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※【プラズマ】などモンスタースキルによる味方への攻撃判定について

 【糸精製】による粘糸や【麻痺毒精製】による麻痺毒など、モンスタースキルによる攻撃は基本味方には影響しません。

 そのため敵モンスター同士による誤爆も起こりません。(ただし物理攻撃は除きます)

 この場合の【味方】とは、パーティーなどの枠組みでは無く、本人の意識的なものとなります。

 その為召喚モンスターの場合は、敵モンスターのみに(人間を敵と判断した場合は人間にも)影響を及ぼします。

 

【異世界空間内での死亡を確認しました】

【只今より覚醒までの約43分間、お好きな空間にてお寛ぎください】

【なお異世界空間への再入間は、11時間59分後に可能となります】

【現在の時刻は――】


 

 城壁を飛び出しマイムと暴れた途端、俺はあっさりと初の死に戻りを体験してしまった。

 空を飛ぶウィスパーバードを標的にしようと俺が声を掛けると、マイムのプラズマ線がいきなり巨大化していき、半径5mはありそうな巨大な球体へと変化した。

 そしてその球体はそのまま上空へと昇って行き、プラズマ線に触れた敵を片っ端から感電死させ、魔石とドロップアイテムへと変化させてしまった。

 余りの出来事に俺は呆然としてしまい、マイムが俺の魔力を使い尽くすことにも気づかずあっという間に死に戻ってしまったというわけだ。


 まあバレーボールサイズでも結構な消費量だったのだ。

 あんな巨大化したら、そりゃ死ぬか。

 次は気を付けて上手くコントロールしてやるとしよう。


 俺は気持ちを切り替えつつ、他の空間を散策しながら次の作戦を練ることにした。



◇◇◇◇



 Sec-Dから気持ち良く目覚め、新たな一日をスタートさせる。

 久しぶりの休日ではあるが特に予定がある訳でもなく、俺は家でただのんびりと過ごすことにした。

 昼間両親から電話があり、実家に帰って早く家を継げというしつこい催促をいなしつつ、比較的穏やかな休日を過ごせたと思う。


 そう言えば、後輩がSec-Dのお世話になることを決めたらしい。

 色々と手続きも既に済ませたらしいので、俺は異世界空間の魔素族がお勧めだと教えておいた。




【11日目】


【迷いの森における魔界の渦・フォレストウルフの消滅に成功しました】

【迷いの森における魔界の渦・ウィスパーバードの消滅に成功しました】

【迷いの森における魔界の渦・リトルモンキーの消滅に成功しました】

【ワールドクエスト【迷いの森の黒い渦】の進行度は現在80%です】


【あなたの魔界の渦・フォレストウルフ消滅に対する貢献度は2%です】

【エクストラスキルを以下の中から選択してください。【気配探索】【木上走行】【噛みつき】【敏捷上昇】】

【称号スキル 【ビーストアタッカー102%】を取得しました。スキルを統合し、【ビーストアタッカー106%】を取得しました】


【あなたの魔界の渦・ウィスパーバード消滅に対する貢献度は2%です】

【エクストラスキルを以下の中から選択してください。【飛行】【聴覚強化】【突き】】

【称号スキル 【バードアタッカー102%】(バード系モンスターに対して与ダメージ1.02倍)を取得しました】


【あなたの魔界の渦・リトルモンキー消滅に対する貢献度は2%です】

【エクストラスキルを以下の中から選択してください。【技術力上昇】【木工】【採取】【好奇心】】

【称号スキル 【ビーストアタッカー102%】を取得しました。スキルを統合し、【ビーストアタッカー108%を取得しました】



 ログインと同時に流れる大量のアナウンス。

 その膨大さに驚きつつ、俺は辺りを見渡す。


「ここは……」


 俺がこの世界に初めて降り立った場所。

 そう、神殿内にある召喚の間だ。


