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花嫁騎士 ~勇者を寝取られたわたしは魔王の城を目指す~  作者: クラン
第四章 第三話「永遠の夜ー③赫灼の赤き竜ー」
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幕間.「東西南北」

 周囲を高い壁に囲まれた一大都市グレキランス。通称、王都。昼は交易馬車が行き交い、旅人の往来が絶えない。夜になれば東西南北の門を閉ざし、騎士団員が壁外で魔物の撃退を(にな)う。そんな日々が何年も、何十年も、何百年も続いてきた。


 今や、門は昼夜問わず固く閉ざされ、壁上には異様な砲台や遠距離魔術に()けた者、はたまた弓兵が居並び、壁外はというと各門を中心に急造の駐屯(ちゅうとん)施設が点在していた。兵員は壁外全域にめぐらしてあるが、重点的に配備されているのはそれぞれの門である。


 一ヶ月ほど前の魔物襲撃により、すべての門が破壊されたのは王都のみならずグレキランス一帯の多くの人々の知るところだろう。此度(こたび)の戦争においても門が弱点となるであろうことは容易に見通せるがゆえ、人員を集中させるのは至極当然だった。


 王都北門の脇に構えられた石造りの駐屯所付近で、騎士団長ゼールは夜闇の先を睨んでいた。血族がグレキランス一帯に足を踏み入れて、今日で六日目の夜になる。兵士の士気は高く、今も暗闇から迫りくる魔物たちを果敢に撃退していた。壁から五百メートル圏内(けんない)を割って入る魔物がいれば、砲台から放たれる紫の光が射抜く。一見すると盤石(ばんじゃく)だが、これが血族相手にどれだけ通用するものかゼールには疑問だった。とはいえ、これ以上の態勢はない。


 ゼールは自らの判断により、オブライエンから支給された剣を兵士に使用するよう義務付けていた。それがどのような代物かを承知の上で。


 血族および魔物への憎悪を増幅させるその魔具が、洗脳に(るい)するものであり、隊列を乱す要因(よういん)になりうることは把握している。平時であれば好ましい武器とは言えない。しかしながら、命を()して王都を守らねばならぬのが兵士の義務だ。全部隊を指揮する立場上、ゼールがその武器を()びることはなかったが、勇猛さの点では洗脳された兵士とさして変わらない。魔物だろうが血族だろうが、物怖じするような人生は送ってこなかった。


 ハルキゲニアからの援軍にその武器を支給しなかったのは、良心からだ。それにゼールの目には、彼らが尻尾を巻いて逃げ出す手合いではなかったのも一因(いちいん)だろう。特に北門に配置された者はその傾向が顕著(けんちょ)だった。


 タソガレ盗賊団。北門の援軍の多くはその組織によって構成されている。盗賊団の名を(かん)しているものの、実態はハルキゲニア地方――通称『最果て』の町村を警護する傭兵といったところだ。当初は彼らの実力が如何(いか)ほどのものか(いぶか)ったものだが、結果はゼールの想定以上だった。魔物に対して怯えが見られない。多対一で魔物を相手取る戦法にも手慣れたものがある。なによりゼールの目を()いたのが、タソガレ盗賊団の副団長を(にん)じている、ジャックという名のレイピア使いだった。動きに一切の無駄がなく、大型魔物への対処も堅実。騎士時代のクロエに比肩(ひけん)しうる力量がある。魔具でもなんでもないレイピア一本でそれだけの実力を発揮(はっき)する彼に、ゼールが高揚(こうよう)を覚えたのは自然だろう。騎士団にスカウトしたいくらいだった。


 五百メートル圏外で戦闘を繰り広げている兵士を見守りながら、ゼールは内心で、冷静に、と呼びかける。自分自身に対してだ。冷静なつもりではある。が、動揺に()る事件がいくつか発生してもいた。


