プリズンをブレイクする
奴隷達は昼間から夜間に掛けて地下採掘所で作業をする。そして一日一回の食事を済ませて、後は牢獄の中で雑魚寝である。次の日、再び採掘所での作業が始まった。
「ふああ~」
アベルは欠伸をしながら、自分の持ち場に行き、おもむろにスコップで作業を始めた。そして近くにいたシェイミと眼で互いに合図をした。今日か明日には脱獄したいものだ。すると、遠くの方から、悲鳴とムチの撓る音が聞こえて来た。
「おい、何だよ・・・・」
アベルは奴隷達の列を掻き分けながら、音の聞こえる方向に走ると、そこにはムチで全身を打たれ、肌に真っ赤な蚯蚓腫れがいくつもできているポムが、左右から二人の兵士に抱えられ、何処かに連れて行かれていた。
「ポム。おい、お前ら邪魔だ。退け、このウスノロが」
アベルは野次馬と化している奴隷達を突き飛ばすと、ポム達の後を追った。嫌な予感がしたのだ。昨日、処刑の話を聞いたからかも知れないが、とにかく彼は必死にポムを探していた。
「おい、そこで何をしている」
アベルの背後から、槍を持った見張りの兵士が現れた。
「ポムは何処だ?」
「そんな奴は知らんな。しかし仕事中に採掘所から出る奴は、死刑になる奴だけだがな」
兵士が口を閉じるよりも早く、アベルは兵士の顔面を殴り付けた。兵士は壁に激突すると、そのまま気を失った。アベルは兵士が持っていた槍を持つと、それを振り回して暴れた。
「うおおおお、何処にいるんだ。クソ・・・・」
あまりの騒がしさに、ポムを連行していた兵士二人が、ポムを放って、アベルの所に駆けつけて来た。
「貴様、持ち場に戻れ」
「うるさいぜ。このボケが。俺はなぁ、人に命令されるのが一番嫌いなんだ。そのおかげで大学も辞めちまったがな」
「何をわけの分からないことを・・・・」
「なら分からせてやるぜ。俺の槍を咥えさせてな」
アベルは手に持った槍を兵士の口に突っ込んだ。
「はぐう・・・・」
アベルは兵士の口を槍ごと殴り飛ばした。槍はバキッと口の中で折れると、兵士は口を抑えて地面の上で転がった。
「ひ、酷い奴だ。歯が折れちまった・・・・」
「酷いのはお前らだぜ。俺のダチをどうするつもりだったんだ・・・・」
「うけけけ、お前のダチって、あそこでくたばってるガキのことか?」
兵士の一人が、指した先には、ポムがボロ雑巾のようになり倒れていた。
「ちょいと遊びで痛めつけてたらよ。死んじまったんだ。兵士長にバレるとヤバいんでね。早々に片付けちまおうと思ってよ」
「き、貴様ら・・・・。皆殺しだ・・・・」
アベルは兵士達に殴り掛かると、兵士の一人に馬乗りになり、何発も顔を打った。
「俺は確かにクズだ。親にも迷惑しか掛けていない。だが、お前らはクズ以下だ。マジで腐ってやがる」
騒ぎを聞きつけた兵士達が山のように押し寄せて来た。この人数では、流石のアベルでも歯が立たない。兵士の一人がアベルに掴みかかろうとしたその時、兵士の体がムチで弾き飛ばされた。
「早く、来い」
シェイミはムチを片手に次々と兵士を倒して行くと、アベルの手を引いて、岩陰に隠れた。
「シェイミか。済まない・・・・」
「とんでもないことになったぞ。おかげで逃げざるを得なくなったがな」
シェイミは岩陰から、そっと兵士達の様子を伺った。案の定、外には兵士達が大量に押し寄せている。奴隷を逃がしたとなっては、他の奴隷達にも示しがつかないのだろう。彼らは必死な形相で、武器を片手に、アベルの姿を探していた。