「死に戻ると、ここからのスタートになるのか」


 久しぶりの光景を俺が懐かしんでいると、俺の両隣に使い魔であるマイムとドーピングキャタピラーも召喚されてきた。


「――Pigii……」

「――Gyupi!」


 元気のよいドーピングキャタピラーに比べ、マイムの方は何か落ち込んでいる様子。


「死に戻ったことを気にしているのか?」

「――Pigi」

「……あれは俺の不注意でもあるからなー。ま、次からはもう少し上手くやっていこうな」

「――Pigi!」 


 機嫌を治したマイムを撫でてやりつつ、俺たちは召喚の間の外へと動き出す。

 最初の難関であるあの扉は、ドーピングキャタピラーが頑張って開けてくれた。

 こいつにも名前を付けてやらないとなと考えつつ、俺は久しぶりのエミリアの笑顔に癒される。


「よかった……もう戻ってこないかもと心配していたんです」

「……そんな奴いるのか?」

「ええ。偶に、ですけど。死の体験とは、それだけ強烈なのです。神の加護によりその衝撃は緩和されているとはお聞きしていますが……」


 確かにこのリアルな世界で殺されれば、トラウマになってしまう奴もいるだろう。

 とは言えここでの記憶は大抵現実世界に戻ればあやふやだ。

 だからそれが自身に悪影響を及ぼす心配は少ないと思う。


 ただその体験が余程強烈だった者にとっては、現実に戻ってからもなんとなく嫌だなあという感情が残ってしまうのだろう。

 それで異世界空間を選択せず、他の空間に移ってしまう者がいたのかもしれない。

 まあ俺の場合は大した衝撃も無かったし、どうってことはない。

 いつもの希薄感に、漠然とした恐怖が上乗せされただけだ。

 マイムのおかげでそれも一瞬だけだったしな。


「大丈夫だ、問題ない」

「……本当に、ご無理はされないでくださいね」

「ああ、心配してくれてありがとう」


 心配そうに瞳を潤ませるエミリア。

 そんな彼女をなだめつつ、俺は神殿を後にした。


 いつもよりも騒がしいファイスの街。

 そんな喧騒の中、俺たち一行はフワフワと移動しつつ冒険者ギルドへと向かう。

 中に入ると、地元の冒険者やギルド員たちが慌ただしく動き回っていた。


「ニャリス、ちょっといいか?」

「あらいらっしゃい。今日はいつもより早いのね」

「ああ、ちょっとな。それよりも外の状況はどうだ?」

「最初程余裕がある訳じゃなさそうね。新しいモンスターが現れたみたいなのよ」

「……新しいモンスター?」


 迷いの森に現れるといわれるモンスターは9種類。

 そこに10種類目が現れたということか。


「どんなやつなんだ?」

「それは――」

「悪魔だそうだ」


 ニャリスの声にかぶせるようにして、女性にしては低めの声が背後から聞こえてきた。


「……アスラか。良いのか、持ち場に居なくて」

「私も先ほどログインしたんだ。今丁度掲示板を使って情報収集をしていた所だよ」

「なるほど。で、悪魔ってなんなんだ?」

 

 異世界の悪魔、中々恐ろし気な響きである。


「正確にはリトルデビルというモンスターらしい。飛行能力を有しており、武器を用いて連携を取りながら攻撃してくる。中々厄介な相手みたいだな」

「それはまた……」


 確かに厄介な相手だ。 

 今まで出てきたモンスターのほとんどは、地上戦を仕掛けて来ていた。

 ウィスパーバードの様に飛行型のモンスターもいるが、攻撃が単調で慣れてしまえばそれほど脅威では無いと聞いている。

 しかしデビル系は武器を使いこなし、加えて連携を取りながら三次元的に攻撃してくるという。

 これはかなり大変な相手だろう。


「戦況は?」

「幸いデビル系モンスターは他のモンスターと違い、人や召喚モンスターをターゲットに襲ってくるらしい。なので部隊を分けて、片方がデビル系モンスターを相手取る間に、もう片方の部隊がその他のモンスターを少しづつ潰していっているようだな」

