宿命と因縁
地獄の様相を具現化したかのような都市があった。その名をレッキングヒルズという。無数のビルが立ち並び、ビルの間には日本風の神社が、またカジノやゲームセンター、工場などが何の隔たりも無しに存在しており、それは混沌という言葉に尽きる光景だった。空には一日中、工場から立ち昇っている硫黄の煙により、腐卵臭と黄色い霧が立ち込めていた。
「ギース様宜しいですか?」
レッキングヒルズの中心地には巨大な黒一色のビルが建っていた。その中に、一人の灰色のローブを着た若い女がいた。彼女は冷たい鉄の両開きの扉の前で頭を垂れると、己が主に許しを請った。
「良いぞ。入れ」
扉が自動的に開いた。冷たい空気が部屋の中から廊下に吹き抜けて来ると、若い女は部屋内に入って行った。そしてベールに包まれたベッドの上で、上半身だけを起こした男が若い女の方を見ていた。
男の声は若かったが、何処か威厳が感じられ、まるで長い間生きていたようにも思えるものだった。ベールと影のせいで、男の顔は見えなかったが、闇の奥からキラリと光る両目だけは確認することができた。切れ長で見る者を恐怖させる、冷たい雰囲気を醸し出していた。
「ご報告に上がりました。カシムの奴がジンに敗れました」
「ほう・・・・」
男は低い声で興味無さそうに相槌を打つと、若い女に手招きをした。
「もっと近くに来い・・・・リンよ・・・・」
「はっ」
リンと呼ばれた若い女は、ベッドの右側に来ると、その場で片膝を突いた。
「かつて、この私によって壊された貴様を治したのは他でもない私自身だ。ホムンクルスよ。何故私はそんなことをしたと思う?」
リンはギースの質問を理解できなかったのか、首を傾げていた。
「簡単さ。勇者達を始末させるためだ」
ギースは指をパチンと鳴らした。すると、ギースのベッドから少し離れた位置にある、赤いカーテンが開き、中から5人ばかりの若い女が現れた。皆、リンと同じ顔、同じ身長をしていた。
「一体、一体は弱いが、力を合わせれば本来以上の力が出せる。勇者達から私が学んだことだ」
「ギース様は勇者を恐れておられるのですか?」
リンの発言にギースは鼻で笑った。そして立ち上がると、ベッドから出てゆっくり出口に向かって歩き始めた。
「あの時、リオンによって闇に追放された私は、様々な時代を行き来した。そして学んだ。失敗とは油断と短気を兼ね備えた者のすることだとな。つまり、常に冷静で、相手がたとえどんな奴だったとしても、手を抜かずに最善の選択肢を取る。私が長い時間で学んだことだよ」
「はい・・・・」
「かつての私ならば、直接自分でジンの元へ出向いていただろうが、私は変わったのだ。勇者を待つ魔王の気持ちでな。私の能力が完全に目覚めるまで、奴らの様子を見ているとしよう」
ギースは扉を開けると部屋から出ようとした。
「ギース様ご安心を。既に刺客を二名、カルゴタに送りました。数日のうちに奴らの首が、レッキングヒルズに届くことでしょう」
ギースはそれには答えず、扉を閉めた。
やりたかっただけの現代魔法辞典その1 パイロキネシス・・・・口から吐き出した空気を、好きなタイミングで発火させたり爆発させたりできる。遠距離からの奇襲に向いている。
ステータス パワー3 スピード3 テクニック2 リーチ3 タクティクス2
※ 能力は5段階評価 1が最も低く。5が最も高い。
パワー 能力の殺傷力 1 子供並み 2 大人並み 3 兵士並み 4 軍隊並み 5 核爆弾並み
スピード 能力の伝わる速さ 1 よちよち歩き程度 2 徒歩程度 3 走り程度 4 自動車程度 5 新幹線程度
テクニック 能力がどの程度まで調整ができるか 1 大雑把 2 使いにくい
3 ふつう 4 手足のように動かせる 5 糸に針を通すような細かい動きが可能
リーチ 能力の及ぶ距離 1 手の届く範囲 2 周囲5メートル程度 3 周囲1キロ程度 4 周囲10キロ程度 5 周囲100キロ以上
タクティクス 能力の応用性・自由度 1 限られている 2 少ない 3 多少の応用が利く 4 応用が利く 5 工夫次第で様々な使い方が可能




