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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第二章 アリスとしての日常

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プールの授業(その2)

「ほら行くわよ」


 俺は、優奈に引きずられるようにして女子更衣室へとやってきた。室内からは女生徒のはしゃいだ声が聞こえて来ていて、すでに引き返したくなっていた。

 逡巡する俺を気にすることなく優奈はドアを開けて俺の手を引いて進んでいく。


「……お、お邪魔します」


 俺も優奈の後に続いて女子更衣室へと立ち入った。

 更衣室の中の作りは簡素なものだった。作り付けてあるものはロッカーと数人並びで使える洗面台くらいで、他は長椅子くらいしか置いていない。日当たりの悪いジメジメとした部屋だった。

 そして、そのやや狭い空間は女生徒でごった返していて、女子の甘いような匂いでむせかえるような状態になっていた。


 更衣室には裸の子は居なかった。それは良く考えたら当たり前のことだった。男子の着替えでさえ全裸になるのは極少数のお調子者くらいだったのだ。

 着替え終わって水着姿の子、制服をはだけさせている子、巻きタオルに包まってもぞもぞと着替えてる子、下半身はスカートで上半身はブラジャーだけの状態で友達と会話している子……はだけた制服から覗く下着や肌色に、グッとくるものを感じたりはするけれど、これくらいの刺激ならなんとか乗り切れそうだ。


『……ほら、いつまでも見てないで、早く着替えちゃいなさい』


 優奈が念話で俺の着替えを促す。見れば優奈は既に制服のボタンを外していて水着を手に持っていた。

 慌てて俺も水泳バッグから水着を引っ張りだして、目の前に掲げてみる。それは一般的なワンピースタイプのスクール水着だった。


 ……これ、どうやって着ればいいんだ?


 まず、足を通さないといけないのはわかる。だけど足を通すにはパンツを脱がないといけない訳で、上の紐を通すことを考えると全裸にならないとダメなのか?

 でも、誰も裸になってる人なんて居ない。


 ……あ、とりあえず下半身だけ脱げば良いのか。そうすれば、シャツで隠れるから問題無いな。


 俺はブレザーとスカートを順番に脱いで、それぞれロッカーに畳んで入れる。そして、股間が見えないように片手でブラウスを押さえながら、もう一方の手でショーツを下ろしていく。その後、膝下まで降りた下着を片足づつ抜き取っていく。


 ……これでよし。


 なんだか周囲の視線が自分に集まってる気がする。

 畳もうと思って下着を手に持った状態で視線に気づき、俺はぎょっとして固まる。


 ……な、なんだろう? 俺は様子を伺うように小首を傾げた。


 ……ざわっ!


 周囲の空気が波立ったような気がして、俺は体をびくつかせた。


 耳をすませてみると小声で、「……何かいけないものに目覚めそう」「は、犯罪的だわ……」とか言った声が聞こえてくる。


「……アリス、あなたやけに扇情的な格好をしているのね」


 そう話しかけて来たのは文佳だった。

 彼女は既に水着に着替え終わっていた。トレードマークのポニーテールは水泳帽に仕舞われていて、随分と受ける印象が違う。自他共に認める本の虫というのにそのスレンダーな肉体はまるで水泳選手のように引き締まっていて格好いい。


「私はただ普通に着替えてるだけだと思うけど……?」


「水着を履くときは、普通はスカートは穿いたまま下着を脱いで履くものよ?」


 えっ、そうなの……?


「わ、私は制服が人より大きいからね! ブラウスだけでも平気なんだよ」


「……前は隠せてたみたいけど、可愛いおしりがちらちらと見えてたわね」


「なっ……!? な、なんで、そんなに見てるんだよぉ……」


「だって、あなた目立つもの……みんな見てたわよ?」


 俺は涙目で周囲を見回す。周りの女子たちは不自然に視線を逸らして、いそいそと自分の着替えを進めはじめた。


『あなたが見られてどうすんのよ……』


 手をとめずに着替えながら様子を見ていた優奈が、呆れたように俺に念話を送ってきた。


 ……あー、もうっ!

 優奈だって教えてくれてもいいじゃないかっ!

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