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「そう言えば、【ホーンラビットの渦】も消滅したみたいだな」


 珈琲を腕から美味しくいただいた俺は、今日の召喚時に鳴り響いたアナウンスの事を思い出した。


「うん。キミの情報を基にして、夜勤組が頑張ったみたいだよ?」

「夜勤組?」

「僕達みたいに現実の夜、つまりこっちの世界で日中活動しているのが日勤組。そしてその逆が夜勤組さ」

「なるほど」


 このゲームの世界は、現実世界と12時間のずれがある。

 そのため向こうで夜に働いている者たちは、こちらの世界でも夜しか活動できないみたいだ。


「夜しかプレイできないんだと、色々不満が出そうなもんだが大丈夫なのか?」

「最初はそう言ったこともあったみたい。でも夜のモンスターって、倒すと経験値を昼よりも多めにもらえるみたいなんだ。多分【夜目】なんかでスキルの枠が埋まっちゃうから、その補填って意味合いがあるんだろうね」

「なるほどな」


 スキル枠は全部で10しか存在しない。

 昼活動する俺でもカツカツなのだから、夜勤組はもっと大変だろう。

 その補填として、経験値ボーナスが多めにつくようになっているのか。


「それに街の中でも、夜しか出来ないことも多いみたいだしねー。だからなんだかんだ言いつつ、みんな楽しくやっているみたいだよ?」

「あー……なるほど」


 夜の街でしか出来ないこと。

 つまりはそういう事なのだろう。

 このゲームでは五感がリアルに再現されており、R指定の様な制限もない。

 未成年には色々と制限は付くみたいだが、風紀を乱すような者はオフラインへと飛ばされる。

 だから成人の者たちにとってこの世界は、現実世界並みの自由度が確保されているのだ。


「こっちであれば、病気の心配もないしな」

「もー、そういうこと僕の前で言わないでよー! 僕はこれでもれっきとした女の子なんだからね!」


 そう言って、胸を強調して答えるラビック。

 女性の象徴を突き出す彼女に苦笑しつつ、俺は話を元に戻す。


「すまんすまん。それで、エクストラスキルを選択するようになっているんだが……」

「あー、あれね。まあどれも記念スキルみたいなものだから、大した差は無いみたいだねー。ただレベル表記がないでしょ? 多分パーセンテージがレベルの代わりになっているんだろうね。だから今後それが加算されていくんだとすれば、【気配探索】みたいに他のモンスターでもエクストラスキルとして取得出来そうなものがお勧めかもしれないかなー。他の人も大体そんな感じだよ!」

「なるほど」


 エクストラスキルの選択肢として表示されたのは、【聴覚上昇】【気配探索】【突進】【好奇心】の4つ。

 確かに【気配探索】であれば、動物系のモンスターのエクストラスキルとして取得出来るかもしれない。

 因みに、ホーンラビットが実際に所持しているスキルは【気配察知】というパッシブスキルらしい。

 エクストラスキルは、それらをアクティブスキル化したものなのだろう。


「じゃあ……【好奇心】で」



【エクストラスキル 好奇心2%を取得しました】



「もー! 僕の話、聞いてたのかなー? キミってやつは全くもう……全くもうだよ!」


 俺の選択にぷんすかと怒って見せるラビック。

 しかし彼女も何となく予想は付いていたみたいで、本当に腹を立てているわけではない様子。

 

「ちなみにこれ、どういう効果なんだ?」

「……せめてそれを聞いてから選んでよねー。【好奇心】スキルは、召喚者で言うところの【発見】に近い効果があるらしいよ。何か特殊なものが見つけやすくなるみたい。因みに貢献度はいくらだったのかな?」

