メルトダウンVSプリンス
レンとマーカスは対峙していた。部屋の隅には必死にマネキンの手を燃やそうとしているメルトダウンがいる。
「貴様、何をした・・・・」
「随分とショックみたいだな。自分の能力によほどの自身があったみたいだな」
「確かにそうかも知れない。少しだけ負けた気がするよ。僕を不死身に押し上げてくれる能力に限界があったなんてね」
「じゃあ、テメーの命もここで限界だ」
レンはプリンスで突如、何も無い空間から剣を生み出した。
「空気を剣に変化させた。こんなこともできるなんてね」
レンは我ながら驚くと、そのままマーカスに向かって跳び掛かった。
「うおおおお」
マーカスは一歩下がると、部屋の扉を閉めた。そのせいで扉が真っ二つになってしまったが、今の彼にはどうでも良かった。
(まずいぞ。メルトダウンを解除せねば。メルトダウンの発現中は、バーストショットもカウントダウンも使えない)
マーカスはメルトダウンを解除すると、レンに向かって殴り掛かった。
「死ね、この小娘」
「掛かったな」
レンはウインクした。同時にマネキンの左手が凄まじい勢いで、マーカスの元に飛んで行くと、彼の首筋に突き刺さった。
「がはああああ」
マーカスは階段から転げ落ちると、床の上にうつ伏せに倒れた。
「オレのプリンスは物体を別の物体に作り替える能力。そのマネキンは硫酸を固めて作った物だ。お前のメルトダウンが溶かしてくれたおかげで、硫酸がドロドロだ」
「あがああああ」
「おっと、それどころじゃなかったね」
レンは階段を降ると、足元に転がっているマーカスの頭部を蹴り上げた。
「げほ、げほ・・・・」
マーカスは壁にぶつかると、今度は仰向けに倒れていた。レンはマネキンを拾い上げると、自分の左手に戻して、何と切断されたはずが、そのまま装着してしまった。
「強力な接着剤が付いてあるだけだ。後で仁さんに頼んで、治してもらうよ」
「貴様・・・・殺してやる」
マーカスは自分を見下ろしているレンの顔を睨み付けて言った。
「じゃあ来なよ。次で決着を着けるから」
「上等だ」
二人は西部劇のように互いの顔をじっと見つめ合うと、まるで腰からピストルを取り出すかのように、同時に攻撃を繰り出した。マーカスは即座に立ち上がると、右手を発火させて殴り掛かった。レンはそれを後ろに下がって避けた。
「甘いぞ。メルトダウン」
レンの背後に巨大な人型の炎が現れた。レンは振り向かずに歯を見せて笑っていた。
「甘いのはあんただ」
レンの体はメルトダウンに包まれても燃えなかった。
「何だと・・・・?」
「自分の体を鉱物性繊維に変えた。鉱物性繊維は断熱性に優れているからな。そう簡単には燃えない」
レンは拳を握りしめると、マーカスの顔を殴り飛ばした。彼の体は床の上に大の字に倒れ、レンはその上に馬乗りになり、メルトダウンを背中に付けながら彼を殴り続けた。