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名前 マイム

種族 スライム

個体種 ドーピングスライム 

レベル 24

生命力 400

魔力  -

体力  40

筋力  40

知力  120

技術力 40

俊敏力 17

スキル 消化吸収1 魔法被ダメージ上昇1 アイテム効果上昇12

STP0



※用語説明

【パーティー】

 最大6人で構成される。経験値は各レベルに応じて分散されるが、レベル差が大きい程総経験値量が0〜100%減少。(最大レベル-最小レベル-5)×10%減

 リーダーに【指揮】等のスキルが有る場合、パーティーメンバー全体へ影響する。


【レギオン】

 最大6パーティーで構成される。最大36人。経験値はパーティーごとで計算されるため、レベル差を気にする必要は無い。またレギオンリーダーの【指揮】などのスキルはレギオンメンバー全体へと影響する(パーティーリーダーの効果と重複可)。経験値ペナルティーあり(人数×0.1%減)。


【リーグ】

 人数制限なし。経験値はパーティーごとで計算されるため、レベル差を気にする必要は無い。またリーグリーダーの【指揮】などのスキルはリーグメンバー全体へと影響する(レギオン、パーティーリーダーの効果と重複可)。経験値ペナルティーあり(人数×0.01%、最大10%減)。


※【指揮】等の他メンバーへ影響するスキルは、人数が多い程その効果を増す場合が多いです。

 またパーティー、レギオン、リーグとなるごとにその効果は小さくなります。

 よって1人で【パーティー】【レギオン】【リーグ】を結成しその効果を重複させることは可能ですが、あまり効果はありません。



 ファイスの街に到着すると、そこはさながら戦場の様だった。

 ただし色とりどりの魔法入り乱れるファンタジー版の。


 ファイス周辺を囲む10m程の城壁の西側外で、襲い来るモンスター達に対抗しようと召喚者たちが壁になって応戦している。

 召喚者たちの両翼には、この街の兵士たちが魔物を抑え込んでいる様だ。

 そしてその後方では、召喚神殿の神官たちやこの世界冒険者たちがフォローに回ってくれている様子。

 城壁の上からも、ウィスパーバードに対抗しようと弓兵や魔法使いたちが必死に応戦している。


 これだと中央に陣取る召喚者たちへの負担がかなり大きいはずだが、まあ仕方が無いのかもしれない。

 この世界の住人たちは、召喚者と違い簡単に蘇生などは出来ない。

 高位の神官であれば蘇生も可能なようだが、多大な魔力が必要な為簡単には使えないらしい。


 NPCとは言え、この世界の住人たちはリアル過ぎる。

 そんな彼らが目の前で死んでしまっては、召喚者たちが受ける心的ダメージも少なくないだろう。

 誰の指示で召喚者たちを盾にする作戦をとっているかは分からないが、この状況に不満を抱いている者はおそらく多くは無いはずだ。


 そんな光景を俺が眺めていると、ギルドカードを操作していたラビックが俺に声を掛けてきた。


「今冒険者ギルドで、各レギオンの代表者たちが集まって作戦会議を開いているみたい! 僕たちもすぐに来てくれだってさ!」

「作戦会議って……そんな悠長なことをしている暇があるのか?」


 今目の前の戦場では、人々が必死にモンスターを押しとどめている。

 戦況は悪くはないようだが、加勢した方が良いと思うのだが……。


「うーん、僕も良く分からないんだけど、なんかアスラ達はこのクエストが長期戦になると思っているみたいなんだ。だからこれからの方針を予め決めておきたいんだってさ」

「そうなのか……まあそれならとにかく向かうしかないか」

「だね!」


 何故長期戦になると考えているのかは、向こうに着けば分かることだろう。

 俺たちはそっと戦場を通り過ぎ、東の門から街の中へと入っていった。



◇◇◇◇



 ギルドに到着し案内人の指示のもと、俺たちはギルドの一室に足を踏み入れる

 室内には既に二十名ほどの男女たちが机を囲んで座っており、その視線が俺たちへと注がれる。


「来たか。丁度話が纏まったところだ。簡単に伝えるからお前たちも座ってくれ」


 俺たちの到着を見て、話しの進行を進めていたであろうアスラが声を掛けてくる。

 俺たちは言われるがままに配置に着き、彼女からここまでの経緯を聞くことになった。


「まずここにいるメンバーだが、戦闘、生産各分野の代表たちに集まってもらっている。本来はもっと多くの者たちがいるのだが、この時間帯にログインしている者たちはこれだけだ。夜勤組を始め他のレギオンへは掲示板を使い連絡を伝える予定だ」

