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異世界から戻った俺は銀髪巫女になっていた  作者: 瀬戸こうへい
第五章 Alicemagic

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お休みの日

 わたしのナマエはありしあ


 だいすきなママといっしょでマイニチがしあわせ!


 ……だけど、ときどきシンパイになるの


 わたしはタイセツなことを、わすれてしまってるんじゃないかって


 そのことをおもうと、とってもおムネがきゅーってなって、くるしくなるの


 でも、そんなときは、ママにダッコしてもらえばだいじょうぶ


 そしたら、きゅーっとしたきもちなんて、ババーンってどっかいっちゃうんだ!


 ママはすごい!


「ママはきっと、しあわせの魔法がつかえるんだね」


 わたしがそういったら、ママはわたしのあたまをナデてほほえむの


「だったら、アリシアも私を笑顔にしてくれる魔法使いね」


 うん! わたしもステキなまほうつかいになる!


 ……えへへ、ママだいすき


 ママといっしょなら、コワイものなんてなにもないよ


 だから、ずっと、ずーっといっしょ……ヤクソクだよ、ママ!


   ※ ※ ※


 ――――


 俺は目覚し時計の鳴る音で目を覚ます。

 どこか普段と異なる違和感を感じて、俺はその違和感の原因を思い出した。


「……ああ、今日はおやすみの日だったか」


 返事は無い。

 当たり前だ、これはただの独り言なんだから。


 今日、アリシアは居ない。


 バイトで慌ただしかった正月を終えて一息ついた昨日、アリシアから受けた相談が事の始まりだった。


『イクトさん、わたし明日はお休みをいただきたいと思います』


「お休み?」


『今は夜にだけ精神同調を切っていますが、これからはそれに加えて週に一回くらい一日中切る日を作ろうと思うのです』


「……どうしてそんなことを?」


『週に一日くらいはお互いのプライベートな時間もあってもいいかなと思いまして。最近読みたい本も溜まってきてますし』


 アリシアは俺が流し読みした本を完全に記憶しておいて、同調を切ったときに記憶から呼び起こして読んでいると聞いたことがある。

 特に拒否する理由もなかったので、俺はアリシアの提案を了承したのだった。


 そんな訳で今日の俺は一人だった。

 一日中アリシアと一緒じゃない日を過ごすのはこの世界に戻ってきてから初めてなので、なんとなく気の抜けた感じになる。


「おはよう、優奈」


「おはよう……アリス」


 俺はリビングに降りて優奈と朝の挨拶を交わす。

 だけど、いつもならここに加わるはずのアリシアの元気な念話こえがなくて、お互い少しぎこちない間ができてしまった。


「アリシアが居ないとなんだか調子狂うね」


 いつの間にかアリシアは我が家にとって居るのが当たり前の存在になっていたらしい。


「すっかり、アリシアは家族になってたんだなぁ……」


 そう思うと寂しい中にも嬉しさが込み上げてきた。


「……そうね」


 だけど、優奈はそんな俺を見てよけいに寂しくなってしまったようで表情が暗い。


「大丈夫だよ、明日になれば帰ってくるんだから」


 一日居ないだけで大袈裟だなぁ……

 だけど、それだけ優奈がアリシアの事を大切に思ってくれているということだから嬉しく思う。


 俺はダイニングテーブルに座って母さんが用意してくれた朝ご飯を食べる。

 これも普段はアリシアと優奈のおしゃべりを聞きながら食べる事が常だったので、とても静かに感じた。


「アリスは今日はどうするの? あたしは街中に買い物に行くつもりだけど一緒に行く?」


「ええと、特に考えてはなかったんだけど、買い物はちょっと微妙かな……」


 まだ初売りの名残りで人が多そうだし、何よりアリシアが一緒のときの方が確実に買い物は楽しいから、わざわざ不在のときに行きたいとは思わなかった。


 かといって、俺一人でしたいことと言えば何だろう?


 以前の自分は普段何をしていただろうと思い返してみると、大抵暇があれば目的も無く蒼汰の家に行ってた気がする。


「気兼ねする必要も無くなったし、せっかくだから今日は蒼汰の家に行くよ」


 俺は優奈にそう答えた。

 食べ終わった食器を洗い片付けてから、俺は部屋に戻って外出の準備をする。蒼汰の家に行くのに女の子っぽい服装で行くのは気恥ずかしかったので、なるべくおとなしめの格好を選んだ。

