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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第2章・アベル編
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大空洞の死闘

 アベル達は、荒野の真ん中にそびえ立つ巨大な蜂の巣、つまり大空洞を見上げていた。

「虫みたいなのがうじゃうじゃいるな」

 大空洞の周辺には無数の兵隊シグマがウヨウヨしていた。

「平気よ。私に名案があるわ」

 ルカはアベルとシェイミの間に立つと、二人の肩を掴んだ。

「私の魔法、インビジブルを使えば、息を止めている間限定で、透明になることができるの。魔力を察知された終わりだけど、シグマ達にその能力は無いみたい。つまり視界さえ封じれば、奴らに見つからずにコロニーに行けるわ」


 ルカが魔法を唱えると、三人の姿が一瞬のうちに透明になった。そして荒野の真ん中をゆっくりと進んで行った。周囲のシグマ達は、三人には気付かずに周辺を飛び交っていた。

「・・・・」

 呼吸をしてはいけないので、当然、三人は無言である。大空洞の中に入ると、ようやく魔法を解いて、三人は空気を目一杯吸い込んだ。


「死ぬかと思ったぜ」

「ええ、本当に・・・・」

「二人とも、静かに」

 ルカは口に指を当てると、洞窟の奥の暗がりの方に耳を傾けていた。何かがこちらに向かって走って来ている。アベルとシェイミも気付いたらしく、表情を強張らせた。

「いい、二人とも。これから襲って来る相手は、確かに強い魔力を持っているけれど、私の闘う相手ではないわ。二人に任せるからね。私はシグマの王と闘う。きっと、シグマの王を倒せるのは世界で私だけ」


 ルカは言いながら、自分の幼少期を思い出した。彼女は片田舎の小さな山村で生まれた。生まれた時から強い魔力を持っていたため、悪魔の子供と恐れられ、村の倉庫にずっと監禁されて育った。そんなKの序にある日、救いの天使が現れる。天使はルカを見てこう言った。

「あなたを助けに来ました。あなたの力がいつか現れるであろう、勇者の力となります」


 ルカは天使の力によって村から抜け出すと、天使は彼女に一人でも生きて行けるほどの富と、尽きることの無い寿命を与えた。天使の名はジャンヌといった。ジャンヌはブリタニカの神であり、既にあの時、シグマの到来を予期していたのだろう。その表情に余裕は見られなかった。


「二人とも、私のために道を作ってね」

 ルカはその場で逆立ちの体勢になると、両手をバネのように使って大きく跳躍した。しかし、彼女の体はその途中に、眼には見えない何かの攻撃を受け、地面に撃ち落とされてしまった。ルカは右手で地面を突いて受け身を取った。

「やっぱりね。今、誰かから強烈なドロップキックをもらったわ」


 いつの間にか三人の正面に、緑色の肌をした大男が立っていた。明らかに他のシグマとは異なる強い魔力を感じさせるその男は、両足で地面を思い切り踏み付けた。同時に男の周囲から強力な衝撃波が、三人の足元を襲った。


「皆、跳ぶのよ」

 ルカの号令で、アベルとシェイミはジャンプして、近くの岩の柱に猿のように引っ付いた。彼らのいた場所が地割れのように陥没していた。

「何て野郎だ・・・・」

(ルカの忠告が無けりゃ死んでたな)

「二人とも、私の援護をお願いね」


 ルカは柱をバネに勢いを付けると、そのまま大男の頭上を飛び越そうとした。

「甘いわ。このゴルゴンの後ろを抜かせると思ったか」

 大男はゴルゴンと名乗ると、巨体からは想像もつかないほどの身軽さで、大きなジャンプをすると、空中にいるルカを蹴り飛ばして、近くの岩の柱に激突させた。


「げほ、中々手厳しいわね」

 ルカは防御魔法で体を覆っていたので、見た目ほどのダメージを受けてはいなかったが、ゴルゴンの脇を抜けて行くことは、いかに難しいことかだけは学習できた。

「おい、シェイミ。俺らはどうすりゃ良いってんだ?」

「私に聞くな。とにかくルカ先生を援護するんだ」


 シェイミはムチを構えると、それをゴルゴンの右腕に絡ませた。

「くっ、貴様・・・・」

「ルカ先生。今のうちに・・・・」

 シェイミはムチを自分の方に引き寄せようとしたが、流石にあの巨体のことだけはある。いくら力を振り絞っても少しもその場からゴルゴンを動かすことはできなかった。


「ありがとうシェイミ。それで十分よ。そいつの足止めさえできれば・・・・」

 ルカはゴルゴンの隣を駆け抜けると、洞窟の奥へと向かった。

「ふん。逃がすと思うか」

 ゴルゴンは右腕のムチを一瞬で引き千切ると、何度もバク転を繰り返し、最後の一回に大きくジャンプし、ルカの眼前に着地すると、またも彼女の前に立ち塞がった。


「貴様をここら先には行かせん」

 ゴルゴンがルカを蹴り上げようとしたその時だった。

「喰らえ。必殺のファイヤーボール・改」

 ゴルゴン目掛けて小さな火球が放たれた。ゴルゴンはそれを片手で弾き飛ばすと、火球の中から現れたもう一つの火球を、顔面に受けた。

「ぐ・・・・」


 ゴルゴンは少しだけ仰け反ると、正面に現れたアベルを睨み付けた。

「貴様か・・・・」

「見りゃ分かるだろうが。お前は俺が倒してやるぜ」

 アベルは得意気に歯を見せて笑っていた。


 

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