「なるほど」


 集まった面子を見渡すと、確かに皆それぞれ風格があるように感じられる。

 所々奇抜な様相を呈した者もいるようだが。


「今回皆に集まってもらったのは、この襲撃がおそらく全召喚者たちを巻き込んだクエストだと見当をつけたからだ」

「……と言うのは?」

「うむ。まず【リトルスパイダーの渦】消滅後、新たに4つの渦が出現したことは聞いているか?」

「ああ、ラビックから聞いた」

「うん、伝えたよー。全く、ギルドカードを持っていないなんて不便極まりないよねー」

「……仕方が無いだろう」

「ゴホン、兎に角そういう事だ。そして私たちはそのモンスター達の行動からこれがファイスの街襲撃イベントだと予測し、掲示板にて召喚者たちの協力を要請したのだ。そして――」


 その後のアスラの話をまとめるとこんな感じだ。

 まずアスラ達はファイスへ向かう組と渦に残って討伐・観察する組に分かれたらしい。

 そして残留組の証言から、モンスター達を討伐しても渦が一向に変化しないことが分かったようだ。


 【魔界の渦】は出現するモンスター達を討伐すると徐々にその規模を小さくさせていく。

 しかしモンスター達の討伐を進めている現在でも、その規模が縮小される気配はないらしい。


 アスラ達はその報告を受け、渦消滅の条件を模索した。

 何か必要なアイテムがあるのではないか。

 倒し方に工夫がいるのではないか。などなど。

 そしてとりあえずの結論として、24時間の耐久戦と仮定して戦おうということになったらしい。


「何故そんな結論に?」

「前回のリトルキャタピラーとリトルスパイダーの事を鑑み、このイベントが徐々に参加人数を増やす試みがなされているのではないかと考えてな。24時間というのは飽くまで目安だが、これがもし全召喚者の参加を促す目的があるのならばそれくらいが妥当だろう」

「……なるほど」


 耐久戦かどうかはともかく、より多くの召喚者をイベントに参加させようという意図は確かに感じ取れる。

 そもそもこれはゲームだからな。

 出来るだけ多くのプレイヤーが参加できるように運営がイベントをコントロールするのは、別に不思議なことではない。


 24時間耐久は流石に長すぎる気もするが……このゲームログイン時間の仕様上、十分あり得ることだろう。


「現在我々は義勇軍を結成し【リーグ】として討伐に当たっている。そしてそれぞれの役割毎に盾、援護、近接戦闘、魔法、遠距離物理、遊撃である程度纏まってもらい、冒険者ギルドや軍と連携を取り討伐に臨んでいる」

「なるほど」


 確かに集団戦闘を行う以上、魔法による同士討ちフレンドリーファイアを防ぐために【リーグ】を組む必要はあるだろう。

 【リーグ】とは複数のパーティーやレギオンを統合できるシステムの事で、その人数に制限はない。

 ただパーティーやレギオン程ではないが多少の経験値ペナルティーが科せられるため、あまり頻用はされていない。


 ただ今回の様な大規模戦闘ではこのシステムは不可欠だ。

 何百という味方の魔法に晒されては、満足に前衛として戦うなんてことは不可能だろう。


「このあと軍や冒険者ギルド上層部と話し合い、方針の最終決定を下す予定だ。いろいろ言ったが、要は勝手なことをせず協力して戦いましょうということだな」

「……何かぐさりとくる言葉だったが、了解した。ただそれだと、不満に感じる召喚者たちもいるんじゃないのか?」


 召喚者にとって、この世界はゲームだ。

 もちろんそう捉えていない者も多いだろうが、そうでない者の中には統制されることを嫌う者もいるだろう。


「もちろんいるだろうな。なのでその者たちにはこちらの邪魔にならない範囲で自由に戦ってもらおうと思っている。ただ今回の敵の性質上、皆で協力した方が効率的に敵は倒せるだろうがな」

「……それもそうか」


 今回の敵は、ファイスの街を目指して特攻を繰り返している。

 であれば、その城壁付近で戦った方が効率が良いのは当たり前か。


「よし、大体理解した。それで? 俺はどうすればいいんだ?」

「それなんだが……君には自由に暴れてもらおうかと考えている」

「……はい?」


 たった今、みんなで協力しましょうって話になったのではないのか?


