表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒と少年-インタールード-  作者: みんとす。
四ノ章 -辿り-
28/43

第二十七話 黒ノ纏ウ色筋―Ⅳ

 

 オミと出くわしてから間もなく、俺は座学室内へと足を運んでいた。俺の姿を捉えたラオは、体調を心配して顔色を窺っていた。


「……過保護め」


「心配してるんだよ。滅多にしないことしてるわけだし」


「大丈夫。さっきオミに会って、ちょっとだけ励ましてもらったから」


 自身の書が置いてある席について、ラオとシリスに進捗を尋ねると、チェインとユラが追い付いてきたところだという。図らずとも、良いタイミングで戻って来たようだ。俺が書を開き始めたのを見てか、シリスはにこりと微笑んで、俺の前に座り直した。


「ちなみに、何て励まされたの? ザイヴ君が自分から書を開いてるくらいだし、凄いこと言われた?」


「んー? 正直よく分からないんだよ。でも、オミは優しいし、疲れてる俺に話しかけて頑張れって言ってくれたし、まあ、ネガティブにはなれないなって思って」


「ザイの苦手意識は何にも劣らないと思うしね。それで? 何でネガティブになってたの? 頑張っても自分が足を引っ張るかもって思った?」


「うわ、エスパーかよ……」


 ラオの分析力には頭が上がらない。現に、その思考に押しつぶされそうで、この部屋を去ったところだったこともあって、ぐうの音も出ない。


「やっぱりねー、責任感はあるから、そんなところだろうって思ってた。でも、分かんないよ、これだけ頑張ってるから、ユラもチェインも抜いて健闘できるかもしれない」


「オレをバカにする流れじゃねーだろー!?」


「しょーがねえなー、今回はオレがビリで妥協してやるよー!」


「ユラのその妥協は何の意味もなさないからやめてくれる?」


 シリスの普段より低音での発言も、ユラは笑って受け流している。お調子者のくせに、その性格に今だけは気持ちが安定していくような気がして、何も突っ込まなかった。


「さて、じゃああと少し頑張ろうか。明日は講技も座学もあるから、早めに休も」


 ラオの呼びかけで、今度は五人全員が輪になるように頭を寄せ合い、勉学に勤しんだ。

 その時間が解散されたのは、恒の一時を過ぎた頃だった。




 昼食を取るべく、ラオと共に食堂に入ると、ガネさんの姿を見つけた。その目の前には、ソムさんもいる。傍から見ただけでも仲が良いことが分かる二人が、偶然にも揃ってこちらを見た。察し力は相変わらずのようだ。


「今から食事ですか?」


「うん、今まで座学室にいたから。あ、ちょうどいいや、これ、座学室の鍵」


 ガネさんに許可を貰って開けていた座学室。その鍵は、もちろんその主であるガネさんに返すべきもので。ラオがまっすぐに腕を伸ばして、ガネさんに渡した。


「わざわざすみません。調子はいかがですか?」


「まあ、何とかなるかもしれないってところかな。ザイも頑張ってたし、今回は座学で下位とらないんじゃないかな」


 俺のことを上げようと、フォローと共に肩を軽く叩いてくる。俺の扱いも、ガネさんの扱いも慣れた者ものだと言うように、うまく話を返した。


 それぞれが選んだ食事を持って、四人がけの席に順に座っていく。最後に俺が座ろうとしたところで、ソムさんが話を続けた。


「でも凄いねザイヴ君! やればできるってことだね!」


「逆に何で僕の話を聞かないんでしょうかね……困ったものですよねえ」


「でも半分は聞いてることに気づいたから、集中力の問題だ……多分」


「なるほど。まあ、今度のグループ成績に反映されることを楽しみにしています。日程は急ですが、明後日にしましたので、頑張ってくださいね」


「また急だな……」


「いつまた、欠席しないといけなくなるか、分からないでしょ。君たちに合わせて設定しているんですよ」


 そう言われてしまえば、反論もない。間違いなく、俺とラオは現在進行形で、〈暗黒者-デッド-〉としての役割を担っている身なのだから。

 今はただ、設けられた明後日の時間が、普遍的に訪れてくれるように願うばかりだ。


「頑張る……」


「あれ、ザイ君珍しいですね。プリンは食べないんですか? 疲れた脳は甘味を欲しがるなんてありますけど」


「……不思議とそんな気分じゃないな。熱い汁ものだけで良い」


「もしかして疲れたら食欲がなくなるタイプだったりするの……?」


 ソムさんのその時の驚愕の表情は、意味もなく俺の頭に焼きつくことになった。あまりにも衝撃を受けた顔を見せながらも、「羨ましい」と発言したことによって。


「疲れたら食べないと! 私いっぱい食べちゃうから!」


「あはは、でもソムさんあんまり疲れるように見えないから、そこまで食べる日もないんじゃないの?」


「……言われればそうだけど。ラオガ君、よく見てるよね」


「俺もさっきエスパー発揮されたところだから、ソムさんの言い分は凄い分かる。ラオは異常な分析者」


「異常な分析者」


 俺の発言がツボだったのか。そう言ったソムさんは、口元を押さえながら必死に笑いをこらえていた。それを見たガネさんとラオは、見守るような目で食事を進めているのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