シルバーブレット
物影から現れた少女は、仁に向けて銃の引き金を引いた。
「ジン、危ない」
ジャンヌは仁を突き飛ばすと、銃弾を右肩に被弾して倒れた。
「外したか」
少女は舌打ちをした。
「おい、あんた…」
仁は倒れているジャンヌに駆け寄ると、彼女を抱き抱えた。
「大丈夫です。これは分かっていたこと…」
ジャンヌは眼を閉じると、この世界に来る以前の自分を思い出していた。
「ジャンヌよ。正気か?」
塵すら存在しない暗黒の中で、銀色の体をした巨大なドラゴンが、ジャンヌを背に乗せて、大きな翼をはためかせていた。
「私は本気よ」
ジャンヌは力強く頷いていた。ドラゴンは心配そうに、首を下に向けると、体の芯に響くような野太い声でさらに言った。
「統制者としての地位を捨て、人間に転生したいだと。肉体を持つ苦しみを何故、今さら味わうのだ?」
「もう、指を加えて見ているのは嫌。私も勇者達と一緒に闘いたいの」
ドラゴンはジャンヌを止めるのを辞めた。彼女の決意はあまりにも堅かったからだ。
仁はジャンヌを地面に寝かせると、木刀を持って、少女と対峙した。
少女は黄色いノースリーブの服を着ており、黒いおかっば頭にカチューシャを着け、ツンと済ました顔で、銃口を仁に向けていた。
「わたくしの名前はレベッカ・シュトレーン。あなたを始末します」
レベッカは黒い拳銃の引き金に指を入れて、器用に回転させると、すぐに銃口を仁に向けて発射した。
仁は木刀を構えると、無謀にも、銃弾を木刀で叩き落とそうとした。しかし銃弾は、それ自体が意思を持っているかのように、仁の目の前でピタッと止まると、突然、軌道を変えて、ジャンヌの右足に命中した。
「あう」
ジャンヌの体がビクッと跳ね上がった。
「何故、俺を撃たなかった」
仁はレベッカを睨み付けると、怒りで震えていた。
「わたくしは、食事の時に、一つのおかずを食べ終えてから、次のおかずに手を付ける主義ですの」
「先にこいつを仕留めてからってことか。きちんと三角食べをする俺には関係無い話だが」
仁は木刀を強く握り直すと、木刀が緑色に光るのがはっきりと見えた。物質強化、彼は本能で自分の能力を知った。いつ目覚めたのかは不明だが、喧嘩の相手を一撃で病院送りにした時、既に能力の片鱗はあったのかも知れない。
「女を殴るのは気が引けるな。たとえ、あんたみたいなゲスでもな」
「あら、随分な言いぐさですわね。でも、次はあなたを狙いますわ。心臓か脳か。好きな方を防御なさい。防御してない方を撃ちますから」
仁はニヤリと笑うと、レベッカに指をさした。
「既にお前は負けてるんだよ」
仁は木刀をレベッカに向けて投げつけた。レベッカは拳銃の引き金に手を掛けたが、木刀が手に命中すると、拳銃を地面に落としてしまった。
「しまっ」
「終わりだ」
仁はラグビー選手のようなタックルで、レベッカの小さな体を押し倒し、そのまま全体重を彼女に掛けた。