「君のプレイスタイルでは、他の者と足並みを揃えても逆に効率が悪いだろう。だから皆に迷惑を掛けない程度で自由にしてもらおうという話になってな」

「はあ……」

「ただ私たちの予想が正しければ、最終決戦まではまだ時間がかなりあるだろう。なのでメインは現実時間の夜にしてもらえれば助かる」

「まあ、それは問題ないが……」


 このゲームの【召喚限界時間】は、システム上最大連続9時間までとなっている。

 また1日の最大時間は12時間までだ。

  

 現在ログイン後約7時間が経過している。

 今日は仕事が休みなので少し長めにログインしているが、あと1時間もすればログアウトの時間だ。


 本当は一度ログアウトしてすぐに再ログインでもしようかと考えていたが、アスラ達がそう言うのなら夜まで待つこともやぶさかではない。

 ただ何と言うか、俺に甘すぎやしないだろうか。

 確かに自由行動は禁止されている訳ではないが……。


 そんな俺の疑問などお構いなしに、アスラは話を進めていく。


「一応ログイン後に状況確認のため一度声を掛けてくれると助かる。ギルドに顔を出してくれれば受付から誰かには連絡がつくだろう。あとこれが今回の君の報酬だ」


 そう言って彼女は一つのアイテムボックスを机に出した。

 

「私たちレギオンの魔石2割、それから今回追加参入したレギオンたちの魔石の3割だ」

「あ、ありがとう。ってそれ、かなり多くないか?」

「大まかではあるが計算した上での数だから問題ない。それに追加参入した者たちからはその分もらっているから心配するな」


 アスラの言葉に何とも言えない顔をするいかつい男たちが数名。

 おそらく追加参入したレギオンの代表者達だろう。

 まあくれると言うのなら大人しくもらっておくとしよう。

 これでマイムの進化が出来るかもしれないしな。


「じゃあ……遠慮なく。とりあえず、俺は夜にまた戻ってくればいいんだな?」

「ああ、そうしてくれ。君が暴れてまた掲示板をにぎわせてくれるのを楽しみにしている」

「ははは……精進します」


 アスラの言葉に他のメンバーたちが和やかに笑う。

 中には期待した目でこちらを見てくる者までいる。

 ここに居るメンバーは、どうやら俺が自由に暴れることに皆肯定的のようだ。

 俺が彼らの反応を不思議に思っていると、ラビックが耳元でこっそり教えてくれた。


「この人たちはキミの情報を僕から積極的に買ってるからね。キミが可能性を広げれば、それだけ彼らの選択肢が増えるんだよ」


 ラビックによると、俺が広げた情報をもとに、彼らも自分なりの可能性を広げているらしい。

 なるほど、だから彼らは俺の自由行動に肯定的なのか。

 俺がまた新たな可能性を広げれば、それだけ彼らの選択肢が増えるんだもんな。

 あとは……純粋にエンターテイメント気分もある気はするが。


 皆の反応に納得した俺はそのままラビックと共に部屋を後にし、受付のニャリスに頼み他の部屋を使わせてもらうことに。


「さてと。じゃあラビ、魔石を出してもらってもいいか?」

「全く、人を当然の様に小間使いにするのはやめてよね! まあ今回は僕もどんな進化をするのか早く知りたかったからいいんだけどさあー」


 そうブツブツ言いつつも、丁寧に机の上に魔石を広げるラビック。

 俺はそんな彼女に謝りつつ、マイムに魔石を吸収させていった。


【マイムのアイテム効果上昇のレベルが上がりました】

【マイムのアイテム効果上昇のレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】



「そしてSTPを全て知力に振ってと」



【マイムのレベルが上がりました】

【マイムが進化可能となりました。以下から進化先を選択してください。【プリコーシスキングスライム】【プリコーシスレッドスライム】【プリコーシスイエロースライム】【プリコーシスブルースライム】【プリコーシスグリーンスライム】【プリコーシスホワイトスライム】【プリコーシスブラックスライム】【プリコーシスジェリースライム】【プリコーシスフラッフスライム】【プリコーシスプラズム】】



