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【魔力感知のレベルが上がりました】


「おぉ、わかったわかった! これが魔力か!」


 神殿の広場に場所を変え、エミリアに魔力を流してもらいながら、俺は何とか魔力感知のレベルを上げることが出来た。

 魔素族は他種族に比べれば魔力感知はしやすいらしく、エミリアに魔力を流してもらうだけで簡単に感じることが出来てしまった。

 さっきまでの苦労は一体何だったんだ。


「良かったです。というより、一人で魔力感知をしようなんてかなり無茶な話ですよ。自分の体温が分からないのと同様に、自分の魔力なんて早々分かるもんじゃないですから」

「なるほど……」


 説得力のある説明だ。

 しかし魔力感知のレベルが上がったことで、薄っすらとだが自分の魔力も感じられる。


「じゃぁもう少し魔力を流すので、頑張って魔力感知のレベルを上げちゃいましょう。レベル5くらいになれば、自分の魔力をはっきりと感じられるようになりますよ!」

「お、おう」

「じゃぁ行きますね……――治癒ヒール





【魔力感知のレベルが上がりました】

【魔力感知のレベルが上がりました】






 それから1時間ほど、俺はエミリアに魔力を流してもらいながら魔力感知の訓練を行った。

 やはり人から流してもらうのは効率がいいのか、あっという間に魔力感知が4まで上がった。


「最初のうちは、人に流してもらった方が効率が良いんです。でもそろそろ限界ですね。これ以上は、自分で訓練された方が効率がいいでしょう」

「そっか、サンキュ、エミリア。おかげで大分自分の魔力を感じられるようになったよ」


 召喚当初と違い、自分の身体の魔力をかなりはっきりと感じられるようになった。

 あとはこれを動かさなくてはいけないんだろうけど……。


「魔力操作は、先ほど私が流した魔力の流れをイメージしてみて下さい。初めは少し難しいですが、慣れれば早いと思います。ただトリーさんは魔素族なので、魔力の残量には注意してくださいね。無くなると死んでしまうので」

「……え?」

「もしかしてご存知有りませんでしたか? 魔素族は魔力が全てです。攻撃にも防御にも生活するのにすら魔力を使います。そして魔力が無くなると、身体を維持できずに消滅してしまうのです。と言っても、半日ほど時間を置けば同じ身代で再召喚されるのですが」


 なるほど、魔素族の魔力は生命力も兼ねてるのか。

 マジでマゾ族だな。

 しかもデスペナルティ無しで、再ログイン後のリスタートか。

 クリスタルを依り代にしているわけじゃ無いから、おそらく経験値アップボーナスもつかないんだろうな。


「わかった。気を付けるよ」

「はい。ではそろそろ冒険者ギルドに向かいましょうか。ギルド登録とお試しクエストもしてしまいましょう」

「了解」



◇◇◇◇



 神殿を出て、冒険者ギルドまでフヨフヨと浮かびながら移動する。

 移動時間は5分ほどだったが、魔力が50も減ってしまった。

 通常、何もせずじっとしていれば、魔力は1分間に1%回復するらしい。

 因みに、動作中は2分で1%回復する。戦闘中や走るなどの荷重が掛かると、魔力は回復しないようだ。

 魔力回復上昇スキルはレベル×0.1%分だけ回復量が上乗せされるようなので、今の俺は1分間に1+0.1の1.1%回復する。

 現状俺の魔力回復量は、静止時は1分間で2弱、日常動作時で1弱しか回復出来ない。

 日常動作での魔力消費を考えると、魔力を維持するために1分動いた後5分休む必要があり、とても迂遠だ。

 これは基礎レベルのアップは急務だな。


「ここが冒険者ギルドです!」


 エミリアのすぐ後ろを続くようにして、観音開きの戸をすり抜ける。

 中は木製の建物になっており、意外と清潔感が保たれていた。

 多種多様な人々が思い思いに過ごす雑多な空間で、一際目立つ大きな掲示板。

 おそらくあれが、クエストを張り出す掲示板なのだろう。

 俺はエミリアに続き、奥のカウンターへと移動する。


「ニャリスちゃん、召喚者を連れてきました! 冒険者登録をお願いします!」


 元気いっぱいのエミリアに苦笑しつつ、ニャリスと呼ばれた黒い猫耳の少女が答える。


「わかったわかった。そんな大きな声出さなくても、神官が誰か連れて来た時点で何しに来たか分かるから。ほら、周りを見てみなさい。笑われてるわよ」

「へ? う、うぅ~」


 周りを見回し、顔を赤くしてしまうエミリア。

 そんな彼女を見てやれやれと首を振りつつ、黒猫少女が俺に黒いプレートを差し出す。


「お兄さん、かな? 珍しいね、魔素族は最近めっきり見なくなったけど。まぁいいや。このプレートに掌を乗せてくれるかな? そしたら登録完了になるから」

「あ、あぁ」

「あー、エミリアのこと? いいのいいの、いつものことだから。こんなんだけど、良い子には間違いないから、仲良くしてあげてね?」

「もちろんだ」


 俺は頷きながらプレートに手を乗せる。

 すると俺のステータスが表示され、1枚の銅のカードが現れた。

 

「これが冒険者カードね。これに討伐したモンスターや受注中のクエストが表示されるから。ギルドに預けたお金なんかも、このカードを使えば簡単におろせるの。大抵の店は、これで買い物出来るわよ」

