二つの激闘
「ぬうう・・・・」
「ふん」
アベルとゴルゴンは対峙すると、互いに睨み合いになった。ゴルゴンはルカを諦めたのだ。そしてその代わりに、アベルとシェイミを確実に始末する方へと作戦を変えた。
「悪いがな。俺にはお前を倒す秘策が・・・・ごふ」
語尾がおかしかったのはアベルのせいではない。ゴルゴンの右ストレートがアベルの顔面に炸裂したからだ。
「アベル。くそ、ならば私が」
「馬鹿な奴らだ。人間如きが我らに敵うか」
アベル達がゴルゴンと闘っていた頃、ルカは彼らの援護によりゴルゴンを抜け、大空洞の最深部へと足を踏み入れていた。そこには見るも悍ましい光景は広がっていた。
「何てこと・・・・」
百戦錬磨のルカでさえも眼を覆いたくなるほどの惨状。ルカを取り囲む周囲の壁には、全裸の人間達が壁に埋め込まれており、顔と腹部、腕だけを外に出していた。彼らは食糧なのだろう。ルカは瞬時にそれが分かった。
「ごめんなさい。助けられなくて・・・・」
ルカは死んだような眼で彼女を見下ろす人々の中を潜り抜けると、一つの小部屋に辿り付いて、そこにある、赤と金色で装飾された玉座の上に座るゼウスの姿を発見した。
「まさか、こんな所に・・・・」
ルカが慌てて壁に身を隠そうとした瞬間、玉座からゼウスが立ち上がった。
「そこにいるのだろう。隠れていないで出て来れば良い」
ゼウスはルカの存在に気付いていたようで、ルカの方を向いてニヤリと不敵に笑っていた。
「どうやら、バレてたみたいね」
「ふん、貴様が誰かは知らぬが、貴様はかなりの実力者だな。私には分かるぞ。この世界で恐らく最強。私の次にだがな・・・・」
「あんたの次と言われても嬉しくないわ。悪いけど、一撃で仕留めさせてもらう」
ルカは構えた。ゼウスも同じように緊迫した面持ちで、その様子を見守っていた。
(こいつ、このコロニー自体を破壊する勢いだな)
ゼウスには分かった。ルカの体内に流れる血液の流れが。彼女は本当に一撃で自分を仕留めようとしている。全ての魔力をこの一撃に込めている。
(私の魔力を全て解き放てば。そうすれば・・・・)
ルカは拳に魔力を溜めた。外せばそれまでだ。この一撃で世界の命運が決まる。それは大袈裟な話ではなく、紛れもない事実だった。
「呪文・ギガブレイク」
ルカの右拳に眩い白い光の玉が、まるでボクシンググローブのように付いていた。
「全ての魔力を拳に込めたのか」
ルカは勢いをつけて、ゼウスに向かって行った。そして拳をゼウスに放った。
「当たると思ったか」
ゼウスは背後に跳んで、それを避けた。しかしそれを見たルカの顔に、動揺は見られなかった。まるで分っていたかのように、ゼウスの足元を拳で殴り付けた。
「き、貴様。最初から私に直接当てるつもりは無かったのか・・・・」
「ええ、欲張らないことにしたの。あなたに当てようとして避けられるよりは、威力は下がるけど、確実にヒットする、あなたの足元に当てる方が効率的よね」
ゼウスの周辺一帯が光に包まれた。そして巨大な爆発を遂げると、大空洞の形自体を大きく変貌させてしまった。