 まずは前線基地の崩壊。血族の部隊と相討(あいう)ったのは(ほま)れである。もとより、足止めの意味合いが強い拠点だ。それでも、生き残った者がいないという(しら)せはゼールの胸を痛めた。


 そして戦場のシフォンの存在と、その死の報せ。勇者ニコルが裏切った以上、彼と歩みをともにしたシフォンが敵側にいるであろうとは想像していたものの、どこか知らない土地で平々凡々と暮らしていてくれたなら、と願っていたのは事実である。公表してはいないが、仮にも養父なのだから。それゆえ、前線基地にシフォンが敵として出没したのは凶報だった。ニコルの指示に従うよう命じた晩のことは忘れもしない。意思を持たない彼女はニコルの命令のもと、人間を虐殺したのである。そして討ち取られた。喜びと同時に哀しみを(いだ)いてしまったのは仕方のないことだろう。相反(あいはん)する感情も同居させてしまうのが人心(じんしん)だ。


 シフォンへの悲喜こもごもの想いとは違って、マオの裏切りには落胆しかなかった。彼の精神性への失意ばかりではない。かつては神童と(うた)われた男を再起させられなかった自分の至らなさに心痛を感じた。マオの自信を奪い去ったのがほかならぬシフォンだという事実も、その要因である。今もって捕縛の報せがない以上、マオは壁内のどこかに潜伏しているのだろう。血族との戦いが終わるまで、どこかの地下壕にでも()もっていてくれればいいが、どうなるかは予測出来ない。顔が割れている以上、門番が通すはずもなく、したがって王都を離れるすべがないことだけは確かだった。


 ゼールはしばし瞑目(めいもく)し、思考を戦場――グレキランス全域へと向ける。血族の大隊がどこにいるのか。そしていつ、王都が襲撃されるのか。各門の戦況は逐一(ちくいち)交信魔術で把握しているものの、いまだに血族の襲撃報告は届いていない。


 目を開き、夜闇を見つめる。東門と南門にはそれぞれ騎士団のナンバー持ちをリーダーとして配置してある。本来は西門もそうなるはずだったが、マグオートからの強い要請により、配置を変える運びとなった。もとより西門が襲撃される可能性はそう高くない。襲われるにせよ、おそらくは最後だ。血族が東から侵入した以上、そうなる公算が高い。


 騎士団ナンバー7、魔眼のエイダ。


 騎士団ナンバー9、ゴッド。


 騎士団ナンバー6、不滅のローラン。


 それぞれの顔が脳裏(のうり)に浮かぶ。再会出来る日が訪れるだろうか、という感傷めいた気は一切ない。騎士として恥じぬよう、全身全霊で戦ってくれと願うばかりである。





 その頃、王都の東門に配置されたハルキゲニアの守護者――『黒兎(くろうさぎ)』はちょうどグールをナイフで八つ裂きにしたところだった。小型魔物ならお手の物。中型や大型はナイフを投擲(とうてき)して機動力を奪いつつ、隙を見て弱点を切り裂く。かつて所持していたナイフ型の魔具『魔力写刀(スプリッター)』を懐かしく感じることはあれど、無いなら無いなりに戦いようはある。


 それにしても、と『黒兎』は前方で拳を振るう女性を眺めやる。両手のグローブだけで襲いくる魔物を次々と蹂躙(じゅうりん)していく姿は、少々人間離れしていた。高い身長も発達した筋肉も、女性離れしている。右目を眼帯で封じているというのに動きには無駄がない。


「魔眼のオネーサン。もっと楽に戦えばいいじゃん。砲台もあるし、グローブの能力(・・)を使ったっていいのに、わざわざ接近戦なんて無駄でしょ」


 返事はない。無駄なことは喋らないくせに、無駄な戦い方をするだなんて、と『黒兎』は呆れた。


 騎士団ナンバー7、魔眼のエイダ。東門に配属されて彼女に出会ってからのことを思い出す。ぴっちりした藍色のズボンに、七分丈の黒い丸首シャツ。夜間戦闘でも平時でも、彼女は常にそんな格好だった。右目には髪色と同じ黒の眼帯。全体的に直毛で、前髪は眉のところできっちり切り揃えられており、ほかは肩口に触れない長さ。小麦色の肌は生来のものだろう。目付きは鋭く、高身長ゆえ見下されるかたちになった『黒兎』は多少の威圧感を覚えたものだった。


