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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第三章 幼馴染の少女

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文化祭初日(大会その2)

 ……なんであんな事を言ってしまったんだろう。


 女子トイレの個室の中で文字通り頭を冷やした俺は今更自分の言動を後悔していた。

 野郎の頬にキスする俺の姿を想像して、気持ち悪さが込み上げてくる。

 俺は両手で顔を隠して、上半身を前に倒して突っ伏せた。


『イクトさん……』


『アリシアごめん、俺どうかしてたよ……』


『いえ、わたしはいいんですけど、イクトさんは大丈夫ですか?』


『恥ずかしくて穴があったら入りたいよ。ちやほやされて舞い上がっちゃって……』


 今までそういった経験なんてなかったから、つい調子に乗ってしまった感は否めない。自己嫌悪で気分が沈む。


『ですけど、大事だいじになる前にその事に気づけてよかったかもしれませんよ?』


 と、アリシアは俺をフォローする。


 確かにこのままだったら、将来合コン等で褒められてほいほいとお持ち帰りされたなんてことも考えられる。

 そう考えたなら、被害が頬へのキスで抑えられたのは不幸中の幸いとも言える……かもしれない。

 今回の事は自分への戒めということで割り切る事にしよう。


『……うん、そうだね。次から気をつけることにするよ!』


『それがいいですよ!』


 俺が個室から出ると、優奈が手洗い場で俺を待っていた。


「……お姉ちゃん、どうしたの?」


「アリス、あなた自分のデッキ持って来てるんでしょ? それを私に貸しなさい。あたしも大会に参加することにしたから」


 優奈はぶっきらぼうにそう言った。

 優奈の意図は明白だ。彼女が優勝すれば俺の失言の意味はなくなる。俺と蒼汰は数少ない経験者の主催者側のスタッフなので、プレイヤーとして参加する事は出来ない。だから、かわりに出場してくれるということだろう。


「ありがとう、お姉ちゃん」


「勝てるかどうかなんてわからないからね? あんまり期待しないでよ」


 ここ最近優奈は学校や家で俺に付き合って対戦相手をしてくれている。優奈はゲームにおける基本的なやり取りは出来ていて、戦術的な駆け引きのセンスもあるので俺がやり込められる事も多い。上位入賞の可能性もゼロでは無いと思う。

 だけど、それよりも重視してほしいことがある。


「今回のは私の責任だから、お姉ちゃんは気にせずゲームを楽しんでね? お姉ちゃんにとって初めての大会なんだし!」


「……ほんと、相変わらずカードゲーム馬鹿なのね」


   ※ ※ ※


 結局合計118名で大会は始まった。負けたら即終了の勝ち抜き戦で7回戦。

 外部開放の終わる5時までに終わらなかったら残っているプレイヤーで近所のカードゲームショップに移動して続きを行うことになる。

 これは、想定していたよりも人数が多くなり、大会時間が長くなりそうな為に取られた念のための措置で、これはショップのオーナーが提案してくれた。

 この人はショップをバイトに任せてネットで話題になっている文化祭のトーナメントを見学に来たらしいのだが、人の多さに困惑している俺達を見かねてトーナメント進行の手伝いを申し出てくれたのだった。

 ショップに通っていた以前の俺や蒼汰とは顔見知りで、主の使いでショップに行く執事の安藤さんとも面識があるようだった。

 オーナーさんは急遽追加で手配した方の教室側の仕切りをやってくれていて、大会が進んで敗北して手が空いたプレイヤーに対して未開封パックを使った8人トーナメントを随時開催してくれる手筈になっていた。

 さらに、未経験者の学生に対して初心者向け講習会も開催してくれるようで、正直頭が上がらない。そのあたりの配慮は本来ウィソ部の方でしておくべきことだったと思う。


「プレイヤーを増やすのはうちの利益になる事だから、気にしないでいいよ。むしろ宣伝する絶好の機会を貰えてありがたいよ」


 そう言ってくれるオーナーさんは少し恰幅の良いナイスガイだ。


「本日はたくさんのご来場ありがとうございます。本日の大会を主催させて頂いております、平山高校ウィソ部副部長をしております如月アリスと申します」


 前説は2つの教室で俺と蒼汰がそれぞれでおこなった。話す内容や注意事項は事前に安藤さんが蒼汰やオーナーさんに確認を取り一枚紙に纏めてくれていた。橋本家執事有能すぎる。


 さっきと同じような事を聞かれたりしたが、開き直ってキスの事にも触れて盛り上げておいた。祭りは楽しむものだからね!


 前説が終わり、俺はスマホを取り出して時刻を確認する。ゲーム開始前の僅かな静寂の時間。気持ちの良い緊張感が場を支配する。

 そして、事前に打ち合せた時間が表示されたのを確認して俺は宣言する。


「それでは、第一回戦制限時間40分、開始してください!」


 会場の各所から、よろしくお願いしますという挨拶が響き渡った。

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