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暗黒と少年-インタールード-  作者: みんとす。
四ノ章 -辿り-
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第二十二話 黒ノ覚エノ途―Ⅱ

 

「このやろ!」


 失礼極まりない発言をした担当教育師に対し、竹剣(バンレード)を振る。相手の剣術の腕はかなりのものであることは把握しているが、とにかく一回でもホゼの体のどこかに当たればいいと、その剣術を躱しながら隙を窺った。


「おーおー。さすがザイヴ。怖じねーなー」


「怖じてたまるか!」


 どこから振り下ろされるか、振り上げられるか分からない動きにも、俺は順応してついて行く。俺の中ではこれくらい朝飯前で、後方から届く感心したような声も、どうでも良い。


「本当センスあるよな……頭さえ賢けりゃなあ」


「ああああああまたバカにした! 見てろよ!」


 小回りの利く体を利用し、下方、後方、あらゆる方面からホゼへの攻撃を繰り出す。講技でしようするための竹剣といえど、当たればそれなりに痛い。思い切り当ててやれば、少しはバカにしなくなるだろうと、とにかく細かく動き回っていた。


「うえっ、めんどくせえ動きしてくんなよ」


「こんくらい何でもねーだろ!」


「まーな!」


 足元を狙われれば横に、肩を狙われれば後方に。竹剣で防ぐなんて自分から身を捨てるようなことはしない。竹剣が交われば最後、そこからホゼ教育師は力で押し飛ばすはずだ。


「でもよく分かってんじゃねーの、私のやり方というものを」


「そりゃ五年も見てれば分かるね!」


「言うねえ、私も同じだな!」


 そう、互いに五年間の姿を知っている。それは、互いの優位点でもあり劣位点でもある。しかしやはり経験というのは俺の邪魔をするもので、健闘はしたものの、一本も取れずに時間は終わることとなった。


「ふーん、お前は維持しとけって言ってあったっけ。剣術は言うことなしだ。ま、あとは座学を磨くんだな」


「最後まで言ってくんじゃねーよ……本当に……」


「はっはっは。よーし、じゃあ講技はここまでだ。今日お前らに言ったこと、今期でクリアできるようにしていくからな。恒の二時からは座学やるから、遅れないように来いよ。一回解散なー」


 ホゼ教育師はその言葉を残し、一番に広間から姿を消した。それを見届けたところで、ウィンが俺に駆け寄って来る。その手に引かれるように、ウィンの友人だという女の子、リカナも一緒についてきた。


「す、凄いね。ザイ君」


「うわっ今鳥肌立った。ザイでいい」


「あはは、ザイに遠慮いらないよ。リカナ、明日からザイに剣術教えてもらおうよ」


「え、えと……ザイ……が、良ければ……」


 内気な性格なのだろう、話をするだけでしどろもどろとしているリカナは、ウィンにずっとくっついている。もちろん、クラスが同じというだけあって、この女の子の存在自体は知っていた。今回ウィンが引き連れて来なければ、関わることもなかったかもしれない。


「えー俺教えるの下手だよ」


「あ、うん。分かる」


「分かるの!? それはちょっとどうかと……いやまあいいんだけど……」


「あはは、どっちなのー」


 ざわついていた広間内も、時間の経過とともに静けさに包まれていく。気づけば、残っているのは俺たち三人だけだった。

 そろそろ俺たちも出ようと、広間の外に出かけた時、ひょこりと覗く顔があった。


「よー! 二人とも、どうだったー?」


 その姿は、俺たちにとても馴染み深い人物で、笑顔で俺たちの様子を気にかけてきた。


「ラオ! ラオこそどうだったの?」


 今日から応用クラスに属すラオは、どこか眩しくも見えた。羨ましいとさえ、思う。しかし、その問いを投げたところ、すっと表情が真顔になった。


「うん……俺応用に上がれたのは良かったんだけど……大丈夫かな……」


「えっ……何で」


「俺は初日だから別枠だったんだけど、俺のクラスの担当教育師ってスパルタでね……在籍が長い屋敷生の奴は凄いしごかれてた……」


 羨ましい、とは思う。けれど、ラオの表情を見る限り、やはり現実としては甘くなさそうだ。


「じゃあ俺はまだしばらくこっちでいいや……」


 その結論に至るには、十分な情報を語った、表情だった。





 ラオの講技は、俺たちの座学よりも早く始まるらしく、俺たちは別行動になった。時間の使い方も、応用クラスに上がると違ってくるようだ。ラオは駆け足で、俺たちの前から去って行っていた。


「ラオ大変そうだね」


「んー、でも、何となく、充実はしそうだよね。ラオって頭も良いし、優しいし、強いし」


「そ、そうなの……? あの、ラオ君って、幼馴染、なんだよね?」


 普段愛称で呼んでいる俺からすれば、そこに敬称がつくだけで違和感を覚えるもので。どうしてもリカナの呼び方にいちいちむず痒さを感じてしまう。


「待って俺のことじゃないのにすげー鳥肌立った。慣れないって怖え!」


「ご、ごめんなさい!」


「あ、ザイ。そういえばリカナって私たちの一つ下なんだよ。知ってた?」


「知らなかった。……あ、今すげーすっきりした」


 性格からくる敬称付けだと思っていたが、どうやら別の観点でもそうしていることが分かったところで、俺の引っ掛かりは取れることになった。それでも、俺のことは敬称略で呼んでもらいたいと、改めて頼んだ。





 恒の二時。ホゼ教育師が言った時間になり、そのちょうどの時間に座学が始められる。

 配布された大きめの書物は、今期扱う一般常識や学問だという。そこまで分厚さはないものの、開けば内容の区分こそされているが、びっしりとした量に、思わず無言で表紙に戻した。


「お? 何だ? ザイヴは座学放棄か?」


「てめーしれっと見てんじゃねー!」


「いやそれが私の仕事だからなぁ。文句言われても……つか教育師にてめーってよく言えるな。すげーわ。あ、私は別に気にしないが、他の教育師には気をつけろよー」


「そんな絡み方してくんのあんたくらいだよ……」


 本題に戻ったホゼ教育師の手には、俺たちが渡されたものと同じ書物があった。早速内容に入る、というホゼ教育師は、休み明けという点を考慮して、一般常識が綴られたページを開くよう指示を出した。

 俺もそこまで反抗的ではない。大人しく、指定されたページを開いて、ホゼ教育師の話を何となく聞いていた。



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