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竜姫伝(タイトル仮)  作者: さまー
第一章 コラルド王国編
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8.この国を

 リクを正面に戦うダビスの左胸を、エリが貫いた刀が覗かせていた。


「――ふざけるなあ……全て私の計画は完璧だったのだァ!! 何故負けなければならない……!? はぁ……息が苦しい……苦しいぞぉおおおお!!」


ダビスは力なく倒れた。エリは剣を床に落とす。リクもミズとルビーとの融合を解除すると、刀をゆっくりとしまった。


「……エリシュマン、私は……勝ったの?」

「はい、おめでとうございます……エリ様」


エリの顔は、勝利の喜びを表す笑顔とエリシュマンを心配する悲しみの涙で入り混じった。嬉し泣きをしているかのようにも見える。リクはゆっくりと背中を向け、テラスから去っていく。それを呼び止める、エリの高い声。


「あの……リクさん、ありがとうございました」

「いや、いいよ、あとさ、俺とエリさんそんなに歳変わらないんだし、さんづけお互いにやめない?」

「え? ああ、リク……ありがとう」

「どういたしまして」


リクは満面の笑みを浮かべると、テラスの入口の暗闇へと消えていった。


「エリシュマン……彼は一体どういう人なの……」

「竜姫によってもたらされた混沌から人々を救うために旅をしているそうですよ……ただ竜姫を倒すという目的を掲げているほかの戦士とは一風変わって面白い男です」


 エリシュマンを助けにきた城医。担架に乗せて運ぶ。


「怪我はございませぬか、姫様」

「ええ……、それより、エリシュマンは……」

「貧血がひどそうですが、命に別状はないと思われます。この程度なら、我々でなんとかしてみせますのでご安心を……」

「エリシュマン、さっきさぁ……3つめの我侭はわがままじゃないって言ってたじゃん? じゃあ、最後の我侭聞いてもらってもいい?」

「なんでしょうエリ様、このエリシュマン、何でもお聞きします」


「この国を――――」




 翌日、城を跡にする少年と青年。


「リクくん、怪我大丈夫なの? エリシュマンさんたちに挨拶していかなくていいの?」

「レオさんも、くんつけなくていいですよ。長いでしょ?」

「ああ、うん……」


やたら人の呼び方を気にするリクが何だか可笑しくて笑ってしまうレオナルド。


「本当にいいのかい?」

「うん、居心地が良すぎるよこの国は……」


去っていく二つの背中を呼び止めるひとりの少女の声。


「ちょっと、たつ鳥跡を濁さずとは言うけど、あまりにも薄情なんじゃないの? リク」


その声の主は、第一皇女で昨日結婚が白紙に戻った少女、エリ=コラルだった。


「いいじゃんエリ。それより、これからどうするつもりなの?」

「どうするもこうするも、執政権はエリシュマンに任せるの。私もあんたと同じ、政治音痴だから……」

「ちょっといつの間に呼び捨ての仲になってるんだよ、っていうか、王女として政治音痴って大丈夫なの!?」


一人口が回るレオナルドを半分無視して、エリは笑った。


「だから、私は王女としてまだまだ未熟だから……あなたたちと一緒に旅をして成長したい。もっと、王女として、ひとりの人間として強くなりたい」

「そっか、んじゃ、一緒に頑張ろ。エリ」

「うん!」


眩しい笑顔が二人の男に向けられた。エリの小さくも、少し頼もしくなった背中を眺めながら、現内務官を務めるエリシュマン=ナルバータは微笑んだ。

 『この国を――お願いします』とエリに頼まれた。その最後の我侭は、断れる状況ではなかったし、なにより、エリの『ひとりの人間として強くなりたい』という思いを尊重したかったのだ。エリが戦うきっかけは、リクという小さな旅の戦士が作ったものだ。彼と一緒に旅をしていれば、エリもきっと何かをつかめるだろう。そう感じたエリシュマンは、一切の執政権を担い、エリを思い切って旅に出した。


「エリ様が元気に帰ってくるまで、私は絶対にこの国を守ってみせます。約束ですよ……姫様」


絶対に裏切らない。そう誓ってさらに小さくなっていく背中を見つめて微笑んだ。




 一行は、コラルド王国よりも少し西に行ったところにある、エルド町を目指す。大陸の最西端の町であり、レオナルドの出身地でもある。今は、エルド商会という、さまざまな国や地域を股にかけて活動する紹介があるくらいで、ほかにめぼしいものは何もない。


「エルド町についたらレオナルドは私たちとはもう旅を共にしないの?」

「え?」


エリにそう言われ、少し困った様子のレオナルド。そうだ、元々リクは竜姫によってもたらされた混沌を解消するために旅をしているのであって、エルド町につこうが旅は終わらない。エリの方も、王女として成長するために旅をするのであれば、もっと長く、リクと旅を共にするであろう。


「そうだね、じゃあ二人で旅することになるのか……」

「リクと二人かぁ」

「エリと二人はちょっと不安だね」


リクもエリもどことなく頼りない。レオナルドは嬉しいのか心配なのか、なんだか複雑だ。


 エルド町のシンボルである、エルド商会の商社が見えてきた。レオナルドにとっては自らの一週間ぶりの拠点である。


「ここが、エルド町か……」


新しい街に、興奮冷めやらぬリク。エリも国外に出たことは初めてだったので、同様の興奮を覚えていた。

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