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暗黒と少年-インタールード-  作者: みんとす。
終ノ章 -継ぐ-
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第三話 継ノ言ノ切―Ⅲ

 

 用件も済んだことで、ルノさんは仕事に戻る、と言いながら、ルデの件に関して手続きをしに向かってくれた。仕事に飽きた、と言っていたこともあって、違う仕事をしたかったのだろう。

 場に残った四人で、屋敷内を適当に歩きながら少しばかり雑談をする。


「それで、ルデ君はこれからどうします? ザイ君とウィンさんのことを気にかけてくれていたようですけど、その彼らはこの状態ですし」


 この数日、本当に気味が悪いくらいに幾度となく調子を窺っていたルデは、この状況に安心しているのか、声を漏らして悩んでいた。もちろん、シンマを待たせている分、屋敷を出た方が良いだろう。


「……まあ、貴様らが気になってここに留まっていただけじゃ。こうもなれば留まる理由もない、か。……ふん、ならば吾は早々にここを去るとしよう」


「その様子だと、別件で何かありそうですね?」


 ルデが屋敷を出る、という結論に至ったことで、向かう先は屋敷の玄関口に定まった。ガネさんを先頭にして、通路をまっすぐに歩いていく。

 俺たちのことがなければ、恐らく、助太刀が終わった瞬間に去るつもりだっただろう。時間を無駄に遣わせてしまった気がして、そこに言葉を重ねることはできなかった。


「何じゃ、気色の悪い。否定はせんが、貴様らを関わらせるつもりはない、安心しろ」


「そんな気になる言い方したら、ザイが首突っ込みますよ」


「ちょっと……俺そこまで好奇心旺盛じゃないから……。ガネさんは今でもルデのこと気に喰わない感じ?」


「そうですね」


 共闘しておいて、驚くほどの即答ぶりだ。ガネさんの場合、総合的に見て、というよりも、第一印象と飄々とした性格が気に入らないだけだろうが。


「貴様……吾がここまで見返りなしにしてやったというのに……」


「初対面であんな喧嘩吹っかけておいて、よく偉そうに言えたものですね。そのお陰で信用はしていませんよ。ただ、バカでもそこまでバカじゃないでしょう。臨機応変に、状況を判断できるとは思っていますので、場合によっては力を貸さないこともありません」


 とどのつまり、利用しあう価値はある。そういう関係性で十分だ。とのこと。ガネさんも相変わらず、難しい性格をしているものだと再実感する。


「バカにしおって……いや、なるほどのぅ。まあその程度であれば、吾も好き勝手干渉できるというものじゃ」


 歩を進め、玄関口が見えると、管理の者と、ルノさんが脇に立っていた。これで、本当にルデの出入りは自由とされたようで、ルノさんはニッと笑ってくれた。


「……仕事が早いですね」


「まあな、俺ともなればこれくらい」


 確かに本部長の立場だと、融通くらいどれだけでも利くだろう。本気を出せば本部長らしい、かなりの頼りがいを見せるのに、気の抜けている言葉が多い。メリハリ、という意味では、良い効果を出しているのかもしれない。


「その調子で本部の仕事も頑張ってくださいね?」


「お前本当に……一度仕事押し付けるからな……」


「教え子に言う言葉じゃないでしょ……僕が本部に出入りできるようになってから言ってください」


「手伝う気はあるのか」


「……あ、ルデ君たちが待ってるので見送ってきますね」


 玄関口を開けてもらい、外の風を全身で浴びる。この数日、どころか、しばらく外を見ていなかったかもしれない。あまりにも心地良くて、清々しい光と風で、何か、詰まったものが溶けていく気がした。


「久しく感じるものじゃな。貴様らは、この屋敷に身をおいて、息苦しくはないのか?」


 屋敷に限れば、俺たちが住んでいるのは狭い世界。そこから大地へ身を出せば、もっと知らないものもある。

 しかし、広い世界どころか、裏の世界まで知ってしまっている俺は、むしろ唯一を握っている。


「お前はほとんど外にいるからだろうけど、俺たちは俺たちで、守りたいものがあるんだよ。俺たちの世界は、ここが拠点だから」


「そうか。……そのうち、この空の下で会うこともあろう。しばらくここに来んで済むように願っておくとよい。特に灰色の貴様じゃ」


 俺の答えに納得したらしいルデは、次はガネさんを示して、声をあげた。


「何に引け目を感じてその呼び方なんですか? 名前で良いですよ。知ってるくせにこだわりですか?」


「……何じゃ、気に入らんという割に、名は託すのじゃな」


「全く、言葉が多い魔族ですね……。さっさと友人の元に戻ってください、僕も仕事に戻りたいので」


 呆れたように返すガネさんは、ルデが伸ばしている指を掴んで、強制的に下ろさせた。ルデもルデで、名を託してきたガネさんに、これまでと違った雰囲気を感じたのだろう。それ以上には、からかわなかった。


「は、そうじゃな。ここで長話をする理由もない。……女の方は、ザイヴ、貴様がいれば大丈夫か」


「私のことも名前でいいですよ。ウィン=アード、ちゃんと覚えてくださいね」


 笑って名を告げるウィンを見て、大きな安堵感を得る。むしろ、俺なんかよりも強いかもしれない。そんな感覚になった。


「……そうか。ならば、貴様らと次に会う時は、多くが変貌を遂げていようことを期待しよう。ラオガの気持ちを踏みにじるなよ、ガネ」


「しっかり引き継がせてもらいますよ。……気を付けて」


 背を向けたルデに、最後に投げかけた言葉。これから、ルデが目的とするものが、何なのか。そこまで干渉してしまえば、きっと後ろ髪を引かれることになる。敢えて、ここで距離を作るのも良い。そう判断して、ルデが呼び出した魔物に囲まれ、木々の多い方角へ向かっていくのを見届ける。


 その姿が見えなくなった時、俺たちは屋敷の大きな扉で、世界を仕切った。



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