紅色の爆弾(クリムゾン・ナパーム)
金髪の美女の言葉に、仁と結奈はヒソヒソと、美女に背を向けて何かを相談していた。
「ね、ねえ。あの女の人大丈夫かな?」
「相当ラリってるな。関わり合いにならねぇ方が良いだろう」
仁と結奈は美女を無視すると、そそくさと学校に向かって歩き出した。美女はその姿を見て、ニコッと微笑んだ。
「また、後でお会いすることになるでしょうね・・・・」
学校、仁にとっては久しぶりの真面な登校だった。結奈と仁は同じクラスなので、教室まで一緒に行くのだが、校舎の前にいる人だかりを見て、二人同時に足を止めた。
「何だ・・・・」
「有名人でもいるのかな?」
仁は人だかりの中に割り込んで行くと、校舎の壁が不自然に崩れているのを発見した。解体工事の途中のように、外部から破壊されていた。仁は視線を感じると、思わずその方向を向いた。
「ふふふ・・・・」
学校の外の緑色のフェイスの前に、帽子を被った小柄な人が立っていた。帽子のせいで髪型が判断できないというのもあるが、肌は色白く、顔も少年にも見えるし、ボーイッシュな少女にも見えた。帽子の人物は、ニヤニヤと仁の方を向いて笑っている。
「ちっ、今日はイカレ野郎ばっかりだぜ」
仁は鞄を結奈の方に投げた。
「わ、ちょ・・・・」
鞄を慌ててキャッチした結奈は、校門の外へと走って行く仁を見て叫んだ。
「待て、このおおおお」
時すでに遅く、仁は学校から出ると、さっき帽子の人物がいたフェイスの前に来た。帽子の人物は、仁に手招きをすると、住宅街の中に入って行った。
「待ちやがれ。お前は何なんだ?」
仁は帽子の人物に向かって、履いていた革靴を飛ばした。靴は頭を掠めると、被っていた帽子を地面に落とした。
「お前は男か?」
「僕は男だよ」
帽子を拾いながら、小柄な少年は笑った。髪は赤色で、少年らしいクセの無い短い髪型、そして頭のてっぺんには、クルリと先端が丸まっているアホ毛が付いていた。少年は変声期前のボーイソプラノの声色で、男装した少女にも見えて来た。
「本当に男か?」
「んもう。しつこいな。だからそうだって言ってるでしょ。それよりもお兄さん。僕に付き合ってよ」
少年は屈託のない笑顔でそう言うと、再び仁に背を向けて歩き始めた。
「クソガキが・・・・」
「町外れの倉庫に行きたいんだ。そこで話をしよう」
「俺はお前なんぞと話したかないがな」
しばらく歩くと、少年の言葉通りの倉庫に辿り着いた。倉庫の周りには荷台やら、空っぽのダンボール箱が無造作に置かれており、人の気配は感じられなかった。
「中に入って」
少年は倉庫の中に入ると、仁にも入るように促した。
「悪いが。俺は入らないぜ。お前は何者だ。学校の校舎について何か知っているのか?」
「おほん。質問は一つずつにしてよ。まずは僕の名前だね。僕の名はルミナス。あるお方のために、君を始末しに来たんだ」
「始末だぁ~?」
仁が茶化すように言うと、ルミナスの顔が不愉快そうに歪んだ。
「あまり僕を馬鹿にしないで欲しい。僕の能力の前には君は無力なんだからね」
「能力だと。厨二病かお前は・・・・」
「現代魔法。超能力とも呼ばれるある種の才能。それは千差万別で、魔道士達が使う古典魔法とは異なる軸に存在する力。見せてあげるよ。僕の能力を。紅色の爆弾」
ルミナスはポケットからナイフを取り出すと、それを自分の手首にそっと当てた。
「おい、何してんだ?」
「えへへ。見ててよ」
ナイフの先端が、ルミナスの手首を傷付けた。そしてドクドクと手首から鮮血が流れ、床の上にも零れた。まるでガソリンのように地面を伝わると、仁の足元で血の流れが止まった。
「ちっ、汚えな。靴に血が付いちまったぜ」
「終わったね。僕の勝ちだよ」
ルミナスはニコッと笑うと、開いていた右手をギュッと握り締めた。
突然、仁の足元が白く光った。そして轟音とともに地面は火を噴き、巨大な爆発を起こしたのだった。