 それでも持ち前の自尊心から気さくに話しかけた『黒兎』は、ものの見事に無視された。厳密には軽い頷きやら目礼があったものの、ほとんど相手にされなかったのである。仮にも東門のリーダーなんだから、もっとこちらの士気を気遣(きづか)っても良さそうなものなのに、視線が合えば睨まれる。話しかけても大抵は無視される。ハルキゲニア出身者に偏見(へんけん)でもあるのかと訝ったが、ほかの騎士が言うにはそうでもないらしい。これが彼女の常態なのだと。


 言葉も仕草も必要最低限。


 騎士の男が『エイダさんにはあまりかかわらないほうがいい』と警告してくれたのだが、その理由がなんとも物騒だった。なんでも、彼女にちょっかいを出した男が半殺しの目に()ったらしい。その災難な男はエイダ以上に屈強だったにもかかわらず、組み伏せられ、気を失うまで殴られたんだとか。


 東門の部隊が彼女の最低限の指示に粛々(しゅくしゅく)と従っているのも、畏怖(いふ)喚起(かんき)する噂に由来(ゆらい)しているのだろう。


『黒兎』は好奇心から彼女の詰め所に出入りしてみたのだが、なんの(みの)りもなかった。詰め所の片隅で孤独に食事を()る彼女の隣にわざわざ座ってみて、一緒に食事しようと試みたが、これに対しては明確に拒絶されたものだ。『余所(よそ)で食え。オレに近寄るな』と。他人の一人称についてアレコレ評価するつもりはないが、さすがに女性が『オレ』と呼称するのには驚いた。以前ハルキゲニアで戦ったアリスも物騒な女性だったが、エイダは種類の異なる剣呑(けんのん)さを持っている。


 どんな過去を歩めば、こんな性格になるのだろう。


 新たに出現したグールを目にし、『黒兎』は回想を中断した。


 黙々と敵を始末し、エイダを眺めやる。顔色ひとつ変えずに率先して魔物を殴打する彼女に、溜め息をこぼした。


 共闘には程遠い、と。





 一方、南門では平穏な夜が続いていた。そこに配属された命なき存在――ハルは、砲台に撃ち抜かれて霧散する魔物を眺め、これでいいのだろうかと思わずにはいられない。ときおり砲台の攻撃を突破する魔物を討ち取るだけの夜。


 死者であるハルを蘇らせた少年、ネロは南門に近い壁内で今頃眠っていることだろう。ネロが無事なのは安心材料ではあるものの、この状況に居心地の悪さを感じている自分もいる。ひとつは、自分とともに南門に配属されたハルキゲニアの援軍のほとんどが『アカツキ盗賊団』の面々であることだ。生前の自分が属していた組織であるからこそ、やりづらさがある。今の自分はかつての名前を捨て去り、ネロの忠実なメイドとして新たな名を得ているからこそ、余計に。副団長のジンは壁上で弓兵の役割を担っていたが、団長のミイナの姿はない。いくらか復縁した二人がそばにいないのも、やりづらさを助長していた。前者はともかく、後者は元団長である『親爺』の捜索に血道を上げているらしい。もっぱら王都の壁内を駆け回っているんだとか。ハルとしても『親爺』に恩義がある以上、無事であってほしいと願っている。


