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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第1章・リオン編
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赤魔賊掃討戦

 赤魔賊は世間であぶれた者達が徒党を組み結成された盗賊団である。その目的は略奪、放火、暴力、一般に悪とされる様々な行為により、人々を苦しめていた。この日、ディタールでは会議が開かれていた。リオンももちろん参加させられていた。

「さて、赤魔賊についてですが、この際、完膚なきまでに叩くのが最上かと」

 ウナギのような長い髭を生やした、見るからに狡い外見をした軍師らしき男が開口一番言った。リオンも職員会議なら知っているが、こんな国の命運を掛けるような重要な会議は初めてだったので、彼なりに緊張していた。

「すいません。僕はこの世界のことも良く分からない人間なんで、何とも言えないですが・・・・」

 リオンの消極的な意見に、その場で失笑が巻き起こった。元々あまり信頼されていなかった国王ではあったが、ここまで来ると馬鹿にされるようにもなっていた。先程の狡そうな軍師は溜息交じりに、仕方なく説明を始めた。

「良いですか。この世界はブリタニカと呼ばれる巨大な一つの星です。そこにいくつかの大陸があり、その中でも最大の面積を誇る大陸が、我らがディタールのあるユートピアン大陸です。ユートピアンには、他にも大小様々な国が存在しており、先代の王が大陸の統一を嫌っていたので、それぞれが平和協定を結んで、互いの領土を侵害しないようにしてきました。国は大きく分けて三つあります。また小国はたくさんありますが、大体が三つの国のいずれかの事実上の傘下となっています」


 軍師の説明は眠たくなるほどに退屈だったが、ここで寝てしまってはまたも馬鹿にされてしまう。リオンは必死に聞いているふりをしていた。

「この三つの大きな国は、以前は別の名前が付けられていましたが、色々と事情があり、幾度か改名してきました。最初の国がディタール。我が国ですね。ここは今までに一度も名前が変わっていない唯一の国家です。もう一つが海に面している海洋国家マーリン。もう一つがブラッド家という貴族が事実上支配しているエクスダス。この三つです」

「あの、事実上支配しているとは?」

「いわゆる傀儡ですね。まあ、我が国も傀儡みたいなものですが」

 ここで少しだけ笑いが起こった。何故かリオンも一緒になって笑っていた。

「おっほん。とにかく話が逸れましたが、こんな平和な100年以上も戦争が無いこの大陸で、唯一の悩みの種が赤魔賊です。奴らを早々に潰さねば、これに乗じた群雄達により各地で反乱が起こってしまう。そうしたらまたも混沌の時代に入ってしまいます」

「僕はどうしたら・・・・」

「許可を下さい。私に。このマイに1000の兵を下されば、一か月と経たずに、この下らない戦いを終わらせてみせます」

「本当かい。じゃあ任せるよ」


 リオンが許可を出して、会議を終わらせようとしたその時だった。一人の老人が手を挙げた。それを見てマイが小さく舌打ちをした。どうやら彼とは折り合いのつかないような人物らしい。

「ああ、ジェイか。何か意見があるのかい?」

「はい。マイ一人にそこまで任せるのは危険です。彼は確かに我が軍随一の知恵袋ではありますが、少々、短慮で肝心な時に失敗を犯します。ここは私を副将に着けて下さい」

 長年、この国を見守って来た男の意見だったので、異議を唱える者はいなかった。リオンもホッとしたのか、少しばかり表情が柔らかくなった。このウナギ髭の男に全てを任せるのは、流石のリオンでも少し怖かったらしい。

「ちょっと待って下さい。短慮とは何です。軍師たる者、先を見通す力があるのは当然。そなたは私にその力が無いと・・・・?」

「マイ殿、お気を悪くされたのならば申し訳無い。しかし、一刻を争うことでもあります。ここは理解して頂きたい」

「ふん、話にならない」

 マイは立ち上がると、椅子を蹴って部屋を出てしまった。

(あ、短慮だ・・・・)

 リオンは思った。


 会議終了後、その日の夜には出陣の支度が整った。1000の軍を借りたマイは馬に乗ると、先頭で馬を走らせ、そのまま闇夜に消えて行った。

「さてと・・・・」

 駐屯用のテントの中で鎧を着終わったジェイは早速、外で待っているはずのマイの元へと急いだが、既に彼の姿は見当たらなかった。

「まさか。おい、マイ殿はどちらに?」

 ジェイは見張りをしていた兵士を捕まえて訊ねた。兵士達はずっと見張りだけに集中していたので、マイの動きなど一々把握していない。結局、彼を見つけることはできなかった。

「しまった。マイに出し抜かれた。そんなことをして何になるというのだ」


 マイは雑木林の中で止まると、手で合図をして、後方で待機していた赤いローブで統一された魔法部隊を前衛に置いて、自分達は後方に下がった。ブリタニカの戦はまず、魔法弾の打ち合いから始まる。片方の魔道士が魔法弾を放つと、それが魔法として効力を発揮する前に、敵の魔道士の魔法弾でそれを迎撃する。迎撃された魔法弾はそのまま消滅してしまうので、いかに一つでも魔法を発動させるかが、戦いでは重要だった。

「今回は奇襲戦だ。奴らが鼾を掻いているところに魔法弾を撃ち込め」

 魔法部隊の魔道士達は、両手を雑木林の向こうに向けた。そしてブツブツと魔法を詠唱し始めた。

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