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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第二章 アリスとしての日常

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図書室

 始業式が終わると再度のホームルームがあり、それで今日の行事は終了して放課後となる。

 俺は今、アリシアとの約束を果たすために図書室に来ていた。


『これが学校の図書室! 本が……本が一杯です……!』


 図書室に来てからのアリシアはずっと上機嫌で、俺は胸をなでおろした。

 この調子だと今後も度々利用させてもらうことになりそうだ。

 困ったときの図書室頼りというやつだな……頼りにしてるぜ、図書室あいぼう


 俺の隣には今日友達になった書店員のお姉さんこと文佳が一緒だった。俺が放課後図書室に行くと言ったら、目を輝かせて私が案内すると立候補してくれたのだ。

 なお、一緒に来ていた優奈は、図書室に着いて早々に別れて雑誌コーナーでファッション誌を読んでいる。

 今日一緒に友達になった純も来たがっていたが、部活があるから行けないと残念がっていた。


「それで、アリスはどんな本を探しているの?」


「特に考えている訳じゃないんだけど……」


 そもそも本を探しているのはアリシアであって俺ではない。俺は漫画やラノベはそこそこ読むけれど、そこまで読書家という程では無い。

 幾人のときは入学して2ヶ月も経っていなかったとはいえ入学の際のオリエンテーション以来図書室には来たことが無かった。


『アリシアはどんな本が読みたい?』


『まずは、どんな本があるのかここを一巡りしてみたいです』


「とりあえず、一通り図書室を見てみようと思うよ」


「それがいいわね。じゃあそこの案内図を参考にすると良いわ」


 文佳が指を指してくれた先にはどこにどのジャンルの蔵書があるのかの配置図と、その分類方法が表示された案内図があった。

 俺はその正面に移動して案内の全体を確認する。それは、どこの図書室にでもあるような見慣れたものだったがアリシアの目には新鮮だったようだ。


『なんて素晴らしいのでしょう! このように大量の本が厳密にジャンル分けされて整然と分類されているなんて……』


 ほぅ、と溜息の声が上がる。


「……すごい?」


 案内図の前で佇む俺に文佳は解説する。


「これは日本十進分類法といって日本全国の図書館で採用されている分類方法ね。そこに目が行くなんて、やっぱりアリスは私の見込んだ通り素質があるわね」


 何の素質なんだろう? 俺は曖昧に微笑んで返しておいた。


「ここの蔵書数はなかなかのものよ。司書の先生がしっかりしているから、蔵書の管理も行き届いているわ……素敵でしょう?」


『はいっ、とってもとっても素敵だと思います! わたしここに住みたいです!』


「……そうだね」


 俺は心のなかのアリシアのテンションに苦笑しながら、文佳に無難に返事しておく。


『住んでいいんですか!?』


『いや、住まないから』


「それじゃあ、好きに見てくるといいわ。私は新刊か貸出カウンターに居るから、借りたい本が決まったら声を掛けて。一度に借りれるのは3冊までね」


 そう言って文佳は新刊コーナーに歩いて行った。

 図書室で一緒に行動しようとしないのは流石本好きといったところだろうか。本を選ぶときは誰にも邪魔されずじっくり選びたいもんな。

 ……単に自分が読みたい本を探したいだけかもしれないけど。


『……それじゃあ、どうしようか。見てみたいジャンルとかある?』


『まずは、一通りタイトルに目を通したいです』


 そうして俺は図書室を歩いて回る。アリシアはどの本も手にとって読みたいといった感じでうずうずしていたが、まずはタイトルを憶えることに集中しているみたいで、我慢しているのがありありと感じ取れる。

 なお、タイトルを憶えるというのはアリシアにとっては完全に記憶するという意味だ。

 彼女の記憶力は尋常ではなく、必要であれば本を流し読みするだけで全ての内容を記憶出来た。転入試験に関係ない日本史や世界史や理科の教科書を読んだときは、俺がパラパラと教科書を捲って内容を記憶してもらい、後で思い出しながら読んでもらうことで勉強時間を取られずにアリシアの読書欲に応えていたりもした。


 30分くらい掛けて一通り図書室を巡った後、彼女が指定した3冊を取りに行く。


 1冊目は蒸気機関についの解説本。写真やイラストが多めで初歩的な内容の本のようだった。

 2冊目は法律や政治について書かれた本で、政治体制の概要と法制度の確立に至るまで人類が辿ってきた歴史が解説されている……とのことなんだけど、文章びっしりの本で頭に内容が入ってこない。

 3冊目に選んだのは俺がアリシアと初めて一緒に見たアニメの原作書籍化本の1巻だった。

 ……高校の図書室ってラノベも置いてるんだね。ちょっとエッチな描写とか挿絵とかあったりするけど大丈夫なのかな? と思ったりもしたが、よく考えたら普通の小説でも結構濡れ場とかあったりするから多分気にしすぎなのだろう。


 アリシアが選んだ3冊の本を持って俺は入り口に戻る。

 文佳は入り口の貸出カウンターのところにいて、図書委員の女生徒と雑談をしているみたいだった。感じからして常連なのだろう。俺に気づいた文佳は小さく手を振った。


「アリス、どうだった?」


『とっても、とっても充実したひとときでした!』


「……うん、まあ、楽しかったよ」


「選んだ本と学生証を受付に渡してね」


 そこまで言われて気づいた。

 そういえば貸出に学生証が必要になるんだった。


「……あ、どうしよう。学生証まだ出来ていなかった」


「ごめんなさい、学生証のバーコードを読み取らないと貸出は出来ないわ」


 係の生徒はそう言って申し訳無さそうな顔をする。


「迂闊だったわ……どうしよう、私の学生証使うのは規則違反だし」


 規則なら仕方ないな。

 こうなったら図書室で全部記憶するしか無いか……?


「その本、あたしが借りるから」


 そう言って学生証がカウンターに置かれる。


「姉のあたしが借りて家にあるのを妹が読む分は違反じゃないでしょ?」


『ユウナ……!』


 俺のピンチに颯爽と現れたのは優奈だった。

 おねえちゃんかっこいい。


「どうせ、あたしは本なんて借りることないと思うし!」


 そんなこと自信を持って言い切るなよ。

 おねえちゃん台無し……


 そんなすったもんだがあったが、なんとか無事本を借りることができた。

 アリシアは上機嫌で、念話で優奈に何度も礼を言っていた。


「文佳もありがとう。付きあって貰って……私が選んでる間退屈だったんじゃない?」


「私は暇があったら図書室に居たい人だから全然平気よ……学生証のこと気が付かずにごめんなさいね」


「気にしないで。優奈が居てくれたから問題無かったし」


「ふっふーん。ちなみにあたしは退屈だったんだ! この後はご飯食べてスイーツ探求ツアーをするんでしょ? 早く行こうよー。文佳っちも一緒に行くー?」


「私、お邪魔じゃないかしら……」


「全然ウェルカムだよっ!」


「だったら、ご一緒させて貰うわ。純の部活もそろそろ終わると思うから誘ってもいい?」


「勿論!」


 文佳が携帯のメッセージアプリでやり取りすると純の都合も問題無いようで、俺達4人は放課後の街に遊びに行くことになったのだった。


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