「なるほど」


 召喚と同時に大量に流れてきたアナウンスはそのためか。

 アスラ曰く、デビル系モンスターが現れた辺りから、他の渦が順に縮小し始めたそうだ。

 モンスターの応酬に一定時間耐えれば、消滅する仕組みになっていたのだろう。


 ただ、消滅したモンスターの分だけデビル系モンスターの数が増えている様だが。


「今外にいるモンスターは、亜人系モンスターとデビル系モンスターばかりだそうだ」

「亜人系?」

「ゴブリンに加え、ハイゴブリンやレッサーオーガなども出現しているらしい」

「それはまた」


 最初のワールドクエストにしては随分手ごわそうな敵が現れたもんだ。


「現在亜人系モンスターは軍が主に相手取っている様だな。デビル系は自由に動き回るため集団としては戦いづらいようだ」

「そうか。じゃあ俺はデビル系モンスターの相手をすればいいんだな?」

「ああ。しかし敵はお前達よりも高速で空中を移動している様だぞ? 何か策でもあるのか?」

「まあ、ちょっとな」


 昨日の失敗のあと、他の空間で考えていたことが少しある。

 折角丁度いい相手が出てきたんだ。

 一度それを試してみるとしよう。





◇◇◇◇




「それは……ズルくないか?」

「うん、ずるいねー」


 ギルドを出発し戦場へとたどり着いた俺たちは、亜人系を相手取る軍をスルーしてデビル系の主戦場へとやってきた。

 そして諸々の準備をした上で、現在絶賛リトルデビル討伐中なのだが、その光景を見たアスラと、途中で合流したラビックが納得のいかない様子でそう呟いた。


「ズルいとか言うな。戦略と言ってくれ」

「――Pigi!」

「――Gyupi!」


 俺の言葉に使い魔たちも賛同する。

 

――Gyagyaa!!


 とそこへ、俺たちに狙いを定めた一匹のリトルデビルが襲い掛かってくる。

 しかし俺を庇う様にして、マイムがゆっくりとリトルデビルの前へと移動する。

 そして――


――GyaGyaGyaGyayGya!!


 マイムから伸びたプラズマ線に触れたリトルデビルが感電し、しばらくするとそのまま地面へと墜落していった。

 

「――Pusyaaa!」


 そこへすかさず使い魔のドーピングキャタピラーと青芋虫ブルーキャタピラーのキャピが【糸精製】を使い敵をからめ捕る。

 そして――


「――【吸精ドレイン】!」


――GyaGya!!


 糸にからめ捕られたリトルデビルに俺が【吸精ドレイン】を使用し、相手の魔力を一気に吸い取っていく。

 

「はあっ!!」

 

 気合の入った声と共に、アスラが魔力を吸い取られ意識を飛ばした簀巻きのリトルデビルに止めを刺した。

 なすすべもなく命を刈り取られ、消滅するリトルデビル。

 あとにはキャタピラーたちの糸と、リトルデビルの魔石だけが残された。


「リトルデビルも大したことないな」

「いや、そんなこと言っているのはお前くらいだ」

「そうだそうだー」


 俺の呟きに、アスラとラビックが反論してくる。

 マイムの【プラズマ】は雷系の魔法に近いらしく、一定の割合で【麻痺】の状態異常が起こるらしい。

 俺はそれを期待しこの作戦をとってみた訳だが、面白いくらいに嵌ってくれた。


「敵が飛んでいようが、こっちに飛び込んでくれるなら大したことは無さそうだ。問題はマイムの魔力消費量だが、それも【吸精ドレイン】である程度補えそうだし」


 リトルデビルは保有魔力が今までのモンスターよりも多いらしく、【吸精ドレイン】による吸収量も以前のリトルブラックウルフの10倍程もある。

 【飛行】スキルは体力と筋力でその飛行時間やスピードが決まり、そして魔力を燃料にして使用するスキルらしいので、リトルデビルの魔力量もかなり多いのだろう。

 おかげで先ほどからとても効率の良い狩りが出来ている。


 マイムの方も昨日の様に馬鹿みたいに大きくなるのではなく、敵が近づく瞬間だけプラズマ線を巨大化させ敵を巻き込み攻撃している。

 そのおかげで、一回の攻撃に消費する魔力量も200を超えるくらいで何とか収まっているのも大きい。

 

「もっと敵をかき集めれば効率よく狩れるんだけどなあ……」


 マイムのプラズマ線は、核を中心として球状に全方向へと伸びていく。

 そのため敵が多ければ多い程効率的に狩れるのだ。

 しかし敵が散発的に襲ってくる現状、どうしても一回一回相手にせねばならず、今一つ効率が悪い。


「……キャタピラーを三段階目に進化させれば、【鳴き声】を覚えるよー。まああれは知力依存だから、リトルデビル相手では余り効果は無いかもだけど」

「なるほど……となれば早速。ラビ、昨日の魔石の残り、全部出してくれ」

「はいはーい」


 俺の言葉に、諦めた様にラビックが報酬の残りである魔石を広げていく。

 俺はそれをドーピングキャタピラーに吸収させ、ここぞとばかりにSTPを全て知力に振っていった。

 その結果――


【ノーネームのアイテム効果上昇のレベルが上がりました】

【ノーネームのレベルが上がりました】

(略)

