呪われし聖剣
仁はジャンヌに連れられて空き地にいた。昔は草野球などしていた場所だったが、流石に高校生にもなると、空き地へ来ることは無くなった。ジャンヌは空き地の丁度中心部に指を向けた。
「見てください」
空き地の中心部には、緑色の柄をした銀色の刃を持つ剣が、地面の上に刺さっていた。どう見ても玩具には見えない。仁が剣に近付こうとすると、ジャンヌは静かにそれを制した。そして彼の顔を見て、諭すようにゆっくりと口を開いた。
「あれは聖剣です。しかし呪われている。あの剣は地面に刺さっていますが、実は地面からこの世界の養分を吸収しているのです。放って置けば、1年と経たずに世界の養分を吸い尽くし、この世界は「無」となってしまう。選ばれた勇者だけがあの聖剣を抜くことはできます」
ジャンヌは仁を連れて聖剣の前に立った。
「あなたに抜けますか?」
「抜けば良いのか?」
「もし、あなたが私の見込んだ通りの勇者であるならば、剣を引き抜くことができます。しかし、もしあなたが勇者で無かった場合は、あなたは剣の呪いで廃人となってしまうでしょう」
「下らねぇ」
仁は剣から離れると、空き地を出て行ってしまった。ジャンヌはそれを追い掛けたりせず、その代わり遠くから彼に向かって叫んだ。
「ルミナスは、あなたを殺すために、ある男に洗脳されてこの世界に連れて来られたのです。その男は勇者が力を付ける前に、その器の人間を始末しようと画策しています。あなたが私に協力してくれないのならば、あなたの大事な人にも迷惑が掛かるんですよ」
仁はジャンヌに背を向けたまま、彼女に手を振った。
部屋に戻った仁は、ルミナスが窓の外へ体を乗り出しているのを発見し、慌てて彼を取り押さえた。
「おい、危ないぞ。何してんだ」
「ぼ、僕は行かなきゃならないんだ。あの男を今度こそ倒すために・・・・」
「さっき、お前の知り合いに会って来たぜ。そいつも同じことを言っていたが、今は安静にしてろ」
「僕の知り合いって、この世界に僕の知り合いはいないはず」
「だけど知ってんだよ」
仁はルミナスの体を強引にベットの上に戻した。そして窓を閉めると、ついでにカーテンも閉めてしまった。
「少し休むか」
仁はベッドをルミナスに貸しているので、自分は床の上で壁を背にして仮眠を取った。
数時間後、仁は眼を覚ますと、ベッドの方を見た。ルミナスは寝息をたてて横向きに寝ている。
(俺、何時間寝たんだ)
仁はカーテンを開けると、外の景色を見た。ジャンヌがここら辺にいないか、確認したかったのである。しかし、外には彼女の姿は無く。代わりに灰色のローブに身を包んだ、怪しげな一団が仁の家の前を通過していた。
「何だ・・・・」
仁は階段を降りて、外に出ようと玄関に手を掛けた。
「ねえ、仁・・・・いるの?」
茶の間の方から母親の呼ぶ声が聞こえて来たが、仁は無視して玄関の覗き穴から、外の景色を見ていた。
外は不気味な空気に包まれていた。灰色のローブを着た連中は、どれも青白い蝋人形のような肌で、譫言を交えながら、俯いたまま歩いていた。カルト教団とかそういう類とはまた異なる、何か危険な雰囲気がそこにはあった。しばらく見ていると、列の最後尾に、若い男女が列を成して、同じく俯いたままローブの連中の後ろに付いていた。
「仁。無視しないでよ」
「お袋。少し黙っててくれ。外でヤバイことが起きてる」
仁はしばらく夢中になって見ていると、その列の中に、パジャマ姿のままはだしで歩く、結奈の姿を発見した。
「おい、結奈・・・・?」




