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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第三章 幼馴染の少女

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神代翡翠(温泉デートの始まり)

「一泊二日の温泉旅行!?」


 ある日の放課後、家にやってきた翡翠がデートの予定決まったからと伝えてきたのは、そんな突拍子もない話だった。

 以前、中学の卒業旅行で行った翡翠の親戚が経営する温泉旅館にもう一度、今度は二人で行くというのだ。

 都合の良い日を全部教えて欲しいと言われて全部教えたのだけれど、一泊二日の予定を組まれるとは想定外だった。


「流石に女の子とふたりきりで宿泊旅行なんて無理だよ……」


 いくら幼馴染とはいえ翡翠と二人だけで宿泊旅行というのはいろいろと無茶がある。


「あら? でも今は女の子同士じゃない」


「それはそうだけど、うちの両親はそうは思わないんじゃないかな……」


 翡翠の父親は女の子同士ということで許可してくれるかもしれないが、うちの両親は俺が男だった事を知っているのだ。年頃の娘さんと二人で旅行して何かあったらと考えるのが普通だろう。


「大丈夫よ。先日来たときにおばさんの許可はもう貰ってるわ。優奈にも一応貰ってある」


「そ、そうなんだ……」


 って、うちの親は普通じゃなかった!?

 ……俺の考え過ぎなのか? いや、確かに女同士だから間違いは起こりようも無いのだけれど。

 それより、いつの間にそんな根回しをしてたんだ翡翠は?


「で、でも……やっぱり無理だよ。泊まりがけで旅行に行くにはお金が足りないんだ」


 バイトをしていない俺の収入は親から貰う小遣いだけだ。今使えるお金では泊まりがけの旅行に足りるとは思えなかった。


「心配ないわ。旅行したいのは私の我儘だから、費用は全部私に出させて」


「そういう訳にはいかないよ。デートに付き合うのは私の約束だし。それに私は元男だから。女の子にデート代を払って貰うっていうのは情けなさすぎるよ」


 俺がどう答えるかは予想済みだったようで、既に翡翠はそれに対する解答も用意していた。


「そう言うと思っていたわ。でも、安心して。おばさんに相談したときにアリスの貯蓄口座の使用許可も合わせて貰っているから」


 俺には普段使っている口座の他にお年玉等の臨時収入を貯めている口座がある。今はアリス名義に変わっているが金額はそのまま移行されていた。

 この口座のお金は母さんの許可が無いと使うことが許されていないのだけれど、翡翠は既にその了承を得ているらしい。根回しの良さに呆れるくらいだ。


「それで、他に問題は無いかしら?」


「う、うん……」


「それじゃあ、これで話を進めるわね。楽しみにしてるわ」


 本当に、問題なかったのだろうか。


 俺は何だか取り返しの付かない事を了承してしまったような気がした。

 ただのデートのはずなんだけど……


   ※ ※ ※


 そして、旅行当日。俺は駅前で翡翠を待っていた。

 隣には何故か優奈が一緒だ。見送りをすると言って聞かなかったのだ。

 優奈は文化祭の後に悪くしていた機嫌は直ったものの、今でも複雑そうな表情で俺を見ている事があった。どうしたのかと聞いても、理由は教えてくれなかった。


 翡翠に何か思うところがあるのだろうか? だけど部活でもそんな様子は見られなかったし……


 そんな事を考えてると、優奈は意を決したように向き直って俺に告げる。


「言いたいことはいろいろあるけど、アリシアと翡翠姉、それからアリスが決めることだからあたしは何も言わないわ」


 やっぱり何があるかは教えてはくれないようだったが、優奈の中では何か吹っ切れた様子だった。


「あたしはアリスのお姉ちゃんだから、どんな選択をしてもアリスの味方だから覚えておいて」


「……わかった。ありがとう優奈」


 理由はわからないけど、優奈は真剣な様子だったので素直に感謝の気持ちを伝える。


「アリシアも……あたしはあなたの事をもうひとりの妹だって思ってるから。だから、何かあったら相談してね」


『ユウナ……ありがとうございます』


 それだけ言うと優奈はすっきりした表情になって俺達に微笑んだ。


「……ちょうど、来たみたいね」


 言われた方向を見ると翡翠がちょうど俺達のところにやってくるところだった。

 スタイリッシュなパンツ姿がすらっとした印象で、ウェーブのあるポニーテールと相まって何というか格好いい感じだ。


「おはよう、アリス。それから優奈?」


「おはよう、翡翠姉。あたしは見送りだから気にしないで」


「そう、びっくりしたわ。中学の卒業旅行のことを思い出しちゃった」


「あたしが悪かったから、あのときのことはもう言わないでよ……」


 優奈は俺達の卒業旅行に無理矢理付いてきた前科がある。翡翠はそのときの事を言っていた。


「それじゃあ、あたしはもう行くから。()()()をよろしくね?」


「……ええ。わかったわ」


 二人は笑顔で挨拶を交わすと、優奈はその場を立ち去った。

 家の方向じゃないので、ついでに街中をぶらついていくつもりだろうか。


 優奈を見送って振り返る翡翠。ポニーテールが軌跡を描いてたなびいた。


「それじゃあ、アリス。デートを始めましょう」

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