【ノーネームが進化可能となりました。以下の中から進化先を選択してください。【プリコーシスタフキャタピラー】【プリコーシスバイタリティーキャタピラー】……】


 STPを知力に全振りし進化させてみたが、進化先は通常と余り変化は無いらしい。

 【体力上昇】を有するタフに、【生命力上昇】を有するバイタリティー、その他各属性のキャタピラーだ。

 毒による状態異常や糸の生成量には体力が大きく関わってくるとのことなので、ここは大人しくタフキャタピラーを選択。

 そして――



名前 スレッダー

所属 キャタピラー

個体種 ドーピングキャタピラー》プリコーシスタフキャタピラー New!

レベル 16》1

生命力 350》400

魔力  -

体力  30》39(35+4)

筋力  28》32

知力  10》84(13+71)

技術力 18》23

俊敏力 6》8

スキル 糸精製1》3 麻痺毒精製1 噛みつき1 

    鳴き声1 New! 体力上昇1 New!

    アイテム効果上昇3》5 必要経験値減少 New!

    被ダメージ量増加 New!

STP 71》0



 知力を中心として能力値が大幅に上がった。

 スキルの方は最後の3つを除けば普通のタフキャタピラーと余り変わりはないらしい。

 本来ならば【体力上昇】と【生命力上昇】の両方を有していたはずなので、それを代償として得た能力という事になるだろう。


 つけた名前はスレッダー。

 糸使い的な雰囲気で命名してみたが、きっとそれ以外にも活躍してくれるに違いない。

 特に麻痺毒方面で。


「じゃあスレッダー、いっちょ一鳴きかましてみてくれ!」

「――Gyupi!  ――GyuuuuPiiiiiiii!!」


 ――GyaGya!? ――Gya!! ――GyaGyaaa!!


 スレッダーの【鳴き声】に反応し、付近に居たリトルデビルたちが一斉にこちらへと飛行してきた。


「マイム! 今だ!!」

「――Pigiiiiii!!」


 ――GyaGyaGyaGyayGya!! ――GyaGyaGyaGyayGya!! ――GyaGyaGyaGyayGya!!――GyaGyaGyaGyayGya!! ――GyaGyaGyaGyayGya!!


 あちらこちらから飛んできていたリトルデビルたちが、マイムのプラズマ線にからめ捕られて感電していく。

 そして麻痺状態になったものから続々と墜落していった。


「おっほー。大量大量。って喜んでる場合じゃないな。――【吸精ドレイン】! もういっちょ【吸精ドレイン】! 【吸精ドレイン】!」


 【麻痺】状態により強く陥っている個体から、俺はどんどんと【吸精ドレイン】を掛けていく。

 【麻痺】の掛かりが悪い敵にはスレッダーたちが糸で身動きを止めてくれるので、そいつにもついでとばかりに【吸精ドレイン】で魔力を吸い尽くしてやる。


「さてアスラ先生、ラビ先生。あとはよろしくお願いします」

「はあ……相変わらず君は滅茶苦茶だな」

「あはは、あーちゃんも早く慣れないとねー。でも僕も、未だに彼が一緒のゲームをしているのか疑わしくなるよ」


 そう呆れつつも、せっせとリトルデビルたちに止めを刺していく二人。

 相手をこちらの土俵に上がらせて勝つ。

 これ以上の戦略はないだろうに。


 俺は二人の呆れに不満を持ちつつも、続々とやってきた後続たちに意識を移す。


「じゃあマイム、スレッダー! この調子でどんどん経験値、稼いでしまおうか!」

「――Pigi!!」

「――Gyupi!!」





【麻痺】

 一時的に身体を動かすことが困難になる。しかしその度合いは様々で、完全に動きが封じられる場合もあれば、動作を多少制限される程度に収まることも。【麻痺】を重ね掛けすることで、その状態を悪化させることが可能。


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