マリーン攻防戦
「リオン様」
リリィとレイナが槍を構えてリオンの元に駆け寄って来た。外では叫び声や悲鳴が嵐のように鳴り響いていた。
「くそ、避難訓練とはやっぱり違うな・・・・」
「リオン様、何です?」
「いや、何でも無いさ。ただ、センとジェイも連れて来るべきだったと後悔している」
リオンはリリィとレイナを連れて廊下を走った。途中で横からリンが巨大な斧を持って、三人を追い抜かして行った。
「ここはあたしに任せな」
リンは重い斧を抱えているにも関わらず飄々とした態度で、あっという間に城外に出た。そして空を見上げると、上空をグルグルと円を描きながら旋回している、緑色の虎程の大きさをしたドラゴンを発見した。
「何だありゃ?」
「おい、ガキ危ないぞ」
ジャンはリンの右腕を強引に掴むと、自分の方に引き寄せた。
「くそ、悪いな。俺と一緒にいた方が危険だった。早く城に戻れ」
「はあ。またか。あたしを子供だと思って馬鹿にするバカ発見。あたしは戦いに来たんだよ」
リンは手に持っている巨大な斧を上空のドラゴノイド軍団目掛けて投げつけた。斧は綺麗な弧を描きながら、ドラゴノイドの首を刎ねて行くと、上に乗っていた連中が次々と地面に落ちて行った。
「おい、やるじゃねえか。見た目に似合わず、タフな精神を持ってやがる」
上空には既に新たな反乱軍の増援が到着していた。それらはハの字に規則正しく隊列が組まれており、その先頭に、一体だけ赤い色のドラゴノイドがいた。その上には、茶色い髪を一本に結び、傘のような形のランスを持った10代後半ぐらいの少女がいた。
「同胞達が・・・・」
少女は、地面の上に広がる酸鼻な光景に涙した。同じ反乱軍の同志や相棒であり、また友人でもあるドラゴノイドが、見るも無残な姿で横たわっているのだ。彼女が怒りに震えたのは言うまでもない。彼女はランスを頭上で回転させると、真紅のドラゴノイドを急降下させて、リンに向かって行くと、ランスを彼女の体目掛けて、大きく薙ぎ払った。
「同法の無念を思い知れ」
「しまった。斧がな・・・・」
言い掛けたところで、ジャンの体に強い横風が当たった。見ると、リンの体がランスによって真っ二つにされ、胴体がへその辺りを境に真っ二つになっていた。
「うあああああ」
ジャンは叫びながら剣を引き抜くと、それで少女に向かって斬り掛かったが、既に少女は真紅のドラゴノイドと一緒に、空高く浮上していた。
「何てこった・・・・」
ジャンは真っ二つになったリンの上半身を抱え上げた。彼女は眼を開けたまま口をパクパクと動かしている。よく見ると、切断面は青く発光しており、血が一滴も出ていない。奇妙に感じたジャンが、彼女の斬られた下半身を見ると、下半身の方もヒクヒクと僅かに動いていた。
「げほ、あたしは・・・・ホムンクルスだからな。そう簡単には死なないぞ・・・・」
「お前、痛くないのかよ?」
「痛いって何?」
作り物であるリンには痛みという感覚は存在しない。彼女はヒョイッと跳ねると、ジャンの手から離れて地面の上に這い蹲っていた。
「ああ、くそ。これ再生するのに相当時間が掛かるぞ」
リンは面倒臭そうに溜息交じりに言うと、指先をピストルのような形に曲げて、指先を上空にいる少女に向けた。
「あたしって、結構根に持つタイプ何だよね」
「何を言っているんだ。お前は・・・・」
「まあ、見てなって。名付けてフィンガー弾だよ」
リンの人差し指がバンッという風船が割れたような音とともに、弾丸のように放たれた。
「おい、お前、指が無くなってるぞ」
「大丈夫だよ。まだ残り9本あるし。時間が経てば再生するし」
リンのフィンガー弾は見た目以上の勢いで、真紅のドラゴノイドの翼に刺さった。
「グォォォォ」
ドラゴノイドは低く唸ると、そのまま真っ逆さまに地面に墜落して行った。少女は振り落とされまいと必死にドラゴノイドの首に掴まり、ドラゴノイドを励ましていたが、そのまま少し離れた森の中に落ちて行ってしまった。
「おい、やりやがった」
ジャンはもちろんのこと、近くで様子を見守っていた誰もが、思わず剣を落として驚いていた。後から到着したリオン達は、状況が読み込めない様子だった。