 居心地の悪さのもうひとつは、南門のリーダーとその部下である騎士――もとい舎弟(しゃてい)たちの存在だ。


「ゴッドさん、茶ぁ()れたんで、飲み(シバキ)ましょう!」

「ゴッド先輩、肩揉みます!」

「ゴッドさん、お陰様で今夜も楽勝っすね!」


 ハルの背後でそんな声がする。「おう」という短い返事も。


 ゴッドという人物に対する印象は、ハルにとって最悪だった。まず見てくれからして、騎士どころか兵士にも戦士にも見えない。浅黒い肌に、黒い色付きのメガネ。黒い縄がいくつも垂れたような、ドレッドヘアなる珍妙な髪型。耳には銀のピアスがいくつも下がり、首は同系色のネックレスがじゃらじゃらと目にうるさい。格好は常にラフで、大抵は袖の短いシャツを前開きにして、胸板と割れた腹筋を露出させている。下はというと、膝丈までのダボダボした(がら)入りのズボン。足には草履(ぞうり)のようなものを履いている。両の手足には琥珀(こはく)の模造品を繋いだ数珠(じゅず)。これが南門のリーダーなのだから、ハズレくじを引いた気になるのも無理はない。騎士団の九番手らしいが、深刻な人材不足なのだろう。


『ゴッド、というのは本名でスカ?』


 出会って早々、そのような質問を投げかけたのだが、要領は得なかった。(いわ)く『自分(テメェ)の名前は忘れた。皆が俺をゴッドと呼ぶ』。


 なぜ人望があるのか謎だ。彼が戦闘に参加する様子も一切ない。南門の脇の壁に背を預け、砲台を突破する魔物が出れば舎弟たちに指示を送る。それだけだ。


 支給された剣の破棄を命じた理由もハルにはさっぱり分からない。(たず)ねても『風流(ロック)じゃねえからだ』という意味不明な返答だった。


 訓練の意味も込めて、砲台の射程範囲外で戦ってはどうかと提案してもみたのだが『仲間(ダチ)勲章(キズ)頭目(ヘッド)の恥だ』と返された。言葉こそ独特だが、要するに無駄な戦闘は回避したいのだろう。こんなことで血族を相手に出来るのか、(はなは)だ不安である。


 深まっていく夜を見据えて、ハルは拳を握った。いざとなれば自分ひとりでも戦おう。自分とネロの居場所を守ってくれたクロエには返しきれない恩義があるのだから。今度はクロエの居場所を守る。それだけのことだ。





 白みゆく空を見やり、マグオートの戦士キャロルは安堵(あんど)の息を吐き出した。今夜も乗り切れた。生き残れた。そんな感情が濁流みたいに押し寄せてくる。


 付近に銀山を(よう)する富裕な町、マグオート。別名、銀嶺(ぎんりょう)膝下(しっか)。王都にはおよばないが町の周囲を壁で覆って防護し、多くの戦士を(かか)えている。魔物対策は問題ないものの、血族の襲来は恐怖を喚起するに余りある。


 本来ならばこの地はベアトリスによって保護されるはずだった。人間最後の地として。それが、クロエのせいで全部ご破産になったのである。ベアトリスが戦場において夜会卿の背後を取ることとなった結果、マグオートの安全は反故(ほご)にされたのだ。したがって、戦うしかなくなった。この状況を歓迎している者はマグオートにひとりもいない。誰だって死にたくはないから。


 戦争における人材提供を拒否したにもかかわらず、逆に王都からの派兵を要請する傲岸(ごうがん)ぶりが許されたのは、王都に流通する銀貨の多くをマグオートが産出しているという背景もあるだろう。王都を追放された騎士たちを一時的に保護した功績も影響しているかもしれない。保護と言っても、その(かん)の魔物との戦闘は()()ってもらったわけだが。


 こうして派兵されたのが、騎士団のナンバー6を名乗るローランという男だった。紫の長髪を持つ、糸目の優男(やさおとこ)。騎士には見えない、というのがキャロルの第一印象である。マントをはためかせ、剣と盾で戦う姿を見てようやく、このひとは強いと理解したものだ。といっても、キャロルには彼の動きの良し悪しなど分からなかったが。


