891.「それぞれの行き先」
湿った空気が肌に貼り付き、泥土の匂いがそこかしこにわだかまっている。天を穿つごとくに聳える塔の天辺にいても、この町の空気はじわじわと登ってくる。
町を見下ろせば、薄靄の向こうに橙色の灯火が滲んでいて、日夜刺々しいまでに活発な町を、曖昧な穏やかさのうちに呑み込んでいるように感じる。事実、地上で湧き上がる様々な生活の音はここまで届かない。
小人の歴史書――否、ラルフという一介の家庭教師が目にした、グレキランスとラガニアにまつわる一連の記憶。それがわたしたちに与えた衝撃は大きい。特にこれまでずっと王都で暮らしてきたシンクレールにとっては、足元の地面が崩れ去るような感覚になったことだろう。かく言うわたしがそんな感覚に苛まれたのだから。
ルドベキアで歴史書という名の懺悔録を紐解いてから一週間。今わたしが『煙宿』の中心に聳える塔――『不夜城』の天辺にいるのも、懺悔録の影響だ。
塔の縁でぼんやりと夜風に当たっていると、風の音に混じって機械音が聴こえた。なんとはなしに振り返ると、やがて昇降機から不健康な痩身の男が出てきた。なにやら色とりどりの団子の乗った大皿を持っている。
「黄昏れてるんですか、お嬢さん」
ニヤニヤと底意地の悪い笑顔を浮かべて、ヨハンはわたしの隣に腰かけた。
「夜風に当たってるだけよ。……そのお団子は?」
「カシミールさんからの贈り物です。夜食に、と」
「そう。あとでお礼を言いに行かなきゃ……」
『不夜城』で料理人をしている男――カシミールのぶっきらぼうな顔と声を想像し、頬がゆるんだ。今日で『不夜城』に滞在して三日になるが、彼には随分と良くしてもらっている。頂上の小屋で寝起きするわたしに、こうしてちょっとした食事を届けてくれるのだ。
皿から桃色の団子をつまみ、口へと運ぶ。
もっちもっち。
落ち着いた甘さが舌をくすぐり、海老の風味が鼻を抜ける。
もっちもっちもっち。
「お嬢さんは本当に美味しそうに食べますね」
ヨハンがこっちを見るものだから、顔を逸らした。食べているところをまじまじと見られるのは恥ずかしい。
「あんまり見ないで。失礼よ」
「失礼しました。もうひとつどうぞ」
「……ありがとう」
ヨハンから手渡された赤い団子を頬張る。
もっちもっち。
ちょっとピリ辛だ。唐辛子が練り込んであるんだろう。甘さ控えめで美味しい。
もっちもっちもっち。
「美味しいですか?」
もちろん美味しい。口のなかがモチモチのときには話しかけないでほしいものだけど、ヨハンの発揮する妙な無神経さを楽しんでいる自分もいるものだから、頷いて見せた。
「夜明けまでにはシンクレールさんも戻ってくるでしょうね」
ヨハンは手をズボンで払い、胸ポケットから四つ折りにした紙片を取り出した。
『共益紙』だ。おおかたそこに、シンクレールの状況が記されているのだろう。
シンクレールとは三日前に『煙宿』で別れた。彼には王都で大事な仕事を任せているのだ。
「もっと時間がかかると思ったけど、良かったわ」
「状況が状況ですからね。あと一か月の猶予があると言っても、そうのんびりはしていられないです」
『黒の血族』がグレキランスに進軍するタイミングは、具体的には決まっていないと聞いている。というより、細かく決められないのだそうだ。
ラガニア地方の血族たちがグレキランスに来るためには『毒色原野』を突破する必要がある。そこを安全に通過出来るのが、およそ一か月後らしい。『毒色原野』にわだかまる毒霧が弱まる時期はおおよそ決まっているようで、それにあわせて進軍するというわけだ。それも天候次第で多少前後してしまうため、機を見て動くよう示し合わせているとのことである。
これらの話はすべてヨハンから聞いたもので、情報源はニコルらしい。鵜呑みにするのはどうかと思うが、彼らの目的にオブライエンの討伐が含まれている以上、不意打ちで王都に大軍が攻めてくる可能性は低いだろう。ある程度は示し合わせて動かないと、オブライエンを討つことは不可能だ。特に討伐隊であるゾラたちの指揮権はこちら側にある。
