ストリップポーカーその2
二つの机を向かい合わせにして、波瀾のストリップポーカーが始まった。さっきまで閑散としていた教室内に、男子達が集まり輪を作っていた。
「ちょっと、押さないでよ」
フローラは男子達の波に押され苦しんでいた。そして足を滑らせて、机の角目掛けて転んでしまった。
「きゃあああ」
悲鳴を上げるフローラーの体を、がっちりとした腕が支えた。振り向くとマックスが立っていた。
「よう、どうした?」
「マックス。レンちゃんが大変なの」
「大変?」
二人をよそに、レンと青髪の男子は机を合わせて真剣にカードと睨めっこをしていた。
「ところでさあ。そこのディーラーがお前と結託していないという証拠はあるのか?」
「証拠なら見せても良い。ちなみに僕の名はクーガだ。お前じゃない」
クーガはディーラーの持っているカードに触れようと手を伸ばした。
「ギギギ」
パニッシュメントは右手で手刀を繰り出すと、クーガの右肩に思い切り突き刺さり血を流した。
「がはあああ」
能力者以外にパニッシュメントの姿は見えないらしく、周りの生徒達は、突然肩から出血したクーガに驚いていた。
「どうだい。こいつは中立なんだ。イカサマは許さない。もし、強引にイカサマをしようとすれば、最悪命を落とすかも」
「前に仁さんから、超能力の分類について聞いたけど、それは恐らく自動型だな。ゲームを始めると、本人たちの意思関係無く発動するタイプ。しかし少し様子が違う。能力を持っている本人にも危害を及ぼすなんて」
「ああ、こいつは厄介な存在だ。飼い主にこんなことをするんだからな・・・・」
周りの男子達は、中々ゲームが始まらないので苛立っていた。中にはクーガに向けて罵声を浴びせる者もいたほどだ。
「早くしろよ」
「分かってるよ。うるさいな・・・・ぶつぶつ」
クーガは指を鳴らして、パニッシュメントに何かの合図をした。するとパニッシュメントが両手の掌の穴から、銀色のチップを6枚取り出して、3枚ずつ両者の机の上に置いた。
「チップは3枚で一組。3枚相手が獲得した時点で、身に付けている衣服を一回ずつ脱ぐ。何を脱ぐかは選ばせてやろう」
「ふうん」
「途中でドロップしたって構わないよ。別にね・・・・」
クーガはそれだけ言うと、パニッシュメントの方をチラッと見た。
「さあ、ゲーム開始だ」
両者は参加費としてチップを一枚ずつ支払っている。
「君からどうぞ」
「うう、パス・・・・」
レンの手は何故か震えていた。実は彼女、こういう勝負ごとになると、人よりも緊張してしまう性格をしていたのだ。
「じゃあ僕はピッド」
クーガは2枚のチップを出した。そしてニヤッと口元を歪めて笑った。
「チップはいくらでもあるよ。君が素っ裸になるまでね。3枚失うごとに一回脱ぐのは忘れないように」
「分かってるよ」
レンは髪を乱暴に掻き毟っていた。
「ほら、2枚要らないからさ。新しいの頂戴よ」
レンは2枚捨てて、新たに2枚補充した。同時にレンの顔がにやけた。
「ふん、単純な娘だ。ポーカーフェイスって言葉を覚えた方が良い」
「ふふん、そうかい」
レンは得意気に鼻歌を歌っていた。
「僕は1枚だけ交換する」
それに対してクーガは無表情で何を考えているのか分からない。その物腰の柔らかさは、かなり勝負慣れしているようだった。
「じゃあ、オレもやっちゃおうかな」
レンは3枚のチップを出した。それを見て、クーガの眼が妖しく光った。
(こいつ、そんなに強い役を作ったのか。もしかしたら、本当は弱いのに、強く見せている。ブラフでも仕掛けているのかな?)
クーガはレンの役を警戒してピッドを控えると、二人の手札を交換する時間となった。
(今、場にあるチップは合計で7枚。3枚獲得するごとに脱ぐわけだから、すでに下着姿になってしまうわけだ)
「さあ、行くぞ」
「ふん、ほら」
二人は机の上に5枚の手札を公開した。レンの役はフラッシュ。黒が5枚揃っていた。それに対してクーガの役はフルハウスだった。
「はは、僕の勝ちだね」
「そんな~」
レンの顔が悔しさと落胆に歪んでいた。周りから見て、何だか少し老けたようにも見えた。