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暗黒と少年-インタールード-  作者: みんとす。
五ノ章 -邂逅-
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第三十四話 闇ニ蠢ク怪―Ⅱ

 

 〈暗黒者-デッド-〉に関する情報をより多く得るために、我は何度も繰り返し吟を訪ねた。しつこいほどに、だ。それくらいしなければ、それを目の前にすることすら難しいのではないかと、薫の件で感じていた。

 そうしているうちに、更にいくつか気づいた点が出てきていた。


 吟の言う“ケイヤク”は、怪異間でも結ぶことができるもの。我にとってその機会がなかっただけであって、その命を他の怪異に託している者もいるということ。この怪異の世界にも、強弱は確かにある。弱い者が、強い者の力を借りて、生きているということだ。

 そして、もう一点。我々の住むこの闇と、表に生きる人の世は、正反対でありながら、しかしだからこそ(・・・・・)、繋がりを強く持っている。ということ。ただ、それはそもそも見えるようなものではなく、また物自体(・・・)が存在していたわけではない。

 ある時、“繋”としてのそれはこの闇の中に現れ、今も存在しているという。そのお陰で、世の行き来を可能とする怪異も増えてきているようだ。


『……なるほど』


 整理すれば、自ずと浮かび上がるものはある。そもそも存在し得ぬもの、ということは、原因があってそこに繋がりが現れたのだろう。

 その原因とやらは定かではないが、怪異が人の世に行くことを可能としている、という点は、些か疑問を覚えた。


『吟、怪異はこの世に棲息する特殊な生だな』


『アア……ソウダ……。〈暗黒(ココ)〉ニ満チテイル、要素ハ、他ニハナイ……。コノ、外デノ永イ棲息ハ、不可能ダ……』


『ではなぜ、怪異が人の世に行こうとしている? 交わらずとも良い世界だろう』


『行ッタトコロ、デ……ソウ長クハ、保タヌ……ソグワヌ世界、デハ、息ヲスルコトモ、苦シイ……』


 ―興味、ということだ。長い暇が振り切ってしまえば、特別変わったものに、それは間違いなく興味を示すことだろう。満更でもない。我自身、深く興味をもっているのだから。


『……タダ、特殊ナ者ト、手ヲ結ベバ……ソノ限リデハ、ナイ……ヨウダ……』


 吟がどこで、どういった情報を得ているのか。それは、吟の能力にある。この世界の“声”を、吸収しているのだ。そのお陰で、吟は怪異の中では重宝されている存在で。我以外にも、その力を頼るものは多い。


『……怪異同士の“ケイヤク”がある、と言った。しかし、我はその情報知らん。例えで、出せぬのか』


『アア……オ前、ガ……知ル怪異ノ中、デハ……秀蛾、ト……顔擬……。アレラハ……互イニ欠ケテイル所ヲ、補イ合ッテイル……』


「秀蛾と顔擬、か。そういえば、見ればいつも揃っているな……。なるほど」


 いや、恐らく。縛りとして存在するものではない。とどのつまり、“約束”と言ったところだろう。

 怪異の契約、“名を相手に渡す”という行動は、相手に己を意識させ、認めさせ、得させるということ。そのものに、制約はない。


『タダ……コレハ、ソノ、特殊ナ者トノケイヤク、トナレバ、違ッテクル……ヨウダ……。人ト、怪異ガケイヤクシタ時……人ガ、命ヲ落トセバ……ソノ怪異、モ……消エル……。アア、何ト……イウ……』


『そう、聞いた(・・・)のか』


『聞イタ、トモ。ソレ以外ノコトハ、言ワヌ……スマヌ、ケイヤク、トイウ手ヲ、勧メテオイテ……コレダ……』


『いや……何。要するに、我がその人間を守れば良い話だろう。それくらいの能力は持っているつもりだ』


 ―ああ、それでも、見たことのない異端な能力を前にして、我は冷静でいられるだろうか。とんでもなく無に近い(とき)にいる我が、それを引き当てた時。恐らく、冷めぬ興奮に憑りつかれてしまうだろう。

 思わず、その力を喰らおうとしてしまうかもしれない。そうしてしまえば、恐怖するだろうか。


 まだ、知識は十分ではない。今のうちに、もっと集めなければ。


『また来る』


『……オ前、ナラ……本当ニ、手ニシテシマエル、カモシレン……。無謀ナコトダケハ、セヌヨウニ……』


『……ああ、そうだな』


 薫がそのすぐ傍まで辿り着いていた。他の怪異も、すでにその存在に気づいているかもしれない。

 これは単なる、我の興味だが―――ただ純粋に、その異端に染まってみたいのだ。



 ―これが、我が〈暗黒者-デッド-〉を求めた、理由だ。掴みかけているその存在を、手放そうとは、思えなかった。



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