ゾラの顔が頭に浮かんでから、じわじわと樹海でのことが脳裏をよぎった。
樹海を出てからは、それぞれ別行動となったのだ。目的を共有している者もいればそうじゃない者もいる。行き先がバラバラになるのは仕方のないことだ。
獣人たち――『緋色の月』――とトロールたちはオブライエン討伐の名目で戦争参加が確定し、半馬人は直接の戦闘は避けて偵察に徹してくれる運びとなった。半馬人の住まう高原からは、山脈を隔てて『毒色原野』が広がっている。毒霧に煙る広大な荒野を一望することまでは出来ないものの、半馬人の視力をもってすれば血族の進軍や異変の察知は出来るだろう。
それ以外にも、人魚のメロは単身での協力を約束してくれている。彼女の『地中を自由自在に泳ぐ能力』はどんな場面でも重宝するに違いない。
有翼人は歴史書の一件の前に樹海を去った以上、こちらに協力してくれることはないと思う。小人も不参加。リリーはクラナッハと一緒に樹海に残った。もちろん、一時的にだ。戦争への助力自体は約束してくれている。しばらくは獣人たちとともに暮らすということに決めたわけだけど、最後までヨハンについていくかどうか迷っていた姿が印象的だった。
エーテルワースも協力を申し出てくれたが、樹海には残らなかった。彼にとっての戻るべき場所――湿原に佇む館へと帰還し、家主であるローリーを交えて相談するらしい。
そして竜人は住処である『霊山』で会議をするようで、保留となっている。それも当然の話で、竜人の族長はサフィーロでもアレクでもない。
シャオグイはいつの間にか消えていて、行き先もわたしは知らない。ただ、ヨハンは『きっと大丈夫ですよ』と訳知り顔で言っていたっけ。何度か追及してみたけれど、結局はぐらかされてしまった。あれだけヨハンに執着していたのにあっさりどこかへ行ってしまうあたり、彼が裏でコソコソしているのは間違いない。もし思考を読む魔道具なんてものが発明されたら、真っ先にヨハンに対して使ってやろうと思う。
「この黒いやつはゴマですね。美味です」
隣を見ると、ヨハンは団子をひょいひょいと口に運んでいる。それでも大皿の上はカラフルな団子が山を為していて、一向に減る気配がない。
緑色の団子を頬張り、ヨモギだ、なんて思いながらモチモチと咀嚼する。こんなふうに顎を動かしているからというわけではないと思うけど、頭に浮かんでくるのは別れたみんなのことだ。
『灰銀の太陽』のリーダーとして過酷な日々を送った少年――ハックは、今は半馬人とともに高原の隠れ家にいることだろう。今のところ彼は人間の世界で普通の少年として生きていく気はないらしい。こちらが色々とお節介を申し出る前に、『しばらくはデビスたちと生きていきますです』なんて宣言されてしまった。
ヨハンがこっそり教えてくれたのだが、ハックには親類がなく、両親もすでに亡くなっているらしい。だから、無理にどこかの町で引き取り手を見つけたりするよりは、半馬人の社会で生きていくほうが幸福かもしれないのだ。以前のわたしなら『それでも人間の社会で暮らしたほうがいいんじゃないの?』とモヤモヤしたことだろうが、歴史書の一件があって、すんなりと首肯出来た。姿かたち、あるいは在りかたの差異なんてものはもはや無意味になってしまっている。
わたしに出来ることと言えば、もしも今後ハックが人間の町や村で暮らしたいと思ったときに、最大限の援助をすることくらいだ。そのためにも人間殲滅は阻止しなければならない。
グレキランスのたどった歴史を垣間見て、ハックがなにを考えたかは分からない。どれだけ大人びて見えたとしても、彼は少年だ。穿った見方なのは重々承知だけど、ごく一般的に見れば自分を作り上げている途中の年齢なのだ。ラルフの記憶が暴き立てた強烈な欺瞞は、のちの人生にまで尾を引くことだろう。
