二つの暴君
パルフェとゴルゴンは二人並んでコロニーの出口へと歩いていた。公平を保つために、引き連れるシグマの数も均等にするつもりだった。岩のような顔で歩くゴルゴンを、まるで茶化すようにパルフェは彼の脇腹を手で突いた。
「何だ?」
「ねえねえ。君ってさぁ、怖くないわけ?」
「何がだ?」
「だから、もしこの勝負に負けたら、君はさっきのシグマのように首を刎ねられちゃうんだよ。せっかく生まれたのに勿体無いと思わない?」
パルフェは可愛らしく小首を傾げながら訊ねた。ゴルゴンは岩のような無表情を崩さずにキッパリと答えた。
「あの方がそれを望んでおられるのだ。俺よりもお前が優れていたというのなら、それで良い。あの方の幸せこそが第一なのだ。違うか?」
ゴルゴンの答えは正しかった。しかし、パルフェには納得できるものではなかった。パルフェにはゴルゴンには無い、感情というものがあるし、またこの世界に興味だってある。
「僕は死にたくないな。あの方に忠誠は誓っているけど、この命は僕の物だ。それに、僕にはね夢があるんだ。君みたいな石頭君には理解できないだろうけど、美味しい物を食べ歩いたり、人間の女の子が着るような可愛い服をたくさん着てみたいな。後、カッコいい人と結婚したい」
ゴルゴンはパルフェの言葉の一割も理解できなかっただろう。首を傾げると、歩く速度を少し上げた。
「どうでも良いが、早く始めよう。俺とお前は決定的に違うようだ。俺にとっての夢とは、ゼウス様の喜びだけだ」
「ふうん。そうなんだ」
パルフェとゴルゴンは互いに部下のシグマを率いて、逆方向に飛び去って行った。期限は限られている。少しでも早く人間の集まっているスポットを発見しなければならない。
(ゴルゴン、君には死んでもらうよ。この勝負、攻略法は一つだけなんだ。それは女子供を狙うこと、女子供が多い所を先に見つければ良いんだ。特に幼い子は良いな。一人で何匹も運べるからね)
「あった」
パルフェは早速、小さな村を発見すると、部下のシグマ達を引き連れて村に降り立った。
同じ頃、アベルとフィオナ、そしてシェイミの三人は外でルカと対峙していた。
「これから行う訓練は、とってもシンプルよ。今から三人同時に、私にかかってきなさい。誰か一人でも私に傷を負わせられたら合格とするわ。掠り傷程度でも良いわ」
ルカはそう言うと、木で造られた長い杖を手に持った。
「む、無茶だぜ。こっちは三人だ。流石にあんたでも厳しいだろ」
「いや、アベルそれは違う。あたし達が三人で挑んでも、ルカ様に勝てるかどうか・・・・」
「とにかくやってみましょう。私は魔法で遠くから攻撃します」
フィオナはルカと反対方向に走ると、ある程度の距離で止まった。
「よし、あたしの武器はムチだから、あたしは接近戦を挑む。アベルはどうする?」
「俺は休んでいたいところだが、そうも行かないので、俺も接近戦を挑むぜ。女の子一人に前線を任せるのは格好悪いからな」
「決まりだな」
アベルとシェイミは同時にルカに向かって走り出した。まず、シェイミがムチをルカに向かって振り下ろした。
「甘いわよ。呪文・ウインドカッター」
真空の刃がシェイミのムチをズタズタに切り裂いた。
「あ・・・・」
勢い余ってバランスを崩したシェイミの前に、ルカが出現し杖を振りかざした。
「シェイミさん危ない。呪文・ダイヤミサイル」
ルカの杖がシェイミを殴ろうと振り下ろされたが、それよりも速く、フィオナの放ったダイヤミサイルが、ルカ目掛けて放たれた。
「ちっ」
ルカはシェイミの腹を足で蹴ると、そのまま背後に跳んで、ダイヤミサイルを避けた。そこに今度はアベルが走り込み、ルカの目の前で拳を振りかざした。
「呪文・ファイヤーボール」
「甘いわ」
ルカの前に透明な膜が出現した。そしてアベルのファイヤーボールを吸収すると、それをそっくりそのまま、彼の体に返した。
「ぐうう・・・・」
アベルの体が炎に包まれる。なまじ弱いおかげで、そこまでのダメージは受けなかったが、それでも彼の服は黒く焦げていた。
「今度はこちらから行くわよ。呪文・アイススマッシュ」
ルカの頭上に巨大な氷塊が出現した。そしてその氷塊はその場で粉々に弾け飛ぶと、空から氷の雨をアベル達目掛けて降らせた。
「きゃあああ」
「ぐおおお」
「きゃあ」
氷の雨が三人を襲った。そしてそのまま三人は気絶してしまった。