「おぉ、なんかいっぱい出てきたな」

「あー……普通のビックスライムでも、キングと各色の7種類は出てくるからねー。で? で? どんな進化先が出てきたのかな?」

「えっと――」


 俺が出てきた名前を一通りラビックに伝えると、彼女は腕を組んで悩みだす。


「うーん。プリコーシスって、確か早熟とかって意味だよねー。早熟ってゲームだとあんまり良い印象はないかも」

「確かにな。でもまあ実際ドーピングで楽しているし、仕方が無いだろ。それよりも、最後の3つってどんな進化先だと思う?」

「そうだなー……フラッフは綿毛だよね。それからジェリーは何だろう? 元々スライムはゼリーみたいなものだしねー。ジェリーフィッシュでクラゲとか? 最後のプラズムは謎だね。最早スライムでもないし」

「だな。じゃあ……一番謎の奴いっとくかな」

「またそうやって君は……ちゃんとマイム君にも聞いてみたら?」

「ふむ、確かに」


 俺はマイムを呼び、プラズムで良いか尋ねてみる。

 すると


「――Pigi!!」


と大賛成のご様子。


「じゃあマイムも良いみたいだし、【プリコーシスプラズム】で」



【マイムがドーピングスライムからプリコーシスプラズムへと進化しました】


 

 アナウンスと共に、マイムが徐々に光り輝く。

 そしてその光が収まると――


「――Pigi!!」


 目の前には元の原型をほとんどなくしたマイムが宙に浮いていた。

 

「……なんか、見た目凶悪になってないか?」

「うーん、なんだろこれ。とりあえず、ステータスを見てみたら?」


 俺は彼女に言われた通り、マイムのステータスを除いてみる。





名前 マイム

種族 プラズム

個体種 ドーピングスライム》プリコーシスプラズム

レベル 24》30》1

生命力 400》440》-

魔力  -

体力  40》44》-

筋力  40》43》-

知力  120》132》162(147+15)

技術力 40》43》-

俊敏力 17》19》-

スキル プラズマ1 New! 浮遊1 New! 知力上昇1 New! 

    アイテム効果上昇12》14 必要経験値減少 New!

    被ダメージ上昇 New! 

STP0》17

  



「おお……なるほど。プラズマとスライムでプラズムか」

「どれどれ見せて見せて! おお!! なんか魔素族っぽくなったね! あー……言われていれば、確かにプラズマのイメージってこんなのかも」


 進化後のマイムの姿は、中心に丸い核があり、そこからうねうねと触手の様な青白い糸が周囲に伸びている。

 確かにテレビでよく見る丸いプラズマってこんな感じだった気がするな。


 俺が一人マイムの新しい姿を眺めていると、ラビックが横からステータスを眺めながら考察する。


「ふむふむ。早熟部分は、必要経験値減少と被ダメージ上昇が関連しているんだろうね。レベル表記が無いってことは、レベルアップによる効果漸減も無い訳かー。普通スライム系は進化すると物理耐性が付いたり魔法ダメージも徐々に緩和されたりするんだけど、これは中々なハンデだなー。知力上昇は極振りのおかげかな? 浮遊とプラズマの条件は……ちょっとすぐには分からないや」

「なるほど。……って! 魔力の減りが凄いことになっているんだが!」


 ふと自分のステータスを見ると、俺の魔力が見る見る内に減っている。

 

「多分マイム君が出してるこのプラズマ? のせいじゃないかな。試しに小さくしてもらってみれば?」

「……マイム、出来るか?」

「――Pigi!」


 元気の良い返事の後、核から出ていたプラズマ線が徐々に小さくなり、産毛程まで短くなった。

 魔力の減りも、俺の日常動作程度に落ち着いている。


「ふう。これならまだ許容範囲内だ」

「あはは、良かったね。でもそれだけ魔力を消費するんなら、その効果もきっと凄いんだろうなー」


 そう言って、期待の籠った視線を送ってくるラビック。


「そう、だな。……よしマイム! ぶっつけ本番は正直怖いが、なんとかなるだろう! いっちょ派手にぶちかますか!」

「――Pigii!!」


 元気よく応えるマイムと共に、俺たちはそのまま部屋を飛び出していく。

 丁度敵には飛行するウィスパーバードもいることだし、空中でぶっ放せば味方の迷惑にもならないだろう。

 隣で浮遊するマイムも、心なしかワクワクしている様子。

 新しくプラズムへと進化したマイムの初陣、いっちょ華々しく決めてやるとするか!





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