「へー、便利だな」

「ん~、だけどお兄さんはまだ実体化出来て無いみたいだから、しばらくはギルドが預かっておくね。また実体化出来るようになったら顔をだして」

「……わかった」


 そうだった。

 俺はまだ扉も自分では満足に押せないんだった。


「にゃは、そんな落ち込まなくてもいいよ。魔素族の人は、最初は皆そうだから。まぁ大抵が諦めて身代変えちゃったみたいだけど。その代わりと言ってはなんだけど、残ってる3人は中々凄いよ? 召喚者の中では3人とも結構有名」

「へー、そんなにすごいのか」

「うん。だからお兄さんも有名になれるよう頑張ってみてね!」

「まぁ頑張ってみるよ」


 ニャリスに励まされつつ、俺はまだ顔を赤くしているエミリアと一緒にクエストボードを眺める。


「コホン。こ、これがクエストボードです。それぞれに推奨レベルと報酬が書かれていて、これを見て好きなクエストにカードをかざします。今日はお試しクエストなので、かざさなくても大丈夫です」

「そのお試しクエストってなんなんだ?」

「本来なら自分や自分と同レベルの人と組んでいないとクエストは受けられないのですが、今日は私が同行するのでお試しですね。私、これでも基礎レベル30なんですよ!」


 誇らしげに胸を張るエミリア。

 レベル30がどのくらいなのかは分からないが、多分それなりには凄いのだろう。


「へー、凄いな」

「ふふ~ん、そうなんです。と言っても、神官の中ではまだまだ下っ端なんですけどね」


 てへっと舌を出して照れるエミリア。

 うん、可愛い。


「じゃぁ早速、フィールドに出てみましょうか」

「おう、よろしくな」



◇◇◇◇



 街の門を抜けると、そこにはだだっ広い草原が広がっていた。

 良く目を凝らすと、角の生えた兎や、黒い犬が走っているのが分かる。


「ここが【始まりの草原】です。東西南北どの門から出ても、まずはこの草原を通ることになります。更に進むと次のフィールドに出れるのですが、それはまた強くなってからギルドで聞いてみてください」

「了解」

「では早速モンスター討伐に行きましょう。初めのモンスターは、リトルホーンラビット、リトルブラックウルフ、プチスライムです。討伐推奨レベルは1~10ですね」

「結構幅が広いんだな」

「個体によっても強さは異なりますし、魔物が複数相手になると、難易度がグンと上がるんです。ですから攻撃を仕掛ける時は、周りに他のモンスターがいないことを確認してから行うことをお勧めします」

「わかった」


 まさにチュートリアルクエストだな。

 しかし、俺は攻撃すらまともに出来ないんだが、どうしたら良いんだろうか。


「ご心配なく。このお試しクエストに限って言えば、私たちのレベル差は無視されパーティ全員に均等の経験値が割り振られます。先ずはトリーさんの基礎レベルを4に上げるので、それから魔法を覚えましょう」

「了解だ。至れり尽くせりで申し訳ないが、よろしく頼む」

「はい、頼まれました!」





【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【レベルが上がりました】

【魔力感知のレベルが上がりました】

【魔力上昇のレベルが上がりました】

【魔力回復上昇のレベルが上がりました】





 エミリアがモンスターをメイスで撲殺している間、俺はただただ魔力を感じながら後ろをついて回った。

 字づらとしては中々酷いが、事実なので仕方が無い。

 そのおかげもあってか、魔力感知レベルが上がり、とうとう5に至った。



名前 トリー

種族 魔素族

職業 エリートベビー

レベル 1》4

魔力 125/165》360(300+60)

知力 15

スキル 魔力上昇1》2 魔力回復上昇1》2 魔力操作1 魔力感知1》5

STP15》0 SKP 0》6



 STPは、魔力に全振りである。

 これで1分間に魔力が4程回復するようになった。

 日常動作時はこれが半分になる為、魔力の消費を気にせず生活を送るにはこの5倍は必要なのか……。

 まぁ焦っても仕方がない。日進月歩、少しづつ進んで行こう。



「ではスキルポイントも貯まったようなので、魔法スキルを習得しましょう。基礎魔法には、火、水、土、風、光、闇の6つが存在します。これらを上達させると上級魔法を会得出来ますが、それはまた別の機会に。お勧めは、火、水、土、風の4つです。これらはレベル1から攻撃魔法が放てますので」

「なるほど」


 因みに光と闇は、それぞれライトボールとダークボールという攻撃力を持たない玉を生み出すらしい。

 どちらも戦闘では目くらましにしか使えないんだそうだ。


「じゃぁ火魔法いってみようかな!」

「おぉ、良いですね火魔法! 攻撃力も他の3つよりも高めなので、最初は特にお勧めです!」


 エミリアのお墨付きももらったところで、俺は火魔法を習得する。


【火魔法スキルを取得しました】

【職業がエリートベビーからエリートファイアベビーに進化しました】


 火魔法を取得したことにより、職業が変化したらしい。

 あとで確認してみよう。


「火魔法レベル1の魔法は、【ファイアボール】です。敵に火の玉を打ち出す魔法ですね。高レベルになれば魔法を創造して好きな形で発現することも出来ますが、今はまだ決まった魔法を打った方が無難でしょう」

「今の段階でも、好きな魔法を創造出来るのか?」

「可能ではあります。しかし、魔力の消費や集中力がかなり必要になるので、戦闘では使えないと思います」

「なるほど」


 集中力はともかく、魔力消費が多いのはダメだな。死んじゃう。


「では早速戦闘行ってみましょう!」

「おう!」




 



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