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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第1章・リオン編
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童貞を馬鹿にする国

「くそ、ふざけやがって」

 センは廊下をやけにドシドシと音を立てて歩いていた。先程の戦いでリリィに平手打ちをされたこともそうだが、主であるリオンの鈍臭い態度が気に入らなかった。そこに待ち構えていたように、彼の肩を強く叩く男がいた。

「センよ。随分と機嫌が悪いな」

「ふん、ジェイの爺か。俺に用があるのか?」

 ジェイと呼ばれた男は、白髪に白髭を生やしており、見るからに厳格そうな面構えをしていた。既に老体だというのに、体には筋肉が付いており、若かりし頃の彼を想像させる。ジェイは爺という言葉に少しだけ顔を歪ませたが、センがまだ小さい頃から世話をしていたし、センもジェイを尊敬していたので、喧嘩にはならなかった。

「何が気に喰わない?」

「全てさ。あいつの全てだ。あんな奴のために命を捨てる覚悟は俺には無い。それにあいつ、女と交わったことが無いらしい」

「はあ?」

「女を知らないんだ。見張りの兵が盗み聞きした情報によるとな、あいつは寝屋のしきたりすら逃げた男だ。それが戦に出れるわけがない。きっと国が危なくなったら、民を見捨てて自分だけ逃げる」


 ジェイは最早返す言葉が見つからなかった。そのまま王室に向かうと、玉座に座っているリオンの前で膝を突いて、両手を合わせた。この世界における最大限の敬意の払い方である。

「どうしました。ジェイさん?」

「ジェイで結構です。それよりも王。小耳に挟んだ話ですが、ここではマズイので、まことに恐縮ですが、あちらまで・・・・」

 ジェイは城の裏庭にリオンを案内すると、彼を引き寄せて小声で話し始めた。

「王はディタール国の王様です」

「はい」

「それは分かっていますね?」

「実は本当は僕、王様じゃないんです。これは夢ですよね。明日になったら、いつもの汚いマンションの一室に戻ってますよね?」

「王の仰ることが、この老体には分かりませぬが、一つだけお訊ねしたいことがあります」

「何でしょう」

 ジェイは何故か深呼吸をすると、意を決したようにリオンの耳元に口を寄せた。


「実は、王が女性を知らないと聞いたものですから」

「ぶー」

 リオンは思わず唾を吹き出してしまった。そしてそのまま咽ると、涙目になりながら咳を繰り返していた。

「な、何ですかいきなり・・・・」

「だからこそ裏庭にご案内したのです。王たる者、やはりその年齢で女性を知らぬというのも色々と問題があります。ここらで、今晩辺りどうでしょう?」

「どうでしょうって、風俗にでも行けと言うんですか?」

「早々にしてしまいなさい。その方が良い」

「良くないですよ。それに相手なんて・・・・」

「たくさんいますよ」

 リオンはリリィとレイナの姿を頭に思い浮かべた。リリィは処女だと聞いたし、レイナは経験豊富そうだ。どちらが良いか。両方ともかなりグラマラスな体型をしており、リオンの理想でもある巨乳の持ち主だ。しかし、いくら王だからといって、許されることと許されないことがある。ゆえにリオンはキッパリとこう言った。

「いいえ、結構です。男は30まで童貞を守れば、魔法使いになれるので」

「魔法使いですか。しかし魔術書を丸暗記できなければ、魔法を使うなんて夢のまた夢ですぞ」

「もう良いんだ。放って置いて下さい」


 その夜、寝屋のしきたりは絶対であるので、リオンの部屋のドアがノックされ、彼が許可を出すよりも早く、二人の美女が部屋に入って来た。もちろん、リリィとレイナである。二人とも薄手のランジェリーを着ており、男を惑わすには十分すぎる装備だった。

「リオン様。今宵はどちらと添い寝いたしますか?」

「まさかぁ~、リオン様、二人同時とか期待してますかぁ。わたくしは良いですよぉ」

 リオンは借りてきた猫のように縮こまっていた。しかし冷静に考えてみればこれは夢である。どうせ、明日になれば小汚いマンションの一室で、煎餅布団の上に寝転がっている社会科教師に戻るのだ。ここらで思う存分悦楽を堪能するのも一興である。彼は悪そうにほくそ笑んだ。

「そうですね。じゃあ、もっと近くに来てください」

 リオンはまるで別人のように冷静になっていた。夢だと分かれば怖くない。彼はリリィの腕を強引に引っ張ると、今度は自分から積極的に彼女をベッドの上に押し倒した。

「ああ、リオン様・・・・」

「どうしました。怖いんですか?」

「怖いですけど。リオン様に抱かれるのならば本望です。でもその前に、キ、キス、キスしてください」

 ディタールにも前戯はあるらしい。リオンは眼を硬く瞑っている美しきリリィの唇に、自分の唇を近付けた。


 客観的に見て、二人は美男美女であるから、非常に絵になる光景ではある。リオンはリリィと唇に軽くキスをすると、頬を染めてうっとりとしているリリィに体を重ねた。そこで彼の意識は途切れた。

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