フィオナ危うし
パルフェはフィオナを物置に隠すと、それを背中で隠した。
「パルフェ?」
返事が無いことを不審に思ったウルスが、猟銃を壁のフックに引っ掻けて置くと、すぐにパルフェの元に歩いて行った。
「ウルス、どうしたの?」
「猪の肉が取れたから、今夜はこれを食べよう」
ウルスは猪をテーブルの上に置いた。そして包丁で素早く、猪の腹を裂いて、余分な内臓などを取り出していた。パルフェはその隙に、物置から離れた。
「はあ・・・・はあ・・・・」
パルフェは息を切らしながら、ウルスの元に行った。物置の中のフィオナは気絶しているだけで、まだ生きている。ウルスはパルフェの姿を心配そうに見ていた。
「パルフェ、顔色が悪いけど、どうしたの?」
「ううん。何でも無いの」
パルフェは作り笑顔で、ウルスの調子に合わせていたが、眼は無意識に物置の方を追っていた。
「あっ・・・・」
パルフェは物置から血が滴っていることを発見し、思わず声を出してしまった。ウルスは不審そうにパルフェの額に手を付けた。
「熱でもあるのかな?」
「だ、大丈夫だよ」
パルフェはウルスから逃げるようにそこから退散すると、再び物置の前で腰を下ろした。どうにかフィオナが目覚める前に、彼女を始末しなければならない。
「大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ。それよりもお腹減っちゃった」
「ああ、猪の内臓を取ったら、水で濯いで来るからね。少し待ってて」
「うん。分かった」
ウルスは猪を肩に掛けて小屋の外に行った。パルフェは慌てて振り返ると、閉じていたはずの物置が半開きになっていた。その時、パルフェの顔に強烈な蹴りが放たれた。
「ごふ・・・・」
パルフェはグニャリと顔を歪ませると、物置に頭から突っ込んだ。いつの間にかフィオネは目覚めており、パルフェの死角から蹴りを喰らわせたのだ。
「はあ・・・・はあ・・・・。何てこと、早く、うう、アベルさん達に来てもらわないと」
「ぐぐ、僕の、僕の幸せの邪魔はさせない・・・・」
パルフェは起き上がると、爪をフィオナに向けた。フィオナは額から垂れている血を手で拭うと、両手を開いて、パルフェに向けた。
「呪文・ダイヤミサイル」
無数の氷柱状の刃が、パルフェに向かって放たれた。パルフェは咄嗟に避けようとするが、足が何かに絡まって動かなかった。足元を見ると、フィオナの足からパルフェの足に向かって、床が凍り付いており、パルフェの足を凍らせていた。
「こ、これは・・・・」
「呪文・アイスフィールドよ。それは痛みも無く忍び寄る攻撃よ」
「うああ・・・・」
パルフェの体に無数の氷柱が突き刺さり、パルフェの体が撃ち抜かれて行く。
「くうう、まだだ。まだ僕は・・・・」
パルフェはフィオナの首に、爪を飛ばした。
「あっ・・・・」
フィオナの体が後ろに大きく仰け反った。その隙にパルフェは、一気に距離を詰めると、彼女の首に爪を指ごと突き入れて、毒を体内に流し込んだ。
「僕の勝ちだね。でも大丈夫。君は殺さない。この神経毒で、君を改造して僕らの仲間にしてあげる。ふふふ、永遠の生き地獄を味わってもらうためにね」
フィオナの背筋が凍り付いた。彼女の心を恐怖の二字が支配していた。痛みは無く、体が痺れて、強力な麻酔を打たれたみたいに、意識が遠退いて行く。パルフェはそんな彼女の姿を嘲笑って見ていた。