 もうひとつ、マグオートには喜ばしい来訪者があった。


「今夜も死傷者はゼロ。無事乗り切れてなによりです。魔物の数自体が減少傾向にあることも一因ですが、貴女(あなた)の働きが大きい。助かります、マドレーヌさん」


「アタシは特別なことなんてしてない。魔物を夜から解放しただけよ」


 柔和(にゅうわ)に語るローランに、桃色の髪の人物が答える。声も性別も男だが、喋り方や容姿は女性のそれである。


 マドレーヌがこの地にやってきたのは数日前のことだ。キュラスの教義を伝えるために各地を放浪しているらしい。魔術師であるマドレーヌに戦時中の滞在を嘆願(たんがん)したのは町長である。普段ならば魔術師やら魔術に(るい)する品を拒否する風潮のある町だが、非常時ゆえ、(わら)にも(すが)るといったところだ。マグオートに(とど)まって、血族から保護してほしいと町長が頭を下げたのも無理はない。拒絶されることはなかったとキャロルは聞いている。


 マドレーヌの魔術は(ひい)でているようだったが、戦い方自体は奇妙としか言えない。魔物に対して退()くよう呼びかけ、応じなければ炎の魔術で焼き払う。その(さい)、彼――彼女と呼ぶほうが正確だろう――は決まって涙を流すのだ。嗚咽(おえつ)するでもなく、顔を歪めるでもなく、涙腺が否応(いやおう)なく反応してしまうように。


 なんでもいい。敵を討ってくれるなら、なんでも。


 そんなふうにキャロルは考えていた。ローランはじめ、騎士たちが派兵されてからというもの、夜間防衛において彼女は後方で震えている時間がほとんどだった。死にたくない。でも戦士でいなきゃならない。どうしようもない感情が夜の(あいだ)ずっと続く。


 だから、朝の訪れはキャロルを脱力させた。


 すぐそこまで血族の軍勢が迫っているとも知らずに。

発言や単語が不明な部分は以下の項目をご参照下さい。



・『グレキランス』→通称『王都』。周囲を壁に囲まれた都。また、グレキランス一帯の地方を指して用いられる。詳しくは『第九話「王都グレキランス」』にて


・『王都』→グレキランスのこと。周囲を壁に囲まれた都。詳しくは『第九話「王都グレキランス」』にて


・『ゼール』→騎士団長。王都の騎士を統括する存在。双剣の魔具使い。実はシフォンの養父。詳しくは『幕間.「魔王の城~記憶の水盆『外壁』~」』『第九話「王都グレキランス」』『幕間.「王都グレキランス~騎士の役割~」』にて


・『黒の血族』→魔物の祖と言われる一族。人間と比較して長命。もともとは王都の敵国であったラガニアの人々のごく一部が、オブライエンの生み出した『気化アルテゴ』によって変異した姿。詳しくは『90.「黒の血族」』『間章「亡国懺悔録」』にて


・『オブライエン』→身体の大部分を魔力の籠った機械で補助する男。王都内の魔具および魔術関連の統括機関『魔具制御局』の局長。自分の身体を作り出した職人を探しているが、真意は不明。茶目っ気のある紳士。騎士団ナンバー1、紫電のザムザを使って『毒食の魔女』を死に至らしめたとされる。全身が液体魔具『シルバームーン』で構築された不死者。かつてのグラキランス領主の息子であり、ラガニアの人々を魔物・他種族・血族に変異させ、実質的に滅亡させた張本人。外界で活動しているのは彼の分身『二重歩行者』であり、本体は一切の魔術的干渉を受けない檻に閉じ込められている。詳しくは『345.「機械仕掛けの紳士」』『360.「彼だけの目的地」』『間章「亡国懺悔録」』にて


・『魔具』→魔術を施した武具のこと。体内の魔力が干渉するため魔術師は使用出来ないとされているが、ニコルは例外的に魔術と魔具の両方を使用出来る。詳しくは『間章「亡国懺悔録」』にて