だからこそ、団子を飲み込んでついつい呟いてしまった。「ハック、大丈夫かしら」
「大丈夫ですよ。あの子はタフですから」
迷いなく言えるヨハンが羨ましい。そう言い切れる理由がどこにあるんだろう。
「ねえ、ヨハン。ハックとはいつ知り合ったの?」
「お嬢さんが王都で大立ち回りをしている頃じゃないですかね」
大立ち回り……大量の魔物による王都襲撃のことを言ってるのか。確かあのとき、二重歩行者の消失によって倒れたヨハンを魔女の邸に預けて、わたしたちは王都に向かったんだ。それきり、つい最近まで再会することはなかった。
「どういう経緯で知り合ったの?」
「たまたまルーカスのところにいたんですよ」とヨハンは苦々しく言う。
高原に佇む真四角の建造物を思い出す。そこに住む血族がルーカスで、オークションの支配人やら人身売買やら、ふざけた商売ばかりしていた最低の男だ。ヨハンも彼を毛嫌いしている。
けど、ひとつ引っかかる。
「あなたはわたしたちが王都に行ったあとに目覚めたのよね? なんでルーカスのところに行ったの?」
「王都を襲撃していたのがハルピュイアですからね。あのクズが一枚噛んでいると思ったわけです」
なるほど。確かにルーカスはハルピュイアを使役出来る。
「そこでハックと出会ったのね?」
「ええ。『共益紙』も『密会針』も、もともとはルーカスの品です。それらの便利道具を得るために交渉をしている最中に私が乗り込みましてね」
「で、あなたが引っ掻き回したのね?」
「心外ですね。私はルーカスにやり込められそうになっているハックさんを救い出して、ついでに目的の品も得られるように交渉を運んで、ついでにあのクズを叩きのめしただけです」
さらっと言ってるけど、簡単なことではない。ヨハンほどではないけれど、ルーカスだって交渉に長けているのだ。納得ずくではあるけれど、わたしが今つけている首輪――夜会卿が主催しているオークションでの売買権を示す証――だって、彼の交渉の勝利を意味しているだろう。
ん?
わたしがルーカスと交渉したのって、それだけじゃなかったような。
あ。
「あーーーー!!!」
思わず叫んだわたしの隣で、ヨハンは露骨に耳を塞ぐ。「なんですか、いきなり」
「あああ……」
なんでわたしはこんなに大事なことを忘れていたんだろう。馬鹿なの? わたしって自分で思ってる以上に馬鹿なの?
「どうしたんですか、お嬢さん」
「……ヨハン、眼帯持ってない?」
「ないですよ」
「……そうよね」
片手で、左目をきつく抑える。眼球の奥がじんわりと痛い。
「だから、どうしたんです?」
「……わたし、ルーカスと視覚共有してるのよ。片目だけ。それをすっかり忘れてて……だから……」
『煙宿』に来てからもそうだけど、ルドベキアでも何度か湯浴みをした。
なんてことだ。乙女として生きていけない。
……ついでに、歴史書の記憶ももしかしたらルーカスに覗かれているかもしれない。
「ああ、それなら大丈夫ですよ」
「大丈夫……?」
ヨハンは真っ白な団子をつまみ、指先でモチモチともてあそんだ。
「お嬢さんとルーカスが視覚を繋ぐより早く、私とルーカスが視覚を繋いでいます。先ほど言ったハックさんとの交渉の副産物とでも言いましょうか。経緯はさておき、ルーカスが得た視覚情報はすべて私にも一方通行で伝わっているわけです」
それからヨハンはさらりと、今回の樹海での立ち回りに関してはルーカスも仲間として引き込んでいたことや、わたしと視覚を繋ぐよう彼に指示を送っていたことまで暴露した。
「わたしのプライベートな……色々が……あなたたち二人に……」
「ご安心ください。危うい場面になったらルーカス側の視覚を奪取しましたから。つまり奴はお嬢さんのプライベートを見ていません」
朗らかな笑顔でヨハンは言う。
奪取。
それってつまり。
「あなたは見たのね?」
ヨハンは笑顔を硬直させたまま、身じろぎひとつしない。
すぅ、っと気が遠くなっていった。
発言や単語が不明な部分は以下の項目をご参照下さい。
