ドキッ!水着だらけのビーチ
仁達はグリーンマイルを離れて、トロプリ海岸と呼ばれる場所に来ていた。もちろん遊びに来たのではない。ウィリアムことマーカスの故郷がここなのだ。彼を知る人間から、彼の行きそうな場所や、彼の人となりを知ろうと考えたのである。そしてそこから、彼の残した謎の能力。メルトダウンについて、それがどんな能力なのか、推理しようとしていた。
「いやー海なんて何年ぶりかな?」
仁の心配をよそに、フローラが楽しそうに言った。メンバーは他にレン、マックス、さらに何故かミーシャもいた。足場の悪い獣道を歩いて越え、ようやく青い海が見えて来た頃には、時間帯は昼になっていた。
「さあ、レンちゃん。この日のために用意した水着に着替えましょー」
フローラはノリノリでレンの背中を両手で押した。
「俺はそんなもん着ねえぞ」
レンは不機嫌そうに頬を膨らませていた。マックスはそんなレンの横顔を見て何故か照れていた。
(レンの水着姿か。昨日の夜から楽しみにしてたからな。何とか着る方向に持って行きたいが)
楽しそうな生徒達を他所に、仁は海岸に着くと、地図を片手に海とは真逆の方向に歩き出した。
「お前ら、ここにいろよ。1時間ぐらいで戻るから」
「はーい」
呑気な生徒達は元気良く返事すると、マックスは準備体操を始め、フローラとミーシャはレンを強引に更衣室の方に引っ張って行った。
「ここか・・・・」
仁は地図を見ながら、目的の場所に辿り付いた。そこは海辺に佇む小さな一軒家で、マーカスの生家である。仁は古い木の扉を叩くと、中から白髪の腰の曲がった老婆が現れて、彼を家の中に案内した。
仁がマーカスの生家を訪れていた頃、レン達は海で遊んでいた。フローラとミーシャによって半ば強引に裸にされたレンは、二人の用意した白のビキニを強引に着させられていた。何故かフローラもミーシャもワンピースなのに対して、何故かレンだけが、スタイルが諸に影響するビキニなのである。
「おい・・・・止めろ。放せ」
レンは顔を真っ赤にして暴れていた。控えめな胸が小さな谷間を作っている。
「ダメだよ動いちゃ。脱げちゃうよそれ・・・・」
「何で動くと脱げる水着なんか用意してんだよ」
もっともな意見であるが、彼女達の暴走は止まりそうになかった。
マックスは準備体操をしながら、何故か前かがみになっていた。男ならば誰もが分かるあの生理現象である。
(やべ・・・・。レンにばれたら軽蔑されちまう。それだけは避けないと)
マックスは真っ赤な顔でポーカーフェイスを気取っていたが、フローラとミーシャにはとっくにばれていた。