ジェイの意地とリオンの底力
「ぐぐぐ・・・・」
ジェイは光球を剣で止めた状態で、少しずつ後ろに後退して行った。両足が地面を掘り、削りながら、どんどん後方へと下がって行く。
「こいつ、我が魔法を耐えているのか・・・・」
「ぬおおおお、こ、これが人間の力じゃあああ」
剣が光球の軌道を変えて弾き飛ばした。光球は何処かの山に激突すると、そのまま山を消滅させ、巨大な爆発を引き起こした。
「はあ・・・・はあ・・・・」
ジェイは剣を砂の上に刺して膝を突いた。そして呼吸を荒げて肩で息をしていた。エドウィンは自身の魔法を防がれて動揺していた。
「貴様、我が魔法を弾くとはな。正直驚いたぞ」
「リオン王、私にはこれが限界です。次の攻撃で終わらせます」
ジェイはリオンの方を見ながらそう言うと、妙に爽やかな顔付きになった。それを見てリオンは背筋に嫌なものを感じていた。それはこの闘いが始まってからずっと感じていたことで、その嫌な予感が的中するような気がしてならなかった。
「や、止めろジェイ。ダメだ。妙なことを考えないでくれ」
「リオン王、私はあなたと出会い本当に良かったと思っています。本当はもっと傍らであなたのご活躍を拝見したかったのですが、老兵は去ることにします」
「貴様、何をする気だ・・・・?」
「私のご先祖様が、何故こんな物を遺したのか今になって分かった」
ジェイは懐から金色の筒を一つ取り出した。それは朝日に照らされてより一層輝いていた。
「そ、それは黒炎玉だな・・・・」
エドウィンに初めて焦燥が見られた。彼は怯えていたのだ。その金色の筒に対して。
「死ぬが良い。私とともに」
「死ぬのは、お主一人で十分。呪文・ライトニングアロー」
エドウィンの右手から光の矢が10本出現し、一斉にジェイの体を貫いた。彼は口から血を吐きながらも、金色の筒をギュッと握り締めると、何かのスイッチを押したらしい。筒の先端がグルグルと回転を始めた。彼はそれを持って、エドウィンの元にゆっくりと近付いた。
「馬鹿な止めろ・・・・ルビーブレード」
エドウィンは右手を伸ばすと、指先から赤色の透明な光線を発射し、ジェイの心臓を貫いた。
「ごぼ・・・・」
ジェイは多量の血を吐くと、体を大きくくの字に曲げたが、尚もエドウィンに向かって歩き続けた。
「お主は魔族か・・・・」
「魔族ではない・・・・ただの・・・・人間だ・・・・」
ジェイは金色の筒をエドウィン目掛けて放り投げた。そしてそのまま自分は砂の上にうつ伏せに倒れた。リオンはその光景をじっと見ていたが、周りの景色が急にスローモーションに見えた。筒は先端をさらに速く回転させると、そのまま空中で白い光を放ちながら爆発した。それはバーンフレアよりも遥かに大規模な爆発で、この世界の形そのものを変えてしまうほどの威力があった。
「ぐおおおおお」
エドウィンは両手を十字に組んで爆風を防ごうとしたが、周りの大地が粉々に砕けると、自身も一緒に爆発の中に呑まれていった。