登場済みの魔術に関しては『幕間.「魔術の記憶~王立図書館~」』にて項目ごとに詳述しております。
なお、地図については第四話の最後(133項目)に載せておりますのでそちらも是非。
・『ニコル』→クロエの幼馴染。魔王を討伐したとされる勇者。実は魔王と手を組んでいる。クロエの最終目標はニコルと魔王の討伐
・『毒食の魔女』→窪地の町イフェイオンの守護をする魔術師。『黒の血族』と人間のハーフ。未来を視る力を持つ。本名はカトレア。故人。詳しくは『第八話「毒食の魔女」』『Side Winston.「ハナニラの白」』参照
・『ハック』→マダムに捕らわれていた少年。他種族混合の組織『灰銀の太陽』のリーダー。中性的な顔立ちで、紅と蒼のオッドアイを持つ。詳しくは『438.「『A』の喧騒」』『453.「去る者、残る者」』『623.「わたしは檻を開けただけ」』にて
・『シンクレール』→王立騎士団のナンバー9。クロエが騎士団を去ってからナンバー4に昇格した。氷の魔術師。騎士団内でクロエが唯一友達かもしれないと感じた青年。他人の気付かない些細な点に目の向くタイプ。それゆえに孤立しがち。トリクシィに抵抗した結果、クロエとともに行動することになった。詳しくは『169.「生の実感」』『第九話「王都グレキランス」』にて
・『ローレンス』→ルイーザの幼馴染。水魔術や変装魔術、果ては魔道具の作製など、魔術的な才能に溢れた青年。能天気な性格。愛称はローリー。詳しくは『第二章 第六話「魔女の館~①流星の夜に~」』にて
・『カシミール』→マダムの養子であり、レオンの弟。血の繋がりはない。粗暴な性格だが、料理の話になると打ち解ける。人形術により自身の肉体を強化する技を得意とする。現在は『煙宿』で料理人をしている。詳しくは『第二章 第五話「ミニチュア・ガーデン」』にて
・『メロ』→人魚の族長。小麦色の肌を持ち、軽薄な言葉を使う。口癖は「ウケる」。なにも考えていないように見えて、その実周囲をよく観察して行動している。地面を水面のごとく泳ぐ魔術を使用。詳しくは『745.「円卓、またはサラダボウル」』『746.「笑う人魚」』にて
・『リリー』→高飛車な笑いが特徴的な、『黒の血族』の少女。自称『高貴なる姫君』。『緋色の月』と関係を築くべく、『灰銀の太陽』をつけ狙っていた。無機物を操作する呪術『陽気な浮遊霊』を使用。夜会卿の愛娘を名乗っていたが実は嘘。彼女の本当の父は夜会卿に反旗を翻し、殺されている。夜会卿の手を逃れるために、彼の支配する街から逃げ出した。詳しくは『616.「高貴なる姫君」』『708.「亡き父と、ささやかな復讐」』にて
・『クラナッハ』→灰色の毛を持つ獣人(オオカミ族)。集落には属さず、『黒の血族』であるリリーとともに行動していた。気さくで遠慮がない性格。二度クロエたちを騙しているが、それはリリーを裏切ることが出来なかった結果として行動。可哀想な人の方でいたいと日頃から思っている。詳しくは『613.「饒舌オオカミ」』『650.「病と飢餓と綿雪と」』
・『エーテルワース』→『魔女っ娘ルゥ』に閉じ込められたキツネ顔の男。口調や格好は貴族風だが、人の匂いをすぐに嗅ぐ程度には無遠慮。剣術を得意としており、強烈な居合抜きを使う。冒険家である『命知らずのトム』とともに各地をめぐった過去を持つ。詳しくは『494.「キツネの刃」』『Side. Etelwerth「記憶は火花に映えて」』にて
・『サフィーロ』→蒼い鱗を持つ竜人。『純鱗』。次期族長候補と噂されている人物で、派閥を形成している。残酷な性格をしているが、頭も舌も回る。シンクレールと決闘し、勝利を収めている。詳しくは『第四話「西方霊山~①竜の審判~」』にて
・『アレク』→青みを帯びた緑の鱗を持つ竜人。興奮すると鱗の色が変化する。サフィーロ同様、次期族長候補であり派閥を形成している。詳しくは『685.「開廷」』にて
