敬語がひとを殺める話にするつもりだった
2017.2.17にぷらいべったーに投稿したものを転載
[http://privatter.net/p/2157926]
「趣味でひとを殺めている者です。」
別にサイコパスとかでは無いのですよ、だって、喉にナイフを突きつけられたひとの顔はひどく歪んで汚いし、その後はもっとひどい。ただ、硬いものが弾けるような感触が好きで、ちょうどその行為が僕の好きなのにぴったりだっただけなんです。ほら、きっとあなたにもあるはずです、例えばまっさらなシャツのひんやりしてすべすべな感じとか。それと同じ。
今夜は、ひとを殺める具体的な描写が欲しくてここに来たそうですね。いや、僕から来たかもしれないです?まぁ、細かいことはいいんです、実演するのが一番いい。
じゃあ、そうだな、どこかからひとりぐらい連れてきてくれませんか?僕は準備とかあるので、すみません。誰でもいいですよ、明日が誕生日で眠れない女の子でも、はじめてカノジョができた学生でも、仕事に疲れている大人でも余生を楽しむ年寄りでも。僕的な好みはまぁありますけど、今日は実演するだけですからね。それじゃ、頼みました。
あなたは夜の住宅街に出た。
とりあえず歩いているひとを探せ。
あなたの足音だけが暗闇に響く。
児童公園の草陰で淫交している男女がいた。
あなたは吐き気がしたので道を変えた。
あなたは少し歩いたら、帰宅途中らしいOLを見つけた。
あなたは彼女の首を掴み、さっきいた部屋まで戻った。
思ったより早かったですね、驚きましたよ。あなたがいない間にナイフを用意していたのです。これは自慢になりますが、ドイツのいいブランドなんですね。ひっかからない切り具合がなんとも最高で。じゃあ、今からやりますから、見ててください。
OLは抵抗していたが、彼は気にしていないようだ。
慣れた手つきで彼女の片手を抑えて壁に押し付けた。(壁ドンのような構図だ)
そして反対の手の指の第二関節から丁寧に切り落としてゆく。
あなたは、あぁ、確かに歪んで汚い顔だなと思った。
彼女のベージュのシャツの袖が染まってゆく。
几帳面らしい彼は、指を丁寧に白いクロスの上に並べてからさっきまで抑えていた手の指も丁寧に切り落とした。
彼の白い手の指先にだけ赤黒い血液が付着していた。
次に、彼女の履いていた控えめなヒールを脱がした。
黒のタイツには触れずそのままにしていた。
今度は左から、右、足首を切り落とした。
すでに床は液体に満ちている。
あなたは正直彼女の感情には興味が無かったので、その時の顔は見ていなかった。
まずこれで、爪を使った攻撃はされることがありませんね。一番最初の下準備が終わったワケです。じゃあ、キンキンした声も耳触りなので止めちゃいましょう。
彼は彼女の喉にナイフを突きつけて、そのままやった。
今度はかなり派手に飛んだ。
彼の顔には正面から被ったし、あなたの服にも少し付いてしまった。
「ここの瞬間が一番イイんです。」
頬に大量に付いた血液には全く興味がない様子で、平然と…いや、少し息を荒くして話す姿は滑稽だった。
「命が無くなったらもう物と同じですからね、気遣いもいりません。」
あなたはよくわからなかったけど、ここまで彼は気遣いもしながらナイフを動かしていたらしい。
気遣いをしなくなった彼は、OLから物に成り下がったなった「それ」のジャケットをまず脱がし、ブラウスもボタンを器用に外して脱がし、薄ピンクのブラも外した。そしてそれらの「物の飾り」を無造作に床に置いた。床にしたたる液体ですぐに変色した。
そして乳房の下の方を手で支え、上からバッサリ切り落とた。
液体がまた垂れた。
「肉感が絶妙なんですよ。」
先程まで少し荒かった息は今では完全なる過呼吸となっている。
ビュウビュウと彼の喉の奥が鳴る音が聞こえる。
「もうすぐ本番になります、最後に重くて邪魔な頭部も外しちゃいましょう。」
彼はとても早口で言って、それの首の後ろにナイフを当て、ガッと手を引いた。
液体が噴き出て、天井にまで付いた。
ごとりとそれの上は床に落ち、液体の溜まりに転がった。
「これでやっと本番にできます。」
彼の冷静な感じの雰囲気は見つからなかった。
本番というのが始まったらしい。
彼は最後にそれに残っていた飾りも全て外し、床に捨てた。
ちょっと酸っぱい臭いがした。
それから、それを血溜まりの床に押し倒し、暫し身体を撫で回していた。
血が大量に付着している顔が微笑を浮かべ、物となった人間を撫で回している姿ななんとも異様なものだった。そして次には、舌を這わせて息を荒くしていた。
彼の嗚咽と卑猥な音だけがこの空間の波形であった。
あなたは、さすがに見てはいけないような気がしてその場を去ろうと思ったが、やめた。
あなたがそれで高まる感情を覚えていたのも事実だ。
だって、そうでなかったらあなたはとっくに「ブラウザバック」しているはずだから。
あなたは、物になった人間とケモノにでもなった人間をぼうっと眺めていた。
ケモノは物の身体を一通り堪能したのか、次には馬乗りになって腹に…胸に…腿に…ナイフを刺しては抜いてを繰り返した。もはや顔と手だけでなく、ベストにもシャツにも至るところで液体を被り、ただただナイフを動かしていた。なるほど、これが本番か。
ぐちゃぐちゃ音がした。
そのうち骨のようなものも見えた。
あなたは骨が掻き回される様子までずっとずっと眺めていた。
あなたも同じようにすこし息を荒くしていた。
…これで実演は終わりましたよ……もうナイフも持ってません……僕の身体は少し汚れているけど、しっかりシャワーを浴びるから………。それにしても、最後まで見てくれた方は初めてでした………少し驚きましたよ…。普段は下準備も終わらないうちに僕だけになりますから、すみません、あなたが見てるのも半分忘れていたんです………。えぇ、そうなんです………。
実は、実演を最後まで見た方に対する最後のおもてなしは考えてないんです………僕に何ができますか……?
え、えぇ、そんなことでいいんですか?ちっともあなたに良いことが無いように思えますよ、それでは良くない……。
……本当に、本当にいいんですか?それじゃあ、もう今からでいいんですか。…少し僕も疲れてますけど……。それでは。
彼の身体を抱いた。彼も遠慮がちではあったが腕を回してくれた。
血溜まりの床に倒れ、少しの間恋人同士のような気分でいた。
あなたの服も液体でぐちゃぐちゃだ。
あなたは最初に児童公園で見たあれを少し思い出した。
日が昇る頃には、あなたも物になっているのだろう。
最後まで読んでくれてありがとう。感想送ってもらえたら泣いて喜んじゃうよ。
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