・『ハルキゲニア』→『最果て』地方の北端に位置する都市。昔から魔術が盛んだった。別名、魔術都市。詳しくは『第五話「魔術都市ハルキゲニア」』にて


・『タソガレ盗賊団』→『最果て』のマルメロを中心に活動する盗賊団。魔物からの警護をビジネスにしている。詳しくは『第三話「(くびき)を越えて~①ふたつの派閥とひとつの眼~」』にて


・『最果て』→グレキランスの南方に広がる巨大な岩山の先に広がる土地。正式名称はハルキゲニア地方。クロエは、ニコルの転移魔術によって『最果て』まで飛ばされた。詳しくは『4.「剣を振るえ」』にて


・『ジャック』→『タソガレ盗賊団』元リーダー。ハルキゲニアでは帽子屋を名乗り、騎士団長をしていたレイピア使い。魔力察知能力に()けている。現在は『タソガレ盗賊団』に復帰して副団長を任されている。詳しくは『137.「帽子屋の奇術帽」』『152.「今日もクロエさんは器用~肖像の追憶~」』『48.「ウォルター≒ジャック」』『幕間.「Side Jack~正義の在り処~」』にて


・『前線基地』→王都北東の山脈にほど近い場所の山岳地帯に作った、戦争における要衝。血族の侵入経路と王都を直線上に結ぶ位置にあるため、全滅は必至であり、足止めの役割がある。総隊長としてシンクレールが配備されている。簒奪卿シャンティおよびシフォンの襲撃によりほぼ壊滅した。詳しくは『第四章 第二話「幻の森」』『第四章 第三話「永遠の夜ー①前線基地ー」』にて


・『シフォン』→ニコルと共に旅をしたメンバー。元騎士団ナンバー2。戦争において簒奪卿の部隊に配属されたが裏切り、血族も人間も殺戮した。自分の感情も思考も持たず、ニコルに従っている。前線基地にてクロエに敗北し、彼女の命ずるまま、現在はシンクレールに従っている。風の魔術の籠もった貴品(ギフト)『シュトロム』を使用。実は騎士団長ゼールの養子。詳しくは『43.「無感情の面影」』『幕間.「魔王の城~記憶の水盆『外壁』~」』『幕間「或る少女の足跡」』『幕間「前線基地の明くる日に」』にて


・『ニコル』→クロエの幼馴染。魔王を討伐したとされる勇者だが、実は魔王と手を組んでいる。黒の血族だけの世界を作り上げることが目的。クロエの最終目標はニコルと魔王の討伐。詳しくは『875.「勇者の描く世界」』にて


・『マオ』→騎士団ナンバー8の青年。樹木の魔術師。神童の異名をほしいままにしていたが、シフォンにかつて敗北したことで自尊心を叩き折られ、今は序列を維持するだけの卑屈な騎士に成り下がっている。そんな彼が『宿木』の蔑称で呼ばれるようになったことに、さして抵抗を感じてすらいない。詳しくは『幕間「或る少女の足跡」』にて


・『マグオート』→文化的、経済的に成熟した街。王都から流れてきた富豪が多く住む。トムとマーチの故郷。別名『銀嶺膝下(ぎんりょうしっか)』。ラガニアの辺境である地下都市ヘイズと、転送の魔道具によって接続されている。詳しくは『第四章 第一話「祈りの系譜」』にて


・『魔眼のエイダ』→騎士団ナンバー7の女性。シフォンのかつての友達で、右目を失明している。詳しくは『幕間「或る少女の足跡」』にて


・『黒兎(くろうさぎ)』→ハルキゲニアの元騎士。ナイフを複製する魔具『魔力写刀(スプリッター)』の使い手。残忍な性格。本名はクラウス。『白兎』の双子の弟。詳しくは『127.「魔力写刀」』『Side Alice.「卑劣の街のアリス」』にて