・『デビス』→剥製となってマダムの邸に捕らわれていた半馬人。現在は剥製化の呪いが解かれ、『灰銀の太陽』の一員としてハックとともに行動している。詳しくは『624.「解呪の対価」』にて
・『オブライエン』→身体の大部分を魔力の籠った機械で補助する男。王都内の魔具および魔術関連の統括機関『魔具制御局』の局長。自分の身体を作り出した職人を探しているが、真意は不明。茶目っ気のある紳士。騎士団ナンバー1、紫電のザムザを使って『毒食の魔女』を死に至らしめたとされる。全身が液体魔具『シルバームーン』で構築された不死者。かつてのグラキランス領主の息子であり、ラガニアの人々を魔物・他種族・血族に変異させ、実質的に滅亡させた張本人。詳しくは『345.「機械仕掛けの紳士」』『360.「彼だけの目的地」』『間章「亡国懺悔録」』にて
・『ルーカス』→『魔女の湿原』の北に広がる高原に住む『黒の血族』。銀色の梟面を身に着けた小太りの男。父である『巌窟王』と一緒に暮らしている。同じ血族であるマダムに攫った人間を提供していた。血族のみ参加出来るオークションで司会をしていたが、クビになった過去を持つ。クロエをオークションに出品する優先権を持っている。詳しくは『472.「ほんの少し先に」』『609.「垂涎の商品」』にて
・『夜会卿』→名はヴラド。『黒の血族』のひとり。王都の書物でも語られるほど名が知られている。魔王の分家の当主。キュラスの先にある平地『中立地帯』を越えた先に彼の拠点が存在する。極端な純血主義であり、自分に価値を提供出来ない混血や他種族は家畜同様に見なしているらしい。詳しくは『幕間.「魔王の城~ダンスフロア~」』『90.「黒の血族」』『幕間.「魔王の城~尖塔~」』『565.「愛の狂妄」』にて
・『シャオグイ』→生息圏、風習、規模も不明な他種族である、オーガのひとり。千夜王国の主。『緋色の月』に所属しながら『灰銀の太陽』への協力を誓った。一時期シャルという偽名を使っていた。詳しくは『750.「夜闇に浮かぶ白い肌」』にて
・『ゾラ』→別名、『獣化のゾラ』。勇者一行のひとりであり、『緋色の月』のリーダー。獣人(タテガミ族)の長。常に暴力的な雰囲気を醸している。詳しくは『287.「半分の血」』『336.「旅路の果てに」』『702.「緋色のリーダー」』『790.「獣の王」』にて
・『ラルフ』→かつてオブライエンの家庭教師をした男。ラガニアで起きた悲劇の一部始終を『追体験可能な懺悔録』というかたちで遺した。『気化アルテゴ』の影響で小人となり、『岩蜘蛛の巣』にコミュニティを形成するに至った。詳しくは『間章「亡国懺悔録」』にて
・『視覚共有』→その名の通り、視覚を共有する魔術。詳しくは『9.「視覚共有」』にて
・『二重歩行者』→ヨハンの得意とする分身の魔術。影に入り込んで移動することが可能。詳しくは『12.「二重歩行者」』にて
・『ハルピュイア』→半人半鳥の魔物。狡猾。詳しくは『43.「無感情の面影」』にて
・『黒の血族』→魔物の祖と言われる一族。人間と比較して長命。もともとは王都の敵国であったラガニアの人々のごく一部が、オブライエンの生み出した生物兵器『気化アルテゴ』のよって変異した姿。詳しくは『90.「黒の血族」』『間章「亡国懺悔録」』にて
・『小人』→人間とは別の存在。背が低く、ずんぐりとした体形が特徴。その性質は謎に包まれているものの、独自の文化を持つと語られている。特に小人の綴った『小人文字』はその筆頭。『岩蜘蛛の巣』の小人たちは、人間を嫌っている様子を見せた。詳しくは『第七話「岩蜘蛛の巣」』にて
・『半馬人』→上半身が人、下半身が馬の種族。山々を転々として暮らしている。ほかの種族同様、人間を忌避しているが『命知らずのトム』だけは例外で、『半馬人の友』とまで呼ばれている。察知能力に長け、人間に出会う前に逃げることがほとんど。生まれ変わりを信仰しており、気高き死は清い肉体へ転生するとされている。逆に生への執着は魂を穢す行いとして忌避される。詳しくは『436.「邸の半馬人」』『620.「半馬人の友」』にて
