愛とナイフ
鉈を振り下ろす理由を問う豚のごとく
叩き潰される訳を尋ねる蚊のごとく
ただ活きていることが罪かのように
しかしその旨を伝えることは残酷とし
致命傷すら与えられず
ただその死を見届ける訳でもなく
腹を割って話した自分に対し
差しのべた手は背中を突き破り
ただ一心に求める助けは振り払われ
いっそ殺せとすがり付くも見放され
痛くてつらいのにそこに留まることしかできず
ただただ忘却の彼方を見据えるその瞳は
私を憐れみ、見下ろすかのようで
でもその目線が、その優しさが
凶器となりて突き刺さり
私の根幹に刻み込むことを
きっとわからないんだろう
それでも、その痛みが
苦しみが
哀しみが
きっとあなたとの繋がりを生むと信じて
だから私は
振られてもなお、愛していたいのである
切り落とした指の数は
あなたの持つ、刃物の数
喉元まで込み上げる愛は
溢れでる涙となる
私を殺すことのできないそのナイフに
私は恋をしてしまったのだ