大空洞へ・・・・
シェイミは諸国王達の前に現れると、澄んだ眼差しで王達の顔を一人ずつ確認すると、大きく深呼吸した。
「私はアンリミテッド・ゼロには反対です」
「な、何を馬鹿な・・・・」
部屋の中が一気にざわめき始めた。アンリミテッド・ゼロは全員一致である。誰か一人でも反対すれば行使することは許されない。
「このままでは世界が滅亡してしまうのだぞ」
「そうだ。お前みたいな若い者に、世界の行く末を決められてたまるか」
罵詈雑言、王達はまるでシェイミがシグマだと言わんばかりに、彼女を激しく責めた。流石の彼女もこれには顔を歪ませていたが、机を両手で叩くと、声高らかに叫んだ。
「私に任せて欲しい。その方が速く片付く」
「馬鹿な。田舎の小国に任せられるか」
「いや、待てよ。我々には被害は無いのだ。やらせてみればよろしいでしょう。すぐに撤退して、我々にすがり付いて来るでしょうがね」
王達は好き勝手に言うと、結局、シェイミに全てを任せるという形で会議を終わらせてしまった。最も、シェイミには彼らの狙いが分かっていた。アンリミテッド・ゼロに唯一反対する自分が消えれば、スムーズに事が運ぶと思ったのだろう。意外にあっさりと彼らは納得してしまった。
シェイミはディタールに帰ると、既に覚悟を決めた兵士達と、アベルとルカを連れて、ゼウスのいる最大のコロニー、大空洞に向かった。シグマに殺されたフィオナの仇を取るために・・・・。
「ゼウス様。お食事の時間です」
ゴルゴンは玉座に座っているゼウスの元に食事を運んで来た。
「ゴルゴンか。結局勝負は貴様の勝ちだったな。パルフェの姿も見当たらんしな」
「パルフェの魔力が感じられません。恐らく人間どもに敗北したものと思われます」
「奴の敗北など、既に想定の内よ。感情という物は、やはり生物には必要無かったな」
「と、申しますと?」
「パルフェを生み出した時、私は奴に人並みの感情と知性を与えた。そして奴は予想通り、私を裏切った。全てが私の思うつぼになったな」
ゼウスは玉座からゆっくりと立ち、テーブルに並べられた食事に手を付けたその時だった。突然、テーブルが地面に吸い寄せられるように、真っ二つに折れた。そしてその下から、全身血塗れの、最早原形を失い、液状化した体の一匹のシグマが現れた。
「ゼウス様」
ゴルゴンはゼウスの元に走ると、彼の盾になって、血塗れのシグマの方を向いた。
「き、貴様はパルフェか・・・・?」
シグマの正体はパルフェだった。パルフェはアベルから致命傷を負わされていたが、最後の力を振り絞ってコロニーまでやって来たのだった。そして、束の間だったが、自分を生み出してくれたゼウスに、感謝の意を伝えようとしていたのだった。しかし、彼の一言でその考えが変わった。ゼウスは最初から、自分を遊び半分で生み出していたのだ。
「許さないぞ・・・・」
血を滴せながら、ゼウスに向かってパルフェは歩いた。だが、それをゴルゴンが阻んだ。
「止めろ。主を傷付けるような真似は」
「喰らえ。僕の最後の攻撃を・・・・」
パルフェはその場で大きく跳躍すると、空中で全身を四散させた。そして体内に含まれていた多量の毒液を、ゼウスに向かって飛ばした。
「ゼウス様。危ない」
ゴルゴンは仁王立ちになり、毒液を全て一身で受けようとしたが、ゼウスは彼の肩を掴んで、自分の背後に立たせると、毒液を自らの体で全て浴びた。
「ぬああああ」
ゼウスは全身から煙を出しながら、顔や肩をドロドロに溶かしていた。彼はゴルゴンの方を向くと、全身に力を入れ、体全体が白く眩い光で包まれた。同時に、溶けていた顔や肩の傷が全て消え、元の緑色の肌に戻っていた。
「これは・・・・」
「驚いたかゴルゴンよ。私の操る魔法は光の魔法。本来は勇者や天使にか行使できない属性だ。これを私が使えるということは、私はただの魔族を越えた。善悪をも超越した神や天使だということだ」