・『トロール』→よく魔物に間違えられる、ずんぐりした巨体と黄緑色の肌が特徴的な種族。知能は低く暴力的で忘れっぽく、さらには異臭を放っている。単純ゆえ、情に厚い。『灰銀の太陽』に協力。詳しくは『741.「夜間飛行」』にて
・『人魚』→女性のみの他種族。下半身が魚。可憐さとは裏腹に勝手気ままな種族とされている。『灰銀の太陽』に協力。詳しくは『741.「夜間飛行」』にて
・『有翼人』→純白の翼を持つ他種族。別名、恋する天使の翼。種族は男性のみで、性愛を共有財産とする価値観を持つ。年中裸で過ごしている。王都の遥か北西に存在する塔『エデン』で暮らしている。『灰銀の太陽』に協力。詳しくは『742.「恋する天使の[検閲削除]」』にて
・『竜人』→全身を鱗に覆われた種族。蛇に似た目と、鋭い爪を持つ。王都の遥か西にある山脈に生息している。弱者には決して従わない。鱗の色で階級が二分されており、『純鱗』は気高く、『半鱗』は賤しい存在とされている。詳しくは『626.「血族と獣人」』『幕間.「青年魔術師の日記」』にて
・『灰銀の太陽』→半馬人を中心にして形成された、他種族混合の組織。『緋色の月』に対抗するべく戦力を増やしている。詳しくは『第三章 第一話「灰銀の太陽」』にて
・『緋色の月』→獣人を中心として形成された組織。人間を滅ぼし、血族と他種族だけになった世界で確固たる地位を築くことが目的とされている。暴力的な手段を厭わず、各種族を取り込んでいる。詳しくは『610.「緋色と灰銀」』『625.「灰銀の黎明」』『626.「血族と獣人」』にて
・『魔道具』→魔術を施した道具。魔術師であっても使用出来る。永久魔力灯などがそれにあたる。詳しくは『118.「恋は盲目」』にて
・『共益紙』→書かれた内容を共有する紙片。詳しくは『625.「灰銀の黎明」』にて
・『密会針』→球状の魔道具。手のひらサイズ。内部にいくつもの針があり、それぞれが別の『密会針』の方角を示している。『灰銀の太陽』の主要メンバーがそれぞれ所持している。詳しくは『610.「緋色と灰銀」』にて
・『煙宿』→王都の北に広がる湿原の一角に存在する宿場町。ならず者の理想郷とされ、出自を問わず暮らすことが出来る。要人や富裕層の住む『不夜城』と、一般的なならず者の住む『ほろ酔い桟橋』に区分されている
・『不夜城』→『煙宿』の中心にそびえる塔のこと。富裕層や要人が住まう。詳しくは『第二章 第四話「煙宿~①ほろ酔い桟橋~」』にて
・『霊山』→竜人の住処。王都の遥か西方にある雪深い山脈の一角に存在する。詳しくは『第四話「西方霊山~①竜の審判~」』にて
・『毒色原野』→人も血族も住まない荒廃した土地。グレキランスの人間は『中立地帯』と呼んでいる。夜会卿の統べる都市とキュラスとの中間に広がった荒野を指す。常に濃い靄に覆われており、毒霧が発生しているとの噂がある。詳しくは『616.「高貴なる姫君」』にて
・『ルドベキア』→獣人の集落のひとつ。もっとも規模が大きい。タテガミ族という種が暮らしている。『緋色の月』はルドベキアの獣人が中心となって組織している。詳しくは『608.「情報には対価を」』『786.「中央集落ルドベキア」』にて
・『ラガニア』→かつてはグレキランス同様に栄えていた地域、と思われている。実際はグレキランスを領地として治めていた一大国家。オブライエンの仕業により、今は魔物の跋扈する土地と化している。魔王の城は元々ラガニアの王城だった。初出は『幕間.「魔王の城~書斎~」』。詳しくは『間章「亡国懺悔録」』より
・『グレキランス』→通称『王都』。周囲を壁に囲まれた都。詳しくは『第九話「王都グレキランス」』にて
・『王都』→グレキランスのこと。周囲を壁に囲まれた都。詳しくは『第九話「王都グレキランス」』にて




