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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第2章・アベル編
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牢獄の恋

奴隷達の仕事は非常に単純である。城の地下採掘所で、スコップ片手に穴を堀り、岩を削り、ひたすら鉱物を探すのである。カラーストーンの他、ダイヤモンドが出ることもあるらしい。


「おら、速く歩け」

兵士達がムチを振り上げて、奴隷達を怒鳴りつけていた。アベルも汚い布きれの服を着て、スコップで穴を掘っていた。すると、アベルの隣で、犬のように手で地面を掘っている女性と目が合った。


(何だ。メチャクチャ好みのタイプだぜ)

女性は20ぐらいで、アベルと同じように布きれの服を着ていたが、何処か高貴な雰囲気を放っていた。

女性の肌は白く、瞳はブルー、やや中性的な顔立ちで、ボーイッシュという表現が合っていた。髪は青いショートボブで、遺志の強そうな聡明な表情をしていた。それは、この泥沼のような環境でも、凛と輝いていた。


「大丈夫かい、お嬢さん。俺が手伝ってやるよ」

「ふん、余計なお世話だ。さっさとアッチへ行け」

女性は不機嫌そうにそう言うと、小声でブツブツと呟きながら、手で穴を掘っていた。

(へへへ、気の強そうなところも、俺の好みだぜ)


一人でニヤニヤしているアベルの肩を、優しく叩く人物がいた。振り替えると、色白の痩せ細った、見るからに鈍臭そうな、アベルよりも年下に見える青年が立っていた。

「誰だいあんたは。悪いけど、男と仲良くする趣味はないんだ。話し相手なら別の奴を…

「そうじゃない。オイラは忠告しに来たんだ」

「忠告?」

「ああ。あの女と関わるのはヤバいからな。アイツの名はシェイミといって、疫病神なんだ。アイツと仲良くした男は、皆、すぐに処刑されちまうんだ。原理は分からないけどよ」


アベルは男の言葉を鼻で笑った。

「お前さ、名前は?」

「オイラはポムだ」

「ポムか。俺はアベルらしい」

「らしいって?」

「それがさあ、ベランダから落ちたら、ここにいたんだ。きっとここはあの世なんだろうな。まあ、そんなことはどうでも良いが、忠告はありがたいが、俺は迷信は信じないタチでね」


アベルはポムと別れると、シェイミの隣に行き、わざと彼女に付いて作業していた。

「オイ、俺に構うな。邪魔だ」

「女の子が俺とか言っちゃダメだろ」

「何故、放って置いてくれないんだ?」

シェイミは迷惑そうにアベルを見た。アベルは溜め息を大きく吐くと、急に真剣な顔付きになった。


「お前、脱獄するつもりだろ?」

「な、何をバカな」

「さっき、手で穴を掘っていたが、あれは逆だったんだな。お前は穴を隠していたんだ。土を掛けて、なるべく平らにして

「証拠は?」

シェイミの声が震えていた。アベルは苦笑すると、当たり前だと言わんばかりの顔で、ニカッと得意気に言った。


「お前が埋めた土を触ってみたんだが、すごい柔らかかったぜ。どんなにカモフラージュしても、触れば分かるんだよ」

「何が言いたい」

「さっき聞いたんだが、お前と関わった男は、処刑されるらしいな。何故か。それはお前が色仕掛けで

釣った男に、脱獄用の穴を掘らせていたからさ。そんなリスキーなことをすれば、多かれ少なかれ兵士どもに眼をつけられるからな」

「オレを脅す気か?」

「違えよ。ただ、俺も仲間に入れて欲しいんだ。ここから出たい」

「良いだろう。しかし、死ぬかも知れないがな」


 シェイミは、壁に空いている穴に指を入れると、一本の長い革製のムチを取り出した。

「オレの武器はこれだ。ずっと隠して置いた」

「用意周到だな」

「じゃあ、作戦は今夜決行だ。良いな?」

「ああ、後もう一つだけ頼みがあるんだが、俺のダチになった男で、ポムって奴がいるんだが、そいつも一緒に連れてって良いか?」

「あまり足が付くのは嫌なんだが、一人ぐらいなら良いだろう」

 こうして、アベルとシェイミの脱獄計画が始まった。

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