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青芋虫の【鳴き声】によるレベリングを終えた後、俺は今後の事についてアスラ達と話し合った。
結果、俺は単独で調査を行い、何かあればアスラ達に連絡するという形に落ち着いた。
理由は俺の移動スピードだ。
俺は現在浮遊移動時のスピードが普通の歩行速度の半分程だ。
なので他の召喚者と一緒に探索をすると、反って足を引っ張ってしまう。
浮遊を止めて普通に歩けば問題ないのだが、それでは君に頼んだ意味がないとアスラに言われてしまい、結局俺は今まで通り浮遊移動にてフィールドに出ることとなったのだ。
その後アスラ達と別れラビックのアイテム拾いを待つまでの間、俺は実体化について実験をしてみた。
【拡散】とは逆に、全身へ流れる魔力のスピードを上げ、身体を【凝縮】させていく。
【魔力操作】のレベルが上がっているため、比較的簡単に行うことが出来た。
しかし何故か体の不快感は消えず、その代わりと言ってはなんだが【実体】というスキルが取得可能になった。
ラビックに聞いたところ、【実体】は他の魔素族の召喚者が取得しているスキルらしく、【浮遊】の個体バージョンらしい。
【凝集】中の移動に必要なスキルで、レベルアップ毎にその移動速度などに補正が聞くようだ。
また【凝集】状態での不快感を和らげていく効果もあるらしく、これがないと【凝集】状態での生活は出来ないとのこと。
「普通は皆【実体】スキルを取得して、武器や防具を揃えていくんだけどねー。キミってほんと変わってるよね」
とはラビックの弁。
確かにそうした方が色々と便利ではあるだろうが、俺は俺のスタイルを貫くと決めているので問題ない。
「あはは、そうかい。じゃぁもし【浮遊】スキルに加えて【実体】スキルも取得したら、僕に教えてくれるかな? 色々と使用感を聞いてみたいし」
「スキル枠的に少し厳しいだろうが、機会があれば教えるよ。っとそうだ、SKPが貯まったから【光魔法】を取れるんだった」
ステータスを開き、スキル取得画面を表示する。
そしてSKPを消費して、当初の予定通り【光魔法】を選択した。
【光魔法を取得しました】
【職業がエリートダークファイアプランクトンからエリートルナファイアプランクトンに進化しました】
【職業スキル【狂灯】を一時取得しました】
「お、職業も変わるのか。ダークがルナに変化しているな。あと……【職業スキル】って何なんだ?」
「おー、おめでとー。職業スキルって言うのは、魔素族だけのスペシャルスキルだよ! その職業に合わせて魔法を使えたり特殊な能力が付加されたりするんだ。最初の種族選択の時に言われなかった?」
……そういえば【神の声】が、魔素族最大のアドバンテージだとか言っていた。
てっきり所持スキルの補正のことだと思い流していたな。
「あはは、それじゃぁ他の種族と変わらないよ。魔素族はそれらに加えて、職業に合わせた職業スキルを使えることがあるんだ。ただ職業が変わっちゃうとそのスキルも消えちゃうらしいけどね」
「なるほど、それで一時取得なわけか」
「うん。職業が変わるたびに増えていくのは流石に強すぎるっていう運営の調整だろうね。まぁそれでも十分なアドバンテージだと思うよ! ……因みに、どんなスキルが手に入ったのかなー?」
モジモジとしつつ、楽しみ気な顔で尋ねてくるラビック。
そんな彼女に俺は先ほどの戦闘で遣いっパシリにされたことを思い出し、少し意地悪で返してやる。
「……それは、情報屋としての質問か?」
「もー、いいじゃんちょっとくらい! と言いたい所だけど、それじゃあ情報屋失格だよねー。よし、じゃぁ今手に入っている他の職業スキルの名前や効果と交換、ってことでどうかな?」
「乗った」
流石はラビック。
既に他の職業スキルを手にしているらしい。
「じゃぁ俺から。スキル名は【狂灯】。効果は……ちょっとあいつで試してみるか」
射程の検証も兼ね、丁度遠くからこちらに寄ってきている2匹のリトルブラックウルフに対し、俺は【狂灯】を使用する。
「――【狂灯】!」
すると15m程の距離を、暗い白色の灯が飛び出しいく。
しかし魔法は外れてしまい、リトルブラックウルフたちの間に落ちてしまった。
とその瞬間、その灯を起点として光が広がり、辺りがぼんやりとした光に包まれる。
突然の発光に一瞬驚いたリトルブラックウルフたちだが、次第にその様子がおかしくなる。
最初はぼんやりとした表情であったが、徐々に目が充血し口からは涎を滴らせ、先ほどよりも狂暴な雰囲気を醸し出している。
「な、なぁ、あれってどうなっているんだ……?」
「うーん、多分【狂化】の状態異常だと思う。竜人族が【狂化】状態になるとあんな感じだから。効果は状態異常者の与ダメージ1.5倍と被ダメージ2倍と【暴走】。まぁ暴走状態といっても基本的には敵を攻撃するみたいだけどね。他のゲームだとありがちな設定だけど、このゲームでは竜人族以外では初めて見たなー」
そう言って、落ち着いた様子で【狂化】状態のリトルブラックウルフを眺めるラビック。
「ちゃっかり外れたところを見るに、恐らく連続使用可能な魔法なんだろうねー。操作は出来なかったんだよね?」
「あ、ああ」
この世界の魔法は、基本的にパーティーメンバーなどの味方へは効果を及ぼさない。
だから範囲魔法などを味方の近くで放っても、ダメージを受けるのは敵だけだ。
