さようなら勇者
「うあああああ。このようなことが・・・・」
ゼウスは生まれて初めて恐怖というものを味わった。あの人間の小娘はとんでもない爆弾を彼に落としたのだ。イービルミストの毒は凄まじい速さで彼の体を内部から破壊していた。
ゼウスは大空洞の出口を目指して走った。すると奥の暗がりから、二つの人影が現れた。
「き、貴様ら・・・・」
「来たのね。残念ながらここが出口よ」
シェイミはアベルに肩を貸した状態で、右手にはムチを持っていた。今のゼウスにとってはそれすらも危険な凶器に見えた。
「お前なんぞに、私が敗れるか・・・・」
「その姿、ルカ先生がやってくれたのね。そして今のあなたを殺すのは、私でも容易い」
「黙れ」
ゼウスとシェイミは対峙した。シェイミはアベルを地面に寝かせると、ムチを撓らせた。ゼウスは地面を蹴ると、シェイミに向かって拳を突き出した。
「死ねぃ」
「はあああああ」
二人の姿が一瞬重なった。シェイミはゼウスの拳を寸前で避けると、彼の顔に強烈なムチの洗礼を喰らわせた。
「ぐあああああ」
ゼウスの頭部がムチの一撃で吹き飛んだ。残った胴体が宙を舞い、地面の上を転がっていた。
「終わったのね・・・・」
シェイミはムチを落とすと、アベルの元に駆け寄った。
「くそ、俺の見せ場が・・・・」
「うふふ、残念だったわね。これで終わったわ。私達は勝ったのよ」
「はあ・・・・はあ・・・・」
アベルとシェイミは崩れて行く大空洞から脱出した。その後、アベルはディタールに家を借りてそこに住み込んだ。シェイミはディタール国の王女として職務をこなし、幾多の戦乱を乗り越えた末、ブリタニカに平和が訪れた。ブリタニカの中心にあるユートピアン大陸には、ディタール、マリーン、エクスダスの三国による平和協定が結ばれ、長い太平の世を築き上げた。そして100年余りが過ぎ、ブリタニカは、勇者リオンと魔王エドウィン、そしてギース・ブラッドとの戦いが始まったのだ。この物語がブリタニカ始まりを綴ったものである。




