アイアンメイデンlevel3
ウィリアムは雑木林の中に身を潜めていた。
「あのカスどもが。いつも私の邪魔を」
ウィリアムはふと、木の裏から顔を出した。すると、彼の眼前に突然、金色に輝く人工衛星のような物が旋回していた。
「こ、これは何だ?」
ウィリアムが再び木の裏に隠れようとしたその時。人工衛星が突然、装甲にある空洞から、豆鉄砲のような弾丸をウィリアムの額に発砲した。
「ぐうう」
ウィリアムは後ろにひっくり返ると、撃たれた箇所を手で押さえながら立ち上がった。
「最悪だ。フローラだな。まさかあの小娘も能力者だったとは。何ということだ。家に戻るのは危険だが、行かねばならない」
ウィリアムは雑木林を抜けて、家の前に戻った。すでにマックスとフローラが、ウィリアムの存在に 気付いており、ゆっくりと彼の方に歩いて来ている。
「アイアンメイデン」
フローラがそう叫ぶと、ウィリアムを追跡していた金色の人工衛星が、彼を離れてフローラの頭上に戻った。
「やはり君の能力だったか」
「あなたがレンちゃんが言っていたウィリアムね。覚悟なさい」
アイアンメイデンがウィリアムに向けて発砲した。彼はそれよりも速く、掌をアイアンメイデンに突き出した。その時、突然アイアンメイデンが炎に包まれた。
「バーストショット。君の能力の周辺にある酸素を発火させた」
「アイアンメイデン」
フローラは燃えて、地面に墜落したアイアンメイデンの側に駆け寄ろうとした。しかし、マックスがそれを止める。
「止めろフローラ。危険だ」
「でも、でも」
フローラの心配をよそに、アイアンメイデンの機体にひびが入った。そして、卵の殻を少しずつ剥くかのように、内部から白い肌が現れた。
「おい、何だよあれ。フローラ見てみろよ」
マックスが指した先には、セミの脱け殻のようになったアイアンメイデンの機体が落ちていた。フローラは眼を擦ってそれを見つめると、突然、彼女の肩に小さな白い手が置かれた。
「え?」
振り返って見ると、そこにはフローラと同じぐらいの背丈をした少女が立っていた。その少女は黒光りするボディースーツを着ており、髪は緑色の単髪、耳には大きな耳当てが着いていた。
「ミュー」
少女はまるで猫のようだった。小さく鳴き声を上げると、フローラに抱き付き、彼女の頬に、自分の白い頬を擦り付けていた。
「ミューミュー」
「な、何なの?」
驚くフローラを、自分の後ろに立たせると。少女は腰のバックルから、玩具のような小さな拳銃を出して、ウィリアムに向けて発砲した。
「がは」
ウィリアムは後ろに吹き飛ぶと、背後にある大木に背中を打ち付けた。
「あなたは誰?」
「ミュー」
少女はフローラを見て、嬉しそうに鳴いていた。
「フローラ。あれはアイアンメイデンなんじゃないか?」
「え?」
「だってそうだろ。それしか考えられない」
「アイアンメイデン。じゃあ分かった。名前をつけるわ。今日から私の能力はアイアンメイデンlevel3
よ」