 白のセーターにブラウンチェックのキュロットスカートと黒のタイツ、それにキャメル色のダッフルコート。

 最後に左手の薬指にツインのリングを着けて出来上がりだ。


 姿見に自分の姿を写すと可愛い感じに仕上がった自分が居た。

 ……うちにある服の中ではおとなしめなのだ、これでも。


   ※ ※ ※


「おーい、蒼汰入るよー?」


 いつも通り縁側から家に入って、蒼汰の部屋で声を掛けるものの返事はない。少しだけ間をおいてから襖を開けた。

 室内は無人で、蒼汰は居なかった。


「留守かな? ……まっいっか」


 別に本人と用事がある訳じゃない。

 蒼汰が帰ってくるまでごろごろするとしよう。別に帰って来なかったらそれでいいし。

 俺は蒼汰の部屋に入ると持ってきた紙袋を勉強机の上に置いて、壁のフックに掛かっているハンガーにコートを掛けた。

 それから、本棚に向かって読む本を物色する。


 うーん、何を読もうか。

 少年漫画の新刊も気になるけど折角だから……


 俺はベッドの上に立って、本棚の一番上の棚に手を伸ばす。それから、並んだ百科事典の箱を取り出して、一冊づつ中身を確認していく。


「ふむふむ……ほうほう……なるほど……」


 中に収められていたのは蒼汰のお宝コレクション、いわゆる成年向けの本だ。見覚えのあるものも多く懐かしい気分になったりしたけど、新しい本も結構増えていた。

 以前はナイスバディのお姉さん系のものが殆どだったけど、新しい本の中にはロリ系の本もちらほらあるようだ。


「蒼汰……ちょっと趣味変わった?」


 ちなみに俺は元々どちらもイケるから問題なし。

 ……強いて言えばおっぱいがあればより良いかな、うん。


 俺はそこからロリ系の成人向け写真集を一冊取り出して、ベッドうつ伏せに横たわりながらページを捲り始める。

 写真の女の子はかわいい系の小柄な子で、胸は割と控えめだった――俺よりは大きかったけど。

 それは、男優との絡みのある写真集だった。


「お、大きいな……」


 相手の男は体もアレも大きくて、小柄な女の子との対比が顕著だった。ペラペラとページをめくっていくと、女の子が男のそれをあれしたりこれしたりと、なかなかに迫力がある。

 そして本番シーン……


「……全部入るんだ」


 すべてを受け入れてとろんとした女の子の表情はとてもエロくて、気持ち良さそうだった。


 入れられるのってそんなに気持ち良いのかな……


 なんて思うとお腹の下の方がきゅって熱くなって、


「!!?」


 い、今俺は何を考えた!?

 この娘としたいじゃなくて、この娘のようにされたい……?


「ありえない……うぇ……最悪だ……」


 一瞬の気の迷いでも男にやられたらっていう考えが自分から出てくるなんて……俺はノーマルだ。えっちするなら女の子としたい。


「けど、この子としても主導権は相手なんだろうなぁ……」


 そう考えるとちょっとへこむ。この体は敏感すぎて、相手に翻弄されてしまう可能性の方が高いのだ。

 それはそれで気持ち良いのだろうけど、俺が思い描いていたセックスとはちょっと違う。


 アリシアとするなら違ったんだろうけど。


 とても敏感なアリシアをあれやそれやでとろとろに気持ち良くしてあげて、準備万端になったその部分に俺のモノを……


 そのとき、急に部屋の襖が開いた。


「ひゃいっ!?」


 妄想の世界にトリップしていた俺は、思わず変な声が出てしまう。


「おわっ、なんだなんだ!?」


 想定外の俺の姿に蒼汰から驚きの声があがる。


「――って、アリスか」


「……お、お邪魔してるよ」


「お、おう……って、ちょっ、おまっ!? 何を読んで!?」


 蒼汰は慌ててベッドの上の本を取り上げると背中に隠す。


「何焦ってるんだよ……エロ本の貸し借りなんて前は普通にしてたろ?」


「お、お前の中には、アリシアさんもいるんだろ!?」


「ああ、そういうことか……だったら大丈夫だよ。今日はアリシアとの同調を切っているんだ。だから、俺だけだよ」


「そ、それなら……って、やっぱダメだろ」


「なんでだよ、俺達の仲じゃないか。それとも、蒼汰はもう俺と以前のような関係には戻れないっていうのか?」


 そう考えると不安になる。

 ようやく俺は幾人として蒼汰と接する事ができるようになったのに……


「そうじゃなくてだな……お前、嫌じゃないのかよ」


「……なんで? 男がエロ本くらい持っているのは普通だろ」


 いまさらなんで蒼汰がそんな事を聞いてくるのかがわからない。


「……はぁ、わかった。お前が気にしないなら別にいい」


 変な蒼汰。


「それで、今日は何しに来たんだ?」


「なんだよ、用事が無いと来ちゃいけないのか?」


 さっきから蒼汰に邪険にされているように思えて、俺は唇を尖らせて答える。


「別にそういう訳じゃないが……」


「前に話してた制服と自転車を持ってきた。使ってくれ」


 エイモックとの戦いで使えなくなった制服と自転車の代わりに、母さんの許可を貰って前に俺が使っていた物を蒼汰にあげることにしていたのだ。


「お、おう、ありがとな。正直助かる」


「どうせ、俺はもう着れないからな」


「そうか……」


「なあ、もう用事は無いんだけど、前みたいにごろごろしててもいいか?」


「あ、ああ。構わないぞ」


 俺は漫画の単行本を手にとってベッドで読み始める。

 それからも、俺達はややぎくしゃくしていたが、少しずつ昔の感覚を思い出して自然に接するようになっていった。

 漫画の感想を言い合ったり一緒にウィソをプレイしたりして、俺達はだらだらと一日を過ごしたのだった。


 そして、帰りに写真集を一冊借りた。


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