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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第二章 アリスとしての日常

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橋本涼花(その1)

 翌日、登校した俺の机に純と文佳がやってきた。


「アリス、落ち着いて聞いて欲しいのだけど……」


 重々しく話を始める文佳。二人共真剣だけれどいったい何だろう……?


「この前の神代蒼汰先輩なんだけど、どうやら付き合っている人が居るらしいの」


 ……ああ、そのことか。

 以前優奈からそういった話を聞いたことがあるな。

 確か俺に告白されたと言って気を惹いただとかだっけ。


「……知ってるよ?」


 二人は私の態度に衝撃を受けたみたいだった。


「この娘ったら、なんて健気なのかしら。想い人が他の人のことを好きでも構わず想い続けてるだなんて……」


「ボクはアリスのこと応援するからね!」


「だから、私は蒼汰のこと別になんとも思ってないって……」


 そんなことを話してると横に座っている優奈が話に加わってくる。


「でも、昨日会いに行ったんでしょ? どうだった?」


「蒼汰と会ったのはたまたまで……」


「蒼兄じゃなくて、相手の方、橋本先輩だっけ」


 ……ん? 涼花?


「呆れた。まさか気がついて無かったの? 前にショッピングモールで話したじゃない。蒼兄と半ば公認カップルになってるって噂の橋本涼花って人のこと」


「……あー」


 そういうことか。頭の中でパズルのピースが繋がった。

 俺に告白されたという女生徒、蒼汰と二人しかいない同好会、昨日俺が幾人の関係者だと知った時の態度、それから今日の放課後したいという話。


「……まさか、本当に気づいていなかった訳? 昨日二人の愛の巣とか言われてる同好会室にまで乗り込んだんでしょ?」


 優奈の言葉に「アリスってば積極的」とか「見かけによらず、ぐいぐい行く男らしいところも素敵だわ」とか何か勘違いした感想を漏らしている友人二人がいるが気にしない。


「今日の放課後、二人で話をするようになってる。そうか、涼花先輩が……」


 だけど、涼花はそんな風に狡猾な娘には見えなかったんだけどな。

 俺の目が節穴っていうことだろうか。

 ……まあいいか。本人に聞くのが一番早い。


「……大丈夫? あたしもついて行こうか?」


「気持ちは嬉しいけど、これは私と彼女の問題だから。もし、ついてきたりしたら、本気で怒るからね……そこの二人も」


 俺がそう釘を刺すと、三人は「はぁい」と了承の意を告げた。


   ※ ※ ※


 放課後、俺は『Wizard's Soil同好会』のある旧校舎を訪れていた。橋本涼花、彼女との約束を果たす為である。

 会室の入り口のドアをノックすると、「よろしくてよ」と返事がある。


「お邪魔します」


 と、一言告げて俺はその部屋に立ち入った。


 室内入るととたんに紅茶の香りが漂ってきた。

 室内には紅茶の入ったティーカップを手にしたお嬢様が静かに佇んでいる。昨日蒼汰とゲームした学習机には白いテーブルクロスが掛けられていて、その上にはティーセットが一式置かれていた。

 彼女が紅茶を傾ける姿はとても様になっていた。


「アリスさん、どうぞそちらに」


 けれど、こうした準備を一人でしている様子を想像するとなんだか微笑ましく思う。良くみると脇のテーブルに電気ケトルが置いてある。


「……なにか可笑しくて?」


 いけない、つい顔に出てたみたいだ。

 俺は涼花の正面の席についた。


「本日はお越しいただきありがとうございますわ」


 主自らティーポットを手に取りお茶を注いでティーカップを俺の正面に置く。


「ありがとう」


 俺は礼を言ってから、カップを手に取り口につける。

 まだ熱かったので唇を湿らせるだけ、心地よい薫りが鼻腔をくすぐった。


「ウィソの話をする前に、わたくしは貴女に謝らなくてはならないことがありますの」


 彼女はそう切り出した。


「貴女はわたくしと如月幾人さんに関する噂のことはご存知ですか?」


「……うん、知ってるよ」


 幾人が彼女に告白をして振られたのが原因で自殺したという噂。

 それについての謝罪ということは、彼女が告白を断ったことで幾人が死ぬことになった、とでも謝罪を受けることになるのだろうか。

 ……そんな謝罪を俺はどんな顔で受けたらいいんだろう?


 その謝罪を受けてしまったら俺は涼花のことをもう友達として見られなくなるだろう。

 残念なような悲しいような気持ちが込み上げてくる。

 どうやら、俺はどこか変に抜けたところのあるこのお嬢様を存外気に入っていたみたいだ。


「幾人さんがわたくしに告白したと言う噂……これは、わたくしがついてしまった嘘が原因なのです……」


 ん……?


 涼花は俺に偽りの謝罪をするのでは無く、嘘をついていたことについて謝罪した。


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