恐るべき奇襲
仁はナイフを体から強引に抜くと、そのまま庭を抜けて家の中に戻った。そこに老婆とは別の人影が、柱に身を隠して、家の中にいる人をじっと見ていた。
「テメー・・・・」
「人の家に土足で入り込むなんて、君失礼だね」
柱の中にいたのはマーカスだった。グリーンマイルの家を暴かれてしまった彼の向かう先は、ある程度予想していたが、まさかこのタイミングで帰って来るとは、仁自身予想外だった。
「おや、マーカスお帰り」
「ああ、ただいまお袋」
マーカスは仁を見てニヤリと笑うと、仁は咄嗟にマーカスに向かって殴り掛かった。
「遅い」
「ぐうう・・・・」
仁の右肩が突然炎に包まれた。同時に彼の背中に包丁が再び突き刺さり、彼の体はバランスを崩して、その場に倒れてしまった。
「これで邪魔者は減ったねえ」
「ああ、これで安心して過ごせるな。まだネズミはいるようだが・・・・」
マーカスは玄関の方を睨み付けて言った。同時に、外から窓を突き破ってレン達が家に入って来た。彼らは仁が帰って来ないのを不審に思い、彼の足跡を辿って来ていたのだった。
「ちっ、次から次へと」
「へへ、悪いがよ。先生は助けるぜ」
マックスは一歩前に出ると、拳に炎を溜めた。
「ビートダウン」
「マックス。僕と似た能力を持つ男。しかし僕の方が数段は優れているかな」
「うるせえ」
マックスの拳がマーカスの頬を殴り飛ばした。彼の体は大きく後ろに吹き飛ぶと、そのまま木の柱に背中を強く打ちつけた。
「マーカス」
老婆は心配そうにマーカスの元に駆け寄った。
「大丈夫だ。もう、すでに僕は手を打っている」
マーカスは不気味にほほ笑むと、柱を支えにして立ち上がった。
「僕の最後の能力、前に説明しただろう。僕にはもう一つ隠していた能力があると。そしてそれを使えるのは、ウィリアムでもケビンでも無く、僕だけだ」
マーカスの全身に金色のオーラのようなものが集まっていた。
「メルトダウン」
マーカスの言葉と同時に、突如、マックスの背後に巨大な人型の炎が出現した。
「ゴオオオオ」
炎は生きているかのように吠えると、マックスの体目掛けて跳び掛かった。
「危ね」
マックスはそれを避けると、炎は彼の方を向いて、まるで生きているかのようにゆっくりと、彼との距離を詰めて行った。
「紹介するよ。メルトダウンと言うんだ。僕が敵と見なした相手の匂いを追跡し、自動的に攻撃する。まさに無敵の能力さ」
「こんなもん」
マックスはメルトダウンと正面で対峙すると、右手に唸りを利かせて、その燃え盛る体を思い切り殴り付けた。
「うおおおお。ビートダウン」
「馬鹿な奴だ。自身の炎で僕の炎をかき消そうという魂胆か。止めておけ。メルトダウンは相手を始末するまで再生を続ける。決して破壊はできない。攻撃対象になった時点で、君の死は確定している」
メルトダウンはマックスの手を焼き払うと、彼の右手がそのまま黒こげになり、宙を舞った。
「う、嘘だ・・・・」
それがマックスの最後の言葉となった。彼の体は炎に包まれて呑み込まれると、そのままメルトダウンも一緒に空間の中に消えてしまった。