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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第5章 ハル編
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今日から僕はマフィア?

 少年は地面の上に抑えつけられると、男達のリーダー格と思わしき金髪の男に見下ろされていた。

「おい、小僧。死んでみるか?」

 金髪はポケットからナイフを取り出すと、刃先で少年の右頬に縦線を引いた。その瞬間、少年は眼を閉じて叫んだ。

「助けてー」

 同時に、少年の体からゴシック体の大きな文字が出現し、宙をフワフワと浮いていた。

「え?」

 文字は「怖い」と書かれており、男達には見えていないようだった。


 少年は無意識に念じると、「怖い」と書かれた文字が男達の体にぶつかった。

「おっとと」

 男達は少しだけよろめくと、突然両手で頭を押さえて、地面の上にうつ伏せに倒れ込んだ。

「うわあああああ。た、助けてえええ」

「マ、ママ」

 さっきまであれだけ偉そうにしていた男達が、突然全身から汗を拭きだしながら怯え始めたのだ。おかげで少年は助かり、その場から離れると、男達に見向きもせずに路地から抜けた。


「何なんだよ」

 少年は路地から出ると、そのまま息を切らしながら、男達からなるべく遠い場所に避難しようと必死になっていた。しかし、エンドヒルズに安全な場所など無い。すぐに別の男と曲がり角でぶつかってしまい、再び彼に生命の危機が訪れたのである。


「おい、テメー」

「ひいい」

 少年は体を強張らせた。男は金髪で後頭部をハリネズミのように尖らせていた。ヘビのような鋭い眼つきをしており、年齢は10代後半に見えた。

「お前、さっきフランキーの奴らを尾行していた妙なガキだな?」

「な・・・・」


 少年は心底この町を恐ろしいと思った。自分が思い付きでした軽い行動が、知らない第三者にすでに知られているのだ。


「ちょっと来てもらおうか」

「い、嫌だ」

「嫌だと言われても、無理やり連れてくがよ」

 男は全身から金色のオーラのようなものを纏った。こいつは只者ではない。少年はそう思った。

「喰らいな」

 次の瞬間、少年の顔が男のストレートで吹っ飛んだ。そしてそのまま地面の上を転がると、気絶してしまった。

「手間取らせやがって」



 少年は男によって、瓦礫を積み上げてできたような簡素な建物の中にいた。石造りのベットは冷たく固く、すぐに彼は眼を覚ました。


「うああ・・・・」

 目の前の光景が渦巻き状になっていた。さっきとは別の男の声が少年を完全に覚醒させた。

「おい、起きろ」

「ひい・・・・」

 少年はガバッと起きると、早速辺りを見回した。部屋の中には5人の男女がおり、それぞれ年齢も全く異なるようだった。


「紹介するぜ。俺の名はナイツ。この町を占めているマフィア、ジャックポッドファミリーのボスだ」

 ナイツと名乗った男は、金髪で薄い眼鏡を掛けており、マフィアとは思えないほどに理知的で端正な顔立ちをしていた。年齢的には20代後半といったところだ。彼は落ち着いた声でメンバーを紹介し始めた。


「お前を連れて来た男はアッシュという。地下格闘技のチャンピオンだ。そしてその隣にいる赤い髪のロングヘヤーの女がキャサリンだ」

 キャサリンは見た目的に20代前半で、黒のタンクトップを着ており、ノースリーブな上に胸が非常に大きかったため、目のやり場に困った。やや化粧が厚い気がしたが、美人なので問題は無いと、少年は何故か納得していた。


「そしてベレー帽を被っている女がレヴィアタン。まだ14のガキだが君よりは年上だろ?」

「は、はあ・・・・」

「そして最後が、あの奥にいる男キーラだ」

 キーラは名前を呼ばれると、ニコッと少年の方を向いて手を振った。彼は黒のボサボサの髪に、両耳と舌の上にピアスを付けていた。何とも奇抜な格好をしていたが、長身で何処か紳士的な雰囲気の持ち主だった。


「何故、俺にそんなことを?」

「そうだったな。事情を説明するのを忘れていた。君がさっき喧嘩を売った相手が、実はフランキーファミリーという、隣町のマフィアでな。君を殺すと言っている。本来ならば見捨てるところだが、俺達はフランキーファミリーに抗争を仕掛けたいと思っている。そこでだ。君が我々の仲間になれば、奴らと闘う口実ができるのだが・・・・」


 ナイツの提案に、少年の体は恐怖で強張っていた。あんな出来心での行動が、こんな大事になるなんて想像もつかなかった。


「どうする?」

「どうするも何も。断ったらどうなるんだ?」

「断ったら、君を野に放ってやる。しかしフランキーファミリーに狙われたら。まず一週間と生き延びられないだろうぜ」

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