・『魔力写刀(スプリッター)』→『黒兎』の持つナイフの魔具。ナイフの複製を創り出す能力を持つ。アリスが回収した。詳しくは『127.「魔力写刀」』『Side Alice.「姉弟の情とアリス』にて


・『グール』→一般的な魔物。鋭い爪で人を襲う。詳しくは『8.「月夜の丘と魔物討伐」』にて


・『アリス』→魔銃を使う魔術師。ハルキゲニアの元領主ドレンテの娘。実は防御魔術のエキスパート。王都の歓楽街取締役のルカーニアと永続的な雇用関係を結んだ。ラガニア随一の魔術師ヘルメスに弟子入り。詳しくは『33.「狂弾のアリス」』『Side Alice.「ならず者と負け戦」』にて


・『ハル』→ネロの死霊術によって蘇った少女。メイド人形を演じている。元々はアカツキ盗賊団に所属。生前の名前はアイシャ。詳しくは『第一話「人形使いと死霊術師」』参照


・『ネロ』→クロエの出会った死霊術師(ネクロマンサー)。詳しくは『第一話「人形使いと死霊術師」』参照


・『アカツキ盗賊団』→孤児ばかりを集めた盗賊団。タソガレ盗賊団とは縄張りをめぐって敵対関係にある。詳しくは『第二話「アカツキ盗賊団」』にて


・『ジン』→アカツキ盗賊団の副団長。主にミイナの暴走を止める役目を負っている。弓の名手。矢と矢筒がセットになった魔具と、射程距離増加の魔術の施された弓の魔具を持つ。詳しくは『20.「警戒、そして盗賊達の胃袋へ」』にて


・『ミイナ』→アカツキ盗賊団のリーダー。詳しくは『第二話「アカツキ盗賊団」』にて


・『親爺(おやじ)』→アカツキ盗賊団の元頭領。彼が製造した武器がクロエの所有するサーベル。詳しくは『40.「黄昏と暁の狭間で」』にて


・『キャロル』→マグオートの戦士。気だるげな女性。運河を越えるために砂漠の廃墟の掘削事業に従事していた。詳しくは『第四章 第一話「祈りの系譜」』にて


・『ベアトリス』→ラガニアの地下都市ヘイズの長であり、バーンズの子孫。黒の血族で、ラガニアの男爵。誠実な男。祖先の恨みを晴らすべく、夜会卿への宣戦布告を目論んでいる。鎧をかたどった貴品『虚喰』により、無形の靄を自在に操ることが可能。ただし、力を使えば使うほど鎧の内部は空洞化する。戦争にて竜人と組んで人間側につくことを誓った。詳しくは『第四章 第一話「祈りの系譜」』にて


・『夜会卿ヴラド』→黒の血族の公爵。王都の書物でも語られるほど名が知られている。魔王の分家の当主。キュラスの先にある平地『毒色原野』を越えた先に彼の拠点が存在する。極端な純血主義であり、自分に価値を提供出来ない混血や他種族は家畜同様に見なしているらしい。不死の力を持つ。詳しくは『幕間.「魔王の城~ダンスフロア~」』『90.「黒の血族」』『幕間.「魔王の城~尖塔~」』『565.「愛の狂妄」』『927.「死に嫌われている」』にて


・『マドレーヌ』→炎の魔術を得意とする、『救世隊』の魔術師。性別は男性だが、女性の格好をし、女性の言葉を使う。シンクレールに惚れていたが、彼に敗北。テレジアの死によって、彼女の教義を伝える旅に出た。詳しくは『317.「マドレーヌ」』にて


・『キュラス』→山頂の街。牧歌的。魔物に滅ぼされていない末端の街であるがゆえに、『フロントライン』と呼ばれる。勇者一行のひとり、テレジアの故郷。一度魔物に滅ぼされている。詳しくは『第二章 第三話「フロントライン」』にて

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