物質強化(アーツ)
村長の家に案内された仁達はオシャレなピンクのソファーに、4人並んで腰掛けた。村長の娘が紅茶の入ったカップを3個、仁達の前に置いた。
「ああ、悪い」
仁は礼を言うと、カップを手に取り、舌の焼けるような紅茶を一杯、口に含んだ。
「あれ。僕の紅茶は?」
テーブルにはカップが三つしか置かれていない。端に座っているルミナスの分が無かった。
「うう、紅茶」
ルミナスが涙目で唸っていると、ジャンヌが身を乗り出して、村長に訊ねた。
「村長様、村の生け贄について聞きたいことがあります。よろしいですか?」
「ああ、勿論だとも」
「生け贄を求めているのは魔族ですか?」
「んにゃ、知らん」
「山でこれくらいの大きさの剣が刺さっているのを見ませんでしたか?」
「知らん」
ジャンヌは思わず閉口してしまった。次に、今度はレベッカが質問した。
「村の生け贄を私に変更することは可能ですか?」
レベッカの提案に、村長は眼を丸くした。
「お前さん正気か?」
村長は酷く動揺した様子だったが、部屋の奥から、彼の息子と思わしき、10代後半ぐらいの青年が現れて、レベッカ達を見て鼻で笑った。
「良いじゃないか親父。見ず知らずの奴が、妹の身代わりになってくれるってんだから」
「うるさいぞカシム。あっちへ行け」
村長が怒鳴ると、カシムは決まり悪そうに舌打ちをして、部屋の奥に引っ込んでしまった。
「今のは息子さんですか?」
レベッカの質問に、村長は静かに頷いた。
「ええ、娘とは比べ物にならないほどダメな奴です。奴は毎月の生け贄を、山の神に届ける役目を担っていますから、あまり強く出れないんですがね」
「僕の紅茶は?」
「うるせえな。俺のやるよ」
仁は自分の分をルミナスに渡すと、彼は「くれるの、やったー」などと宣い、嬉しそうに紅茶を飲んでいた。仁は溜め息混じりに話を本題に戻した。
「村長、一つ気になるんだが、息子さん以外にその役をやらせたら良いだろ」
「それが、山の神がカシム以外の奴が、生け贄を連れて行くことを嫌がるんじゃ」
「何故」
「知らん」
仁はジャンヌの方をチラッと確認すると、彼女も仁の方を向いており、互いに小さく頷くと、彼は立ち上がった。
「俺達が生け贄になってやる。ただし、俺やルミナスも含んだ全員だ」
仁の発言に村長は首を横に振った。
「ならん、ならん、山の神が何と言うか」
「良いんじゃねえか?」
突然、カシムが話に割り込んで来た。彼は山の神に確認すると言い残し、部屋の奥に行った。
「安心しろ、村長。この俺の能力なら山の神に勝てる
檜山仁、能力名は物質強化。触れた物体を、その名の通り強くできる。