「2%だな」

「……たいして狩ってないはずなのに、その数値かー。おそらくは渦の発見方法を見つけた事なんかが加味されているんだろうね」


 確かに、今回の【魔界の渦・ホーンラビット】について俺はほとんど関与していない。

 にも拘らず2%という大きな数値が出されたのは、討伐だけでなく情報もそれだけ高く評価されているという証拠だろう。


「この調子だと、総合MVPも十分狙えそうだねー」

「……そんな物があるのか?」

「たぶんねー。態々色んなクエストを一まとめにしてるんだもん。何かあってしかるべきだよ!」

「なるほど」


 今回のワールドクエストは、達成パーセンテージから考えて10個の物が一まとめになっている。

 確かに彼女の言う通り、総合評価の様な物が存在するかもしれないな。


「ま、あればラッキーぐらいで考えておくとするよ。色々とサンキュな」

「いえいえどういたしまして。また何かあったら声を掛けてね! キミは今から……例のあれかな?」

「うむ。は是が非でも手に入れたいからな」


 俺はそう言ってニヤリと笑い、喫茶店を後にした。



◇◇◇◇



 俺とマイムはラビックと別れた後、二人でフヨフヨと街を出て【迷いの森】へと足を運ぶ。

ラビックと分かれる際、ギルドで依頼を受けておくように言われたので、一度ギルドにも寄っておく。

そう言えばギルドで依頼を受けるのはこれが初めてだなと感慨に耽っていると、ニャリスから馬鹿言ってないで早く行って来いと追い出されてしまった。


 移動の際、俺は前回の大量レベルアップの恩恵を改めて感じることが出来た。

 現在俺の浮遊移動の最高速度は分速33m。

 まだ人の歩行速度半分だが、魔力が大幅に上昇したことで浮遊移動だけなら優に1時間は移動できるようになったのだ。

 おかげで一度も休憩せずに【迷いの森】に着くことが可能になった。

 まあ実際には、地面をついてくるマイムのおかげで戦闘回数が増えてしまい、時間は今までと余り変わっていないのだが。


 

【浮遊のレベルが上がりました】



 【迷いの森】に到着し、俺は浅域の散策を始める。

 今回の探索の狙いは、当然蜘蛛と芋虫。

 ラビックからの情報によると、どちらも糸を吐くのは共通しているが、蜘蛛は一本の頑丈な糸を、芋虫は放射状の糸を吐くらしい。

 

 蜘蛛は数が少なく体は小さいものの非常にすばしっこい様ので、範囲攻撃が無いと倒すのが大変らしい。

 一方の芋虫は動きは遅いものの連携をとってくることがあり、物理職が囲まれて糸を噴射されたら一環の終わりのようだ。

 ただ糸は比較的火に弱いそうで、格下からの糸攻撃なら火魔法で対応できるとのこと。

 

 また芋虫は木の枝に待機していて、その下を通ると上から落ちてくるらしい。

 そして体からは微量の麻痺毒が出されるらしく、極稀だが【麻痺】の状態異常に陥ってしまうんだとか。

 芋虫からいきなり難易度上がって無いか? とも思ったが、それさえ気を付ければ鈍重なモンスターらしいので頑張れと言って送り出された。


 今頃他の召喚者たちは、フォレストスネークの討伐に躍起になっていることだろう。

 しかし俺の狙いはその次だ。

 【火魔法】の次の魔法もラビックから教えてもらったので、しっかりと準備をして明日に臨もうと思う。

 と言う訳で、今日はこの浅域辺りでスキルレベル上げに勤しむことにしよう。






【魔力回復上昇のレベルが上がりました】

【魔力操作のレベルが上がりました】

【魔力感知のレベルが上がりました】

【闇魔法のレベルが上がりました】

【闇魔法のレベルが上がりました】

【光魔法のレベルが上がりました】

【連続詠唱のレベルが上がりました】

【浮遊のレベルが上がりました】

【レベルが上がりました】


【マイムもアイテム効果上昇のレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】








「――【火矢ファイアアロー】!」

「――Pigi!」


 ――Gyuuu……


 俺の【火矢ファイアアロー】を胸に受け、ホーンラビットが消滅していく。

 最初にホーンラビットと戦った時より知力が2倍近く上がっているおかげか、【火矢ファイアアロー】が当たれば、確実に仕留められるようになってきた。

 【火矢ファイアアロー】が外れた際は、ゆっくり空中でやり過ごしてから【連続詠唱】を用いて【火球ファイアボール】からの【光爆破ライトブラスト】や【闇煤ダークスート】で倒しているのだが、偶に【火球ファイアボール】1発でも沈む個体が見られるほどだ。