しかし連続使用可能魔法の場合、その効果が味方にも影響する。
また普通の魔法は放った後にある程度追尾させることが出来るのだが、この連続使用可能魔法ではそれが出来ないのだ。
その代わり、射程が長かったり【ウォール】系の様にしばらく残存し続けたりと利点もある訳だが。
「じゃぁとりあえずダメージもあるのか知りたいから、もう一回あいつらに【狂灯】を使ってみてもらってもいいかい? 次は頑張って当ててみてくれると嬉しい」
「……わかった。――【狂灯】!」
詠唱と共に先ほど同様暗白色の灯が飛来し、今度は片方のリトルブラックウルフに命中した。
そして光が爆ぜると、当たったリトルブラックウルフが消滅し、もう片方は更に狂暴な雰囲気へと変化した。
そして勢いよくこちらへと突進してきたが、すぐさまラビックの蹴りを喰らい吹っ飛び、そのまま消滅してしまった。
「うん、大体わかったよ。【狂灯】の効果は単体攻撃プラス範囲状態異常付与。単体攻撃の威力と状態異常の確率は分からないけど、今見た感じだと低くは無いだろうねー。それに重ね掛けも有効なようだ。こっちは普通に考えれば確率は落ちると思うけどね。それから状態異常の範囲も、【闇煤】や【光爆破】の倍はありそうだなー。大体直系7mの球状といったところかな? 消費魔力はどうだった?」
「えっと、240くらい減っているから、一発80って所か」
「あー、【ストーム】系と一緒かー。なるほど」
【ストーム】系とは、火水土風の4属性魔法レベル15で覚える範囲魔法のことらしい。
直系5m程の渦を巻き起こし、範囲内にいる敵にダメージを与える魔法だとか。
「【ストーム】系よりも効果範囲は広い代わりにダメージは単体のみ、って所でバランスをとっているのかな? 効果も【狂化】でレアだし、【ストーム】系と違い連続使用も可能、と。中々使いどころの難しい魔法だねー」
「確かに……」
【狂化】は敵が受けるダメージを大きくするが、こちらが受けるダメージもでかくなってしまう。
それに状態異常が味方にも影響するため、パーティーを組んで迂闊に使えば、悲惨なことになってしまうだろう。
しかし相手の被ダメージを増やせるのだから、使いどころによってはかなりの効果を発揮してくれると思う。
「相変わらず尖った性能だなー。まぁその方が面白くていいよね! ありがとう、良い情報をもらえたよ」
「おう、こっちこそ検証に付き合ってくれてサンキューな」
「いえいえー。じゃぁ僕からの情報だ。個人名は出せないけど、他に今の所僕の知っている職業スキルは一つだけ。【漸堅】と言って、魔力残量が減るほど被ダメージがカットされるスキルだ」
「なにそれすごい」
魔素族は魔力を消費することを最も得意とする、と言っても過言ではない種族だ。
そんな種族に【漸堅】の様な効果のスキルを持たせるとは、まさに鬼に金棒。いや、亀に甲羅か?
「ねー。まぁあの人もキミとは違う方向だけど、かなり尖った戦い方をしているからね。然もありなんって感じだよ」
「へー、そうなのか」
俺以外にも、こんな風に変わった戦い方をしている人たちがいるのか。
そう言えば以前ニャリスが、他の魔素族は召喚者の中でも上の方にいると言っていたか。
その人もきっと、色々と戦い方を模索して頑張ったんだろうな。
「まぁ色んな戦い方を知れて、情報屋の僕としては有難い限りなんだけどね! あ、出来ればこの職業と職業スキルについてはギルドには黙っていてくれると嬉しいかな」
「別に構わないが……なんでだ?」
職業スキルの取得方法を広めれば、魔素族になろうという人ももっと増えると思うんだが……。
「えっとね、職業スキルの存在についてはギルドも知ってはいるんだ。でもその取得方法について広められちゃうと、それを狙う人ばかりになっちゃうよね。それじゃぁつまらないんだよ。魔素族ってさ、いろんな可能性を秘めている種族じゃない? だから職業スキルを目指す人たちにも、その無限の可能性を自分で広げていって欲しいんだよねー」
「……なるほどな」
確かに取得方法を知れば、それをとりあえず目指そうという者は増えるだろう。
しかしそれでは職業スキルの種類は増えない。
だからラビックは情報を秘匿させたいのか。
「まぁもうちょっと本音を言うと、あんまりギルドに情報が広まっちゃうと、情報屋としての僕の仕事が無くなっちゃうって言う理由もあるんだけどさ!」
「……色々と台無しだな」
冗談めかして言う彼女に、俺も苦笑しつつ答える。
確かにこのゲームでは初期情報はある程度ギルドで手に入ってしまう。
魔素族については極端に情報が少なかったが、そのおかげで俺もGPには苦労をしていない。
彼女の言う通り情報屋の仕事を失くさないためにも、ここは一つ協力しておくとにしよう。
まぁ俺はスルーしてしまっていたが、種族説明の際に仄めかされてはいるのだ。
あとは各自の頑張りによって、それぞれがオリジナルの職業スキルを手にすればいいだろう。
「了解だ。ギルドには報告はしないでおくよ。特に今ガルやGPに困っている訳でもないしな」
「うん、ありがとう! 代わりと言っては何だけど、もし他に困ったことがあったらいつでも声を掛けてよ。僕に力になれることであれば、いつでも相談に乗るからさ!」
そういって、可愛らし笑顔をみせるラビック。
彼女も彼女なりにこの世界を楽しもうとしている。
俺ももっと戦い方を尖らせて、新しい可能性を見つけていくとしよう。




