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竜姫伝(タイトル仮)  作者: さまー
第2章 エルド町編
10/10

10.幸せですか

 リクによって提案された新しい旅路の計画。それは――


「シャオと共に北にある『魔の山』に向かう。そして、そこにいる『ナキ男』っていう魔人を倒す。そのあとにエルド町を南下してルメリア町に向かうもよし、旅人殺し道を通って直接オアシス街に向かうもよし」

「……まず、そのシャオって人を迎えられるの?」

「うん。やってみる!」


――そこに関しては無計画なのか……、エリは思わず苦笑した。しかし、リクの輝いた目を見ていると、無鉄砲でも何とかなると思ってしまう自分がいて、何だか悔しくて笑えてくる。


「本当に大丈夫なんでしょうね? 王女である私を困らせたら許さないわよ」

「……一緒に旅をする以上そこは妥協してもらわないとね……」


笑ってごまかすリク。


「ちょっと待ちなよ。リクもエリも、二人だけで何決めてるんだよ」


後ろに現れたのはレオナルド。


「ちょっとエロナルド、私の部屋に勝手に入ってこないでよ」

「だからレオナルドね! なんでリクはいいのに僕は……」

「どういうことだよレオさん……ここでお別れじゃ……」


疑問に思うリクに、レオナルドは胸を右手で叩いて答えた。


「レオナルド=ハイラル、僕のことを助けてくれた命の恩人で無類の友人のために北の魔の山に同行するくらい訳ない! だいたい君たち二人とも外の世界の常識とかあんまりわからないだろうから心配になるしね」

「レオさん……」「レオナルド……」


リクとエリはレオナルドに対し、少し期待の目を向けた。


「……じゃあ早速相談! シャオを誘うにはどうしたらいいかな……?」

「………」


リクの質問に、レオナルドは黙る。


「正直、わからない」




 シャオ=シャルランは、リクらと同じようにエルド商会の宿舎で寝泊まりしながら、ここ二日間はゴンザに頼まれて仕事を手伝っていた。今夜も胸騒ぎがして眠れず、外に出て雲間に見える月を眺めていた。


――シャオ……逃げなさい、お前は雷属性の魔法使いだ……必ず俺たちの仇を……取れ!


「……父さん、母さん……俺は…仇討ちどころか……記憶の多くをなくしてしまったんだよ……」


月が隠れるのを眺めながら、シャオは眠くなる目をこすってそのまま寝てしまった。




 エルド町の北の山からとある商隊がやってきた。どうやらこの夜中を利用して山を抜けてきたらしい。


「さてと……やっとたどり着いたぜエルド町。65人の商隊を組んで13人の犠牲者を出してまでここまで来たんだ。絶対にこの契約、成功させるぞ」

「でもエルド商会の会長、頑固者で有名ですぜウィリアムさん……」

「構わない……最終手段はある……任せるぞ、パイル」

「……うぃーす」


スーツを身にまとう中年の男、ウィリアム=バックレー。その半身後ろに立っているパーカーのフードを被った男、パイル=セザント。二本の太刀を携えている。彼らはセンドリア商会という名前の商会から派遣されてきた者たちだ。どうやらエルド商会の買収を計画しているらしい。


「とりあえず、明日の朝には俺は会長さんに直談判してくるぜ」


ウィリアムは卑しい笑みを闇の中に紛れさせながら歩幅を広げた。



 鶏の鳴く声がする。寝ていた体を起こすリク。隣でねるレオナルドと、ベッドで寝るエリの姿が見えた。どうやら作戦会議の途中で寝てしまっていたようだ。


「あ……寝ちゃってた……」


無造作に広がった紙とペン。走り書きのように書かれた地図と矢印が何本も書かれているそれを見て昨晩のできごとを思いだす。


「そうだ! シャオをナキ男討伐に誘わなきゃ!!」

「……うーるさいリク!」


右目をこすりながら枕を投げてきたエリ。枕が後頭部に直撃し、勢いのまま床に頭を打つ。


「いってえ……」

「何であんたたち私の部屋で寝てるのよ……」


エリの顔が完全に青ざめている。


「あ、ごめん! 作戦考えてたら俺達そのまま寝ちゃってたみたい……」


リクが両脇に紙とレオナルドを抱えてそそくさと出ていこうとする。エリは冷めた目で二人を眺める。眠かったはずの目はすっかり覚めていた。


 「おーい、シャオ! こっちの果物の不良品分別してくれね?」


商会の男がシャオを呼ぶ。外の壁際でそのまま朝を迎えたシャオは目覚めよく立ち上がり、無言のまま声のする方へと走る。


「先輩……」

「ん? シャオどうした?」


お前から話しかけるなんてめずらしいなという顔で商会の下っ端の男はシャオを見た。


「先輩は今、幸せですか?」

「……そりゃな!」


満面の笑みを浮かべる先輩の男。シャオはリクの笑顔と重なって不穏な表情を見せる。


「そうですか……」

「ま、嫁はこええし、財布の紐握られてっけどな!!」


そんな二人のやり取りを見て、続々と商会の下っ端たちがやってくる。


「どーしたんだ? また嫁とのノロケ話か?」

「こいつの嫁めちゃくちゃ美人なんだぜ! しかも生後1ヶ月の赤ん坊までいやがる」

「シャオもこの町で暮らしていくならいい女紹介してやらねえとな!」


バカみたいに騒ぐ男たちに、シャオは冷めた目で口だけ笑った。


「……俺は、ナキ男を倒すことだけを生き甲斐に生きていくので……この町で平和に暮らすことなど考えていません……」


彼のクールな言葉に、騒ぐ男たちはすっかり黙ってしまった。眉尻を下げて、黙々と作業を再開する。


 商会の建物の中で書類をまとめるゴンザの元に、ひとりの来客者がやってきた。


「おじゃましますエルド商会長ゴンザ=エリルドさん」

「朝早くにどーも。どうかされましたか?」


顎にたっぷり蓄えたヒゲ。Tシャツの袖口から見える大木のような上腕二等筋。豪快なオールバックに大きな声。ゴンザは来客者に向かって頭を下げた。


「私はセンドリア商会のウィリアム=バックレーと申します。私、このエルド商会を4億cyで買収したいと思いましてですね」

「買収……だと?」

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