 おそらく同じホーンラビットでも個体によってレベルがそれぞれ異なるため安定はしないが、威力が大きくなったのは良いことだ。



【火魔法のレベルが上がりました】

火槍ファイアジャベリンを習得しました】

火渦ファイアストームを習得しました】

火属性付与ファイアエンチャントを習得しました】

火属性抵抗ファイアレジストを習得しました】



「お、やっと上がったか」


 スライムとホーンラビットを狩り始めて2時間。

 【火魔法】のレベルがやっと一つ上がった。

 やはり敵の数が減ったのが少々痛い。

 加えてスキルレベルが高くなってきたため、レベルアップに必要な経験値も増えてきているのだろう。


 【火魔法】のレベルが15になり、新たな魔法を習得した。

 【火槍ファイアジャベリン】はボールの強化版で、威力と射程距離が2倍、消費魔力が3倍だ。

 【火渦ファイアストーム】は火属性の範囲魔法で、8mほど先を起点として直系5mの火の渦を発生させる。

 威力は【火槍ファイアジャベリン】の7割程で、消費魔力は80とかなり大きい。

 ただどちらも射程がしっかりと取れ、しかも威力も申し分ないため、距離をとりつつ戦いたい俺にとってはとても使い勝手の良い魔法だろう。


 これでフォレストスネークも怖くないはず。

 前回はあいつの跳躍力に驚かされたが、10mも離れればきっと大丈夫のはず。


 因みに【火属性付与ファイアエンチャント】は対象に火属性を付与する魔法だ。

 使い方としては近接武器に付与した状態で敵を攻撃し、相手に火属性の追加ダメージを与えるといったやり方らしい。

 一方【火属性抵抗ファイアレジスト】は、周りからの火属性の影響を軽減できるようだ。

 付与の方は、いつか万が一近接型の使い魔が手に入れば使うかもしれない。

 抵抗の方は、敵が魔法を使わない限りしばらくは倉庫行きだろうだろう。

 

 道中マイムのレベルも2つ程上がった。 

 マイムの今のステータスは、レベル17の召喚者と変わらない程度だ。

 普通はもっとレベルアップは遅いらしいのだが、やはり【アイテム効果上昇】の力が大きいのだろう。


 因みに先ほど元気よく声を上げてはいたが、本人はここまで一切戦っていない。

 先ほどレベル17相当とは言ったが、それは飽くまでステータス補正のお話。

 それにSTPを知力に全振りしてしまっているため、他の数値はもっと低い。

 また進化の際に覚えるはずであった【物理耐性】も持っていないため、戦闘になればすぐに死んでしまうだろう。

 

 と言う訳で、マイムは俺の応援マスコット兼魔石回収係だ。

 本人も大人しく言う事を聞き、健気に陰ながら応援してくれている。

 レベル30の進化まではまだまだ遠いが、少しずつやっていくとしよう。





【闇魔法のレベルが上がりました】

【マイムのレベルが上がりました】





名前 トリー

種族 魔素族

職業 ルナファイアプランクトン

職業スキル 狂灯ルナティックファイア

レベル 21》22

魔力  875/3120(1200+1920)

知力  87》90

スキル 魔力上昇16 魔力回復上昇15》16 魔力操作15》16

    魔力感知15》16 火魔法14》15 浮遊13》15 魔素操作8

    闇魔法10》13 連続詠唱12》13 光魔法13》14

エクストラスキル 消化吸収99% 好奇心2%

称号スキル    スライムアニヒレイタ―199%

         ラビットアタッカー102%

使い魔      マイム 

STP5》10  SKP19》21


名前 マイム

種族 スライム

個体種 ドーピングスライム 

レベル 9》12

生命力 310》330

魔力  -

体力  31》33

筋力  31》33

知力  85》92

技術力 31》33

俊敏力 13

スキル 消化吸収1 魔法被ダメージ上昇1 アイテム効果上昇5》6

STP0》6》0


 


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