃった……」
「……言うな。多少の自覚はある」
「あはは、ゴメンゴメン。……でもこれ、隠せるのかな?」
「ううむ、どうだろう……」
俺は取り敢えず瞼を閉じる様にして、瞳を隠してみる。
「どうだ?」
「まあ隠れてはいるけれど……それ、前見えるの?」
「……見えないな」
瞼を閉じれば隠せはする様だが、これではまともに行動することも出来ない。
何か他に隠す方法は……。
「【魔喰い】みたいに、魔眼の能力を使ってみたらどうかな? そうしたら瞳も消えるかも」
「……だな」
【魔喰い】はあの黒い光を放つ度、瞳を一つ消失させていた。
なら俺の魔眼もきっと、同じ様に消えてくれるはずだ。
俺は近くの木々に向かい、【魔眼】を使用してみる。
「ーー【魔呪眼】!」
詠唱と共に、俺の【魔眼】の1つから黒い光が放射状に放たれる。
辺り一面が一瞬黒く染まったが、1秒も掛からない内に元の景色へと戻っていく。
そして光を放ち終えた眼球は、無事そのまま消失していった。
1つだけだが。
「あ、これ1つの瞳につき効果を1回発揮出来るのかー。ステータス表記に変化はないの?」
「えっと……」
魔眼△
貯蓄魔力 1003》3
発現魔眼 魔呪眼10》9
選択可能魔眼 なし
「残機が1、減っているな。あと9回使えるらしい」
「残機って……まあ分かりやすいけどさー。でもこれで瞳の処理は何とかなりそうだね! あとは効果だけれど……私が受けてみるのが一番分かりやすいかな?」
「……いいのか?」
「いいよいいよ! 【魔喰い】の攻撃よりも強力って事は無いだろうしねー。という訳で、どうぞ!」
「……了解だ。ーー【魔呪眼】!」
俺の魔眼が放った光に、ラビックが一瞬包まれる。
「おっ? 魔力が少し減ったみたいだねー。3割減ってところかな?」
「3割か……というかラビック、魔力が減っても大丈夫なのか? その、メンタル的に……」
「ん? ちょっと気怠くはなるけれど、特に問題はないよー」
「……そうか」
ラビックは魔力が減少しても、倦怠感を感じるだけで恐怖心などの不快感は感じない様子。
人によって感じ方も違うのだろうか?
「じゃあ引き続きどんどん打っちゃて、その魔眼を消してしまおう! その姿じゃ街に戻れないからねー」
「……だな。あとこの瞳が俺の弱点になるかどうかも試しておこう。念のため」
「あはは。そう言えば、そういう消し方もありだったねー。まあいきなり実践よりはそっちの方が良さそうだね! 手加減してあげるから、このラビックさんに身をゆだねなさーい!」
そう言って、嬉しそうに俺の眼球を突こうとするラビック。
それぞれの瞳も一応視界がリンクしているため、はっきり言って滅茶苦茶怖い。
が、彼女の言う通り、今のうちに試しておくべきだろう。
俺は身震いがするのをぐっとこらえ、彼女の目つぶしを受け入れることにした。




