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転生サーガ~異世界勇者録~  作者: よっちゃん
第4章 レン編
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ストリップポーカー

 ウィリアムは塗炭の露出した簡素な狭い一室の中にいた。部屋内はカーテンで閉め切られており、昼間だというのに闇に包まれていた。これも、彼が組織からの追手を畏れている所以なのだろう。息を殺して、カーテンの端から、外の景色を覗いていた。

(恐れる必要は無い。すでに手は打った。組織からの刺客は私が直々に相手をするとして、レン達は、レン達の学園の奴らに始末させれば良い)

 ウィリアムはそのまま、部屋の奥の暗がりへと消えて行った。



 エンシャント学園にて、レンとフローラは屋上で昼食を食べ終えて教室にいた。男子達は廊下を走って鬼ごっこをしていたし、女子達は教室で他愛の無い話を楽しんでいた。


「それでね」

 フローラが両手でジェスチャーを交えながら話していると、レンはそれを見て笑っていた。いつもと同じ平和な昼休みの風景であるが、突然、そこに彼女らの平穏を乱す存在が現れた。


「やあ・・・・」

 一人の青い髪をした、端正な顔立ちの男子がレンとフローラの前に現れて、近くの席から適当な椅子を拝借し座った。

「何だ。何か用か?」

「二人とも暇そうだね?」

 男子は馬鹿にするように言うと、ポケットから小さな箱を取り出して机に置いた。

「ん?」

 レンは箱についているシールを剥すと、それの中身を取り出した。


「これは・・・・」

 中身はトランプだった。誰もが一度は使用したであろうトランプは、異世界にも関係無く存在しているらしい。

「少し遊ばないかい。これで」

「ふうん。暇つぶしにはなりそうだけど。ババ抜きでもするの?」

「あはははは。まさかね。僕はポーカーしかしないよ。君とサシでやりたい」


 レンはフローラの方をチラッと見ると、トランプを箱に戻して男子に投げ返した。

「悪いけど、三人でしないのならお断りだよ」

「そうかい」

 男子は物静かな声で言うと、そっとレンの耳元で一言呟いた。

「ウィリアムの情報を教えてやろうと思ったが、どうやらいらないらしいな」


 男子の言葉に、レンの体が思わず強張った。男子は依然として冷静な表情でレンとフローラを交互に見つめている。

「テメーは刺客か・・・・?」

「まあ、そうだね。僕は先日、ウィリアムという男から素晴らしい力を手に入れたんだ。そのお礼に、君らを始末しようと思ってね。僕の能力はトランプをしないと始まらないのさ」

「じゃあ、残念だったな。当てが外れたってパターン?」


 男子の笑みが消えた。そしてグイッとレンの顔に、自身の顔を近付けると、ポケットから地図を取り出して、一瞬だけレンの前で開いてみせた。

「もし、僕とゲームして勝てたら、ウィリアムの住んでいる家の地図をやるよ」

「そうかい。だったらお前から無理矢理奪ってやる。ゲームなんてしなくてもね」


 レンは手に持っていた鉛筆をナイフに変えると、それを男子の首筋に当てようとした。その時、レンのナイフの刃先が、何者かによって止められた。何と男子を守護するかのように、銀色の体色をした、まるで金属のような固い人型の、生物とは思えない無機質な物体がそこにいた。


「紹介するよ。僕の能力。パニッシュメントだ」

 パニッシュメントは人の形をしていたが、眼は顔の中央に一つだけあり、カメラのレンズのように赤く不気味に光っていた。そしてカシャンカシャンと金属音を立てながら、ナイフを両手で潰してしまった。


「さてと、どうするかな。僕に攻撃できるのはゲームだけだよ。暴力による攻撃は、パニッシュメントが許さない」

「へん、じゃあやるよ。その代わり勝った時は覚悟してもらう」

「くくく、もちろん約束は守るさ。そして、ただのポーカーでは面白くない。負けるごとに互いの衣服を脱ぐストリップポーカーなんてどうかな?」

「悪趣味な奴」

「ありがとう」


 青髪の男子はトランプをパニッシュメントに渡すと、パニッシュメントは凄まじい勢いでカードを